79勤目
クッサイはすぐさま建物に戻り壁に立て掛けていた斧を手にするとモーモとギャルルを呼んだ。
「モーモ!ギャルル!魔族だ!助けに行くぞ!」
モーモは若干腰が引けていた。
「ア、アニキ…助けるって魔族からか!?」
ギャルルは剣を手にすぐさま返事をした。
「了解っス」
モーモとクッサイはミスリルトイレの壁の前に立つと、先程作った出入り口へと避難者達を誘導した。
「お前ら急げ!こっちだ!」
しかし、逃げて来た民達は皆リンコの偽りの噂を吹き込まれており入り口の前で立ち止まった。
「ここって…噂で聞いた糞の悪魔の家じゃ!?」
「噂では触れられると糞になるって聞いたぞ…」
クッサイは斧を掲げると民達を脅して中へと押し入れた。
「うだうだ言ってねーで入れ!コイツでぶった斬るぞ!?」
ギャルルも民達を急かした。
「早くするっス!皆んな殺されるっスよ!!」
そこへギャルルの部下達も避難して来ていた。
「あっギャルル!良かった!もう避難してたんだ?」
ギャルルは平然と答えた。
「自分はずっとここに居たっスから」
クッサイ達は皆をミスリルトイレの壁の中へと避難させた。
最後の1人は髭面で樽の様な腹をした王族の服に身を纏った男だった。
リンコは男の顔に見覚えがあった。
リンコはジッと男の顔を見ながら話しかけた。
「あれ?確かどこかで?」
男…いや王は目を細めて顎を前に出して不自然な表情で返事をした。
「いやぁ…多分他人の空似じゃろ…」
クッサイは追って来ている黒い煤の様な化物…魔族をミスリルトイレの防壁の中へ入れぬ為、王国の兵達へ協力を仰いだ。
「王国の兵達!お前らも兵なら民を守る為に戦え!」
王国の兵達は皆クッサイの声かけに頷いていた。
クッサイは続ける。
「よく聞け!見ての通りこのトイレはミスリルだ!魔族といえど傷一つつけられんだろう!つまりは俺達の仕事はこの入り口の死守だ!仲間を民を家族を守り抜け!」
王国の兵達は武器を手にミスリルトイレの隙間に向けて臨戦体制を整えた。
「オオオオ!!」
リンコは自分も力になれるかもと考えて口を開いた。
「クッサイさん待って…直接戦わなくても『ゲリラゴン』で動けなく出来るかも」
リンコは魔族達に意識を絞りゲリラゴンを唱えた。
「ゲリラゴン!」
…が魔族達は動きを止める素振りも無く全く効いている様に見えなかった。
その様子を1人遠方の物陰でバナナをかじりつつ双眼鏡でリンコ達の姿を見る怪しい姿があった。
それは漆黒のローブに身を包むスキンヘッドの男…リンコを召喚した術者であった。
「フン…馬鹿が破壊と殺戮の権化である魔族共には消化器官等もとより無いわ」
その間にも魔族達はジリジリとミスリルトイレの壁を取り囲んでいた。




