プロローグ 俺は妹に殺されて
「……、…………おにいちゃんが悪いんだよ……」
おなかから熱い衝撃が流れ込む。目を下にやると包丁がおなかに真っ赤なシミを広げながら、飛び出している……?
激しく鳴り響く心臓の音とともにズキズキとした痛みが遅れてやってきて、身体のあちこちから謎の液体だ噴き出しているのかとさえ感じる。
「――、め……芽衣…………!! どうして…………」
持ち上げた瞳の先には虚ろな目をした妹の芽衣が立ち尽くしていた。いつも着ていたお気に入りのエプロンが俺の返り血で赤く染められていた。
「……お兄ちゃんが!! 私がいるのにあの女なんかと仲良くするから……! ちっちゃいころから、一番最初からおにいちゃんのことを好きだったのは私なんだよ!? 誰よりもおにいちゃんのことを理解してあげられるのは私なんだよ!?」
つんざく痛みで意識がぼやけながらも、怒声に近い彼女の涙の訴えが聞こえてくる。
「私の知らないおにいちゃんなんて……、いないの……。私のことが一番大事で、大切な、自慢の妹だって…………!」
彼女は涙の顔を手で覆い、俯いていた。俺も意識が徐々に掠れてゆき彼女の顔を十分に窺うことは十分にできなかった。
――だが一瞬、俺が見たその彼女の口元は確かに笑っているように見えた。
「……でも、これでもう、おにいちゃんは、ずーっと私のものだから……」
いつの間にか視界はまっくらになり、音も消え、痛みすらも消え、俺こと相川蓮の人生は幕を閉じた……。




