5・抹茶とどら焼きを食べよう
私も一緒に抹茶を飲んでみる。うわ~、懐かしい、この味。もちろん紅茶もおいしいし大好きだけど、記憶を取り戻してから、無性に日本のものが恋しくなってたんだよねー。
デリックさんは抹茶を味わいながら、今までのことを思い出し、驚いているようだった。
「国王が『緑色の泡立った飲み物』というから、私は今まで、キャベツやアスパラをすり潰した液体をシェイクしたようなものだと思っていたのですが。まさか紅茶と同じ木から、製法を変えることで『抹茶』ができるなんて!」
緑色の泡立った飲み物、って言われたら、この世界の人はそう思うよね。
「王が気に入ったものなのだから高価で特別なものなのだろうと、エメラルドやヒスイを砕いて液体にしようと試みたこともあるというのに……」
「それは……エメラルドやヒスイがもったいなかったですね……」
(いやでも、エメラルドやヒスイをどうやって飲食しても大丈夫なようにするつもりだったんだろう……)
なかなか無謀な挑戦だったと思うのだが、そこまでするほどデリックさんは緑の飲み物作りに迷走していたということだろう。
(デリックさん、今まで大変だったんだなあ……)
とはいえきっと次の品評会では優勝間違いなしだから、おいしい抹茶とお菓子をゆっくり味わってほしい。製法を教えたのは私とはいえ、デリックさんが茶園に掛け合ってくれなければ、抹茶はできなかったのだし。
「デリックさん。お菓子を食べてから抹茶を飲むと、更においしいですよ」
「どれ」
デリックさんと一緒に、私もうぐいすあんのどら焼きを食べる。
甘い物を食べた後に飲む抹茶はおいしさ倍増だ。ケーキを食べた後コーヒーを味わうように、甘い物と苦い物の組み合わせは最強なのである。抹茶の爽やかな苦みとお菓子の甘味が舌の上で溶け合い、口の中が幸せで溢れ、思わずほうっと息を吐いてしまう。
「うん、うまい! なるほど、これは最高ですね。国王が所望するのも頷けます。ふふ、これは……国中で大流行することになりますね」
抹茶とどら焼きのおいしさに顔をとろけさせていたデリックさんだけど、途端に商人としてぎらりと目を輝かせる。
実際、品評会で優勝すれば、「国王に賞賛された飲食物」という最大の栄誉を得られるのだ。そうすれば抹茶もどら焼きも、貴族の間でたちまち流行るだろう。国王はもともと勇者であることから、冒険者達にもファンが多い。あらゆる層に売れる可能性が満ち溢れている。
「抹茶に合う和菓子、もっと作りたいですね。栗やお芋の時期になれば、きんとんができますし。それから抹茶ケーキとか、抹茶アイスも作りたいなあ~!」
「ほう、よくわかりませんが、レティーさんが作ってくれるものなら、きっとおいしいのでしょうね。この抹茶をメインにした茶店を出店しますか。きっと大流行しますよ」
「わあ、いいですね! 抹茶メインの茶店なら、せっかくだから内装を和風にしたいなあ。この国でも畳が作れるかな?」
「タタミとはなんですか? 売れそうな商品なのであれば、ぜひ詳しくお話を!」
私とデリックさんは、抹茶とどら焼きを味わいながら、今後の出店や商品展開について熱く語り合った。
いやあ、まさか異世界で抹茶を飲みながら畳について語れるとは思わなかったよ。この調子で、この国にはまだないものをどんどん流行らせていけば、億万長者も夢じゃないかも。ビバ日本文化。品評会が楽しみだ~!
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