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異性間での友情は成立するのかって話がよくあるけど、その前に私は、私の性別が憎いって話

作者: 澄田美稲

異性の親友がいた。

大切な人だった。

無条件で信頼できた、唯一の人だった。

誰よりも一緒にいて楽しかったし、安心した。


私たちは幼なじみでもあった。幼い頃からお互いをよく知っていた。


私の都合で小学校が別々になってしまったけれど

受験した中学校で偶然にもまた一緒になった。


中学校一年生の頃はお互いの存在に気付いていなかった。


二年生になってクラスが同じになって初めて気付いた。


その人は昔とは変わっていた。大人びていて、頭が良くて聡明な人だった。


みんなに慕われていて、テストではいつも上位の成績で。先生にも信頼されていた。


なんとなく話しかけづらくて、なかなか話せなかった。


でもそんなある日、私が本を読んでいたらその人が話しかけてくれた。


その人は

私が読んでいる本が、自分の好きな作家さんの本だと話した。


そこから一気に話す様になった。


お互いの好きな本の話、おすすめの本の話、読んだ感想、お互いの話


本当にたくさんのことを話した。


多感な時期だったためだろう。

クラスではよく茶化され、はやしたてられ、噂された。


それでも私たちは話し続けた。


テスト期間で通話を繋ぎ、互いに勉強をしながら雑談をし

時には日がのぼってしまって


それで悪い点をとったら

お互いに罪悪感が生まれて

この通話はしなくなってしまうのだろうと思って

必死に点を取り、成績は二人ともよかった。


でも私はあの人にテストでいつも負けていた。


教科別に見たらいくつか勝っていたものもあったけど

総合点はいつも少しだけ負けていた。


二人でよく遊びに行った。


茶化されるのが嫌で、電車に乗って遠くの映画館まで行った。

都会に出て、大きな本屋さんに行って1日を過ごした。

有名な図書館に行って、ただ二人で歩いて回った。


満たされていた。


幸せって、きっとこういうことを言うのだろうと


そう信じていた。


中高一貫校に通っていた私たちは


共に成長し、いつの間にか高校三年生になっていた。


医学分野という進路は同じだったけれど


細かいジャンルや大学は違っていた。


でもたとえここで道が分かれても


私たちはずっとつながっていて


かけがえのない存在だろうと、根拠もなく思っていた。


大人になったら二人で行きたい場所の話をした。


大人になったら絶対に二人で飲みに行こうと話していた。


高校三年生の冬、その人に恋人ができた。



「君のことは今でも大好きだし、変わらず大切な人だよ。もし君がいいのなら、これからも変わらず仲良くしたいと思ってる。」



今更当たり前のことを、どうしてわざわざいうのだろうと

呑気に私は思っていた。



「でもね、ごめん。あの人に余計な心配や不安を感じさせたくない。君とはもう遊べないし、通話もできない。家にも行けないし、一緒に買い物もできないし誕生日も言葉でしか祝ってあげられない。

ごめんね。君のことは本当に大好きだけれど、どうかあの人を大切にさせて欲しい。」



ああ、君はそういう人だったね。


誰よりも優しくて、自分に厳しくて。


私にそれを言うまでに、

君は一体どれほど自分を傷つけたのだろう。



「ごめんね、嫌いになっていいんだよ。」



君がどれほど傷ついているのかを知っている私が

今更君を嫌いになんてなれるはずもないのに。


でも君は本気で覚悟をして、私に伝えてきたのだろう。


いったいこの世界のどこを探したら


親友に恋人ができたことを伝える時に

涙を浮かべる人がいるのだろう。


理想が高くて、大切なものを定めたら、一直線に守っていく。


私は君のそんなところが本当に好きだ。

君は私の理想だ。


ただ一つ


言葉を吐き捨てるとするのなら


私は、私の性別が憎い。

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