9・愚かな元婚約者は自業自得で成敗されます!
仮面の男性の正体は、我が国の王だった。私も驚いて目を丸くする。
「な、ななななぜ、陛下がこのような場所に……」
「なぜって、今日は『最高においしい飲み物品評会』だからな」
そうでした。恥ずかしくて今まで「品評会」とばかり言っていたけど、正式名称はそれでした。大真面目に言える国王陛下、さすが国王陛下。
「な、なななぜあんな仮面をつけていたのですか!」
ウラキスは震える声で王に質問し、王はしれっと涼しい顔で答える。
「王だとバレると、周りが勝手に傅いてきて、堅苦しいからな。せっかくの楽しい日なのだし、自由に見て回りたかったんだ」
「う、嘘だ、そんな……。従者もつけず、王が一人で行動するなんて、おかしいし……」
「従者もつけずって、俺が最強なのだから、そんなものつける必要がないだろう」
確かに。なにせ国王様は、魔王を倒した勇者様なのだから。誰かに守られる必要はない。
「い、いや! そうだ、き……貴様は国王のふりをした偽物だろう! そのはずだ!」
「ほう……ならば、試してみるか?」
陛下が、ウラキスに剣を向ける。
まだ斬りかかったわけでもないのに、陛下から発せられる気迫は凄まじいものだった。思わず私まで震えてしまうくらいだ。
「今日は無礼講だ、対等に戦おうではないか。俺の強さを目の当たりにすれば、お前も王だと信じざるをえないだろう?」
「いえ、あの……も、ももも申し訳ございませんでした……!」
「ふむ。お前は一体何に謝っているんだ?」
「も、もちろん、陛下への不敬についてです! どうかお許しを……」
「そこが問題ではないだろう。俺への不敬はともかく、そこの彼女に乱暴をしようとしたのが問題だと言っているんだ」
「で、ですが、こんな奴のことなど……!」
「お前は女性を無理矢理閉じ込めようとし、刃物を向けた。お前のような者を野放しにしておくことはできない。おい、衛兵」
「はい」
国王が手を叩くと、既にこの騒ぎに気付いていたようで、すぐに兵士さんがやってきた。
「この男と、一緒にいる女を捕らえろ」
国王はウラキスとラフリーヌを指してそう言った。ウラキスとラフリーヌは、顔面を蒼白にさせて震え上がる。
「そ、そんな! お待ちください!」
「わ、私達は何も間違ったことなんてしていません!」
「間違ったことをしたから、捕らえられる羽目になっているのだろう。自分の非を認めろ」
兵士さんがウラキスの手に縄をかけようとした瞬間――ウラキスはこの期に及んでまだ逃げ出そうとした。
「い、嫌だ! 俺は間違ってない! 俺は悪くないんだっ!」
「まったく……往生際の悪い奴だ」
すると――陛下の剣が目にも止まらぬ速さで動き、ウラキスの足を斬った。
「ぎゃあああああああああああ!!」
「おとなしく捕まれば、ここまでするつもりはなかったのだがな。無駄な抵抗をするからだ」
「い、痛い、痛いぃぃぃぃぃ! うっ、うぐ、ひぐぅ……」
ウラキスは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、兵士さんに連れていかれた。ラフリーヌは、そんなウラキスにさすがにどん引きした様子だった。
「大丈夫だったか?」
陛下は剣を鞘にしまいながら、私に声をかけてくださる。
「ありがとうございます、陛下」
「気にするな。それより、あのような奴らに酷い目にあわされて災難だったな。もう大丈夫だ。今日はせっかくの日なのだから、ゆっくり楽しむがいい」
「あ、あの! 陛下、私、この後の品評会に出品するんです」
「何? そうなのか」
かすかに目を見開いた陛下に、さっきまでの憂鬱など吹き飛ばすような笑顔を向ける。
「陛下が望むものをお出ししますので、楽しみにしていてください!」
すると陛下は、にっと白い歯を見せて笑ってくれた。
「そうか! とても楽しみだ、早く飲みたいな!」