60勤目
リンコが振り向くと黒尽くめの服にマントを羽織る長身で長髪の気の強そうな二十代中頃のイケメンが立っていた。
そして、彼の傍には※鞍が付けられた大きな黒い犬が待ての姿勢でヨダレを垂らしていた。
※ 人がウマに騎乗する際に用いる馬具の一種
リンコは突如として会話に割り込んで来た男を前に固まった。
こ、この世界に来て初めての人間のイケメン!
じゃ無くて…今何て言ったコイツ?
「え?何?…」
リンコは前髪を気にしながら口を開いた。
「ハッハッハッ2度は言わんぞよく聞け!我が名は大剣士アータ・マワールイ!」
男前な長髪の男は聞かれても無い名を名乗った。
何だコイツ…顔以外クソだな…
「知らん…いいからもうどっか行って」
リンコの塩対応にもビクともしないアータ・マワールイは続けた。
「そんな事を言って居られるのも今のうちだけだ、3分で我が大剣のサビにしてやる」
リンコは思いを簡潔に話した。
「そーなの?…話終わったなら帰ってくれる?」
長髪の男は髪を掻き上げると壊れたおもちゃの様に再び自己紹介をした。
「ハッハッハッ俺の名は大剣士アータ・マワールイ!表に出るが良い!」
「ねえ、迷惑なんだけど」
リンコは話を終わらせようとアータの話を断ち切った。
しかし、アータは独り話を進めながら頷いた。
「なーに時間はとらせんさ、2分…いや1分で切り捨ててくれよう…むしろそれ以上かかれば俺の負けだな、うん」
「あーもう、うるさいな、どっか行ってよ」
リンコは待ちに待った風呂を邪魔され怒りを募らせた。
長髪の男はリンコの言葉を気にせず独りでわけのわからない話を続けた。
「クソブスオンナよ、もし俺が負ければ下着姿で三回、回ってカエルぴょんぴょん、猫ニャンニャンと言ってやるわ!」
何だコイツ…話通じない。
この世界に来てからで1番面倒くさいかも…
仕方ない、風呂の為だ…コイツを片付けるか。
「良いよ、相手してあげる…1分だったよね?」
建物からアータ・マワールイの声を聞きつけたクッサイがリンコの決闘を止めようと走って来た。
「待てリンコ!ソイツ…アータは確かにバカだが腕は確かだ、ワイバーンを倒した名の有る実力者だ!」
リンコは完全にキレていた。
「大丈夫…私にも考えが有るから…」
「大剣士さん、こっち来て」
リンコはボロ屋の裏のトイレの前迄移動した。




