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黄道を刻む二十四の時の詩

風と共に

作者: 日浦海里

――まだ起きてるの?


草の葉が擦れ

虫の羽が擦れ

優しい音を奏でる夕べ


湧き立つ雲の向こう側

縦に走る光に姿を隠すようにして

彼がこちらを覗いてる


濡れた端から雫は空を舞って

温かな風が空へと昇ってく

そうして雲が延ばすその手は

遠く紫紺の空の彼方へ


――またしばらく逢えなくなるから


零れた雫は

頬を伝って指先を伝って

坂を下り流れてく


誰に向かっての言葉なんだろうと思う


雨の音

川の音

小石を叩いて奏でる律動は

熱を帯びるだけの心を包んでくれる


――それでも、また逢えるから


溢れた雫は

首筋を伝って胸元に落ちて

谷間を縫って流れてく


誰に向かっての言葉なんだろうと思う


ただ一音を震わせて

夜の幕が引かれてく


燃えるような紫の向こう側に

泣きそうな笑顔を見た気がした


立ち昇る雲から吹き下ろされる風は

濡れた肌から熱を奪って

昼間の暑さが嘘のように冷たい


風に乗って届く虫たちの声に

彼が居た場所とは反対の空を見上げる


未だ黒くなりきれない空に

白いお椀の形の星ひとつ


あの人が風を連れてくる


遠のく嵐の足音の代わりに

実りの風と音を連れて


燃える命を優しく癒す

包み込むような風を連れて


――それでも、また逢えるから


それは、誰に向けての言葉なんだろう


彼の後を追うように

嵐の祭りが終わりを告げる

今日は処暑

処には「止まる」という意味があります。

厳しい暑さの時期を越えて、

朝夕には涼しい風、秋を告げる虫の声が聞こえてくる頃です。

草原の上にはとんぼが飛び

せみたちの奏でる演奏も、心なしか寂しさを感じる音が混じり始めます。



【登場人物紹介】

〇陽ざしの君

 太陽です。

 いつも困り顔だけど笑みだけは浮かべている、

 そんな表情しか浮かびません。

 定められた時の流れ、

 生まれてから与えられた役割

 そこに縛られていても抗うことも出来ない

 それでも悲観することなく生きていけるのは

 彼が太陽だから、ではないはず


〇夏姫

 定められた時の流れ、

 生まれてから与えられた役割

 抗うことができないのは彼女も同じで。

 それでも彼女は歌い、踊る。

 また逢えると信じているから。

 巡る命と時の先で。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  純文学のような美しい世界観、季節の香りがするような丁寧な造形、素敵です。 [気になる点]  特にございません。 [一言]  拝読させて頂きありがとうございます。
[一言]  涼やかに流れる秋の気配を背中に感じる夏の日暮れに生きる虫には燃える命に今時迫る  三日祭りの終わりのようで片付けの隣で売るチョコバナナを見るような、少し心残りにも終わりが迫り、秋の実りに…
[良い点]  季節の移り変わりを感じる風。  一雨ごとに気温が下がり、夏の終わりを告げる雷が鳴って。   そんな夏と秋とが混ざり合う時期。  夏姫の見る景色も少し穏やかになったように感じました。 […
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