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一緒にお風呂

俺が異世界に飛ばされた日にちは今ニュース画面で表示されている西暦の一年前の6月2日。

ちょうど高校進学について真面目に考えないとやばいって時期だった。


そのころは非公式に雇われていたバイト先に正式に雇用してもらうか、金さえ入れる私立高校に入学するか悩んでいて近所のあの原っぱでうたた寝こいてたんだっけ?


それで気がついたら異世界って、どうかしてるぜ!


ニュースの内容を淡々と読み上げるキャスターの声は頭に入らない。

ただ表示されていた今日の日付と時間だけを見ているとお風呂場から「お風呂が沸きました」という電子音の声が鳴り響いた。


とりあえず風呂に入りながら整理しよう。


「夢幻ちゃん、僕お風呂入ってくるね」


「何よその喋り方。気持ち悪いわね待ってよ邪神も一緒に入りたい」


おっとあまりの衝撃に自分がどんな喋り方か一瞬わからなくなってしまった。

たが仕方ないだろう、マジで何が何だかわからないんだから、頭がショートしたって。

というかなんだろうこのモヤモヤというか、気づきたくなかったことに目を背けているというか。


俺は脱衣所にいって、ボロボロになった服とズボンを脱衣籠の中に放り込む。

もはや服としてほとんど機能していない。こんなものを着るのはビジュアル系バンドのボーカルぐらいのものだろう。偏見であるが。

異世界でこの5年苦楽を共にしてきた服とズボンだがいらないので後で雑巾にでもしてしまおう。


スッポンポンの生まれた姿に変身し風呂場に入る。

風呂場の正面にある鏡にはやはり若かりし頃の俺が写っていた。


まだ成長途中のあどけなさが残る黒髪の少年というには少し顔がしっかりしている。

体には3色の呪いの刺青。

ある程度は長袖で隠せるからいいけどこうやって改めて見ると結構全身に張り巡らさせているな。


ラプラスと契約してるから呪いの効果は一切ないがそれでもこれでは一般的な公共施設の使用はかなり限られてくるな。

特に日本という国は刺青にタトゥーにくりからモンモンに厳しいお国だからな。

え?全部同じものだって?


別に俺の体を剥いで謎を解いても黄金は見つかりませんよと。


ポーズを決めながら全身をくまなく鏡で見ていると風呂の扉がひらいた。


そこにはさっき見たばっかりのスッポンポンの黒髪の女神もとい邪神である夢幻がラプラスを引き連れて入ってきた。


「これがお風呂というものね。邪神を一体どんな気分にしてくれるのかしら!とてもたのしみだわ。って一体なんでそんなポーズ取ってるの?夜叉の構え?」


「え?うん正解ってなんで入ってきてんの!男はみんな狼なんだよ!目の前にうまそうな羊がいれば襲っちゃう生き物なんだよ!」


俺のセリフに夢幻は何言ってんだこいつみたいな顔で俺を見る。

ちなみに夢幻はマジでスッポンポンである。

手で恥部を隠そうともしてないし、タオルを巻いているわけでもない。

水着も着ていないしチンダル現象も起こってない。


神々しい光り輝くような肉体美ではあるもののそれはあくまで例えであってかっして彼女の体は光ってなどいない。


ちなみに俺もスッポンポン、腰にタオルを巻いていなければチンダル現象も起きていない。


俺の慌てふためく様をまるで気にしないと言った様子で夢幻は俺の正面置いてあるお風呂用の椅子に腰掛けた。


「狼ごときに食べられる邪神じゃないのよ。それにあなた邪神を食べようにも牙がないじゃない」


「それはそうだけど、それにしたって今日会ったばかりの男と混浴とか俺以外にしちゃいけませんよ!」


「心外ね。あなただから一緒に入ろうと思ったのに。一緒に死ぬかも知れなかったもの同士親友になるんでしょう?」


当然でしょ?といった顔の夢幻。

なんだかわかんないけど一本取られた気分になった。


「じゃあ、お近づきの印として髪を洗いましょうかね。そのために俺の正面に座ったんだろうけど。シャンプーハットはどうなさいますか?」


「大丈夫よ。はい、シャワーヘッド」


俺にかかってあったシャワーヘッドを渡した夢幻は慣れた手つきで蛇口をひねる。

はじめは冷たい冷水が出てきたがだんだんと温水になっていった。


それを夢幻の頭めがけてかけてやる。


「というか、夢幻その天将くんにつけられた傷、しみないの?」


「全然、痛そうに見えてもこれもう完治しちゃってるから。この後も直そうと思えば直せるけどあのクソボケクズ勇者への恨みを忘れないためにこのままにしておくの」


鏡ごしに反射する夢幻の顔がそれはそれは悪そうな顔になっている。

まぁぶん殴るくらいは天将くんに甘んじて受けてもらおう。


俺は髪の毛を洗いやすいようにしゃがみ近くに置いてあったシャンプーを手に取りわしゃわしゃと手で泡立ててから夢幻の髪の毛に頭を突っ込む。

トリートメントなど不必要なその綺麗な髪を触るのは芸術品を素手で触るような謎の背徳感があった。


「痒いところはございませんか?」


気分は美容師さんで頭皮マッサージをしながら丁寧にあらう。

一本一本真心込めて泡で包んでいく。


全体に泡が馴染んだらそのままリンスを手につけてこれも髪の毛に馴染ませていく。

どうしてシャンプーの泡ってリンスをつけると消えていくのだろうか?

うーむ、謎である。


カンのぺきにリンスが夢幻の髪の毛に行き渡ったところで無限がいきなり振り返った。

あ、危なかあった。俺が立ったまま髪の毛を洗っていれば俺のご立派さまが夢幻の眼前に広がるところであった。


残念なことに俺にそんな大意そうなものはついてはいないのだが。


「じゃあ今度は邪神が洗ってあげる番ね、さっきやってもらったからカンのぺきにマスターしたわ」


そう言って無邪気な子供のようにお湯が出続けているシャワーヘッドを手に取ると、出ているお湯を勢いよく俺の頭にかける。

そして力任せにわしゃわしゃと髪の毛で泡立てる。


正直に言おう痛い。

頭皮がもげるのではというレベルの激痛が頭に走るが俺は何も抵抗できなかった。


その理由は今俺の眼前に広がっている景色のせいだろう。

対面向かって俺の頭を洗っている夢幻。


先ほども言ったがスッポンポンつまり裸体である彼女の美しいその体のさらに目を惹きつける二つの脂肪の塊。

正直に言おう、おっぱい!


こんな近くで見るのは久しぶりで手を伸ばせばと解きそうな距離にある。

俺の頭をもぐほどの力で髪を洗うたびに慎ましく揺れる揺れる。

こんな男の夢ベスト3に入りそうなシュツエーションがリアルで目の前に広がっている状況で一体誰が抵抗できるだろうか。

新婚夫婦だってこんなことしないぞ、もう少し慎みを持ちなさい!


目に先ほどから泡が入りまくっているが俺の瞼は決して俺に瞳を閉じるどころか瞬きさえ許してはくれなかった。

今のこの光景を一ミリコンマ、忘れないように心で記憶させる。


ありがたやありがたやー。


「痒いところはございませんかーってなんで手を合わしているの?」


無限が一度離れて俺に尋ねてくる。

どうやら俺はあまりのありがたせに無意識に手を合わせておがんていたようだ。


「ごめんごめん、なんか感無量な気持ちになちゃって気がついたら手を合わせていた」


「ふぅん。別に牙が使い物にならないからって性欲がないわけじゃないんでしょ?てっきりいただきますされちゃうのかと思ったわ、もんでみる?」


夢幻はそういううとたわわに実ったお乳様を両手で挟みずいっと俺の方に寄せてくる。

その瞳は少し好奇心じみた目で俺の方を見てくる。


なんか試されている気分にもなる中俺はさっきのお返しとばかりに夢幻の顔面目掛けてシャワーヘッドから出ているお湯を顔面にかけてやった。

はじめは何も抵抗しないで顔面でお湯を受けていたがそのうちくるりと回転する。

そのまま髪の毛についたリンスを洗い流す


「親友をレイプ未遂する行為なんざ、異世界で一回も経験があれば十分なんだよ。あまり俺を調子に乗らせんな」


「なぁんだつまんないの。邪神としては好奇心とお礼を兼ねての提案だったのに」


「お礼って言うんなら体よりも友情で支払ってくれや」


しっかりをリンスを洗い流すと邪神は子犬のようにぶるぶると体を震わせて自分についた水分を飛ばす。

その際におっぱいも左右にブルンブルン揺れる。


「わかった。じゃあ友情のお返しとして今度は邪神がその頭についたあわ流してあげるわ」


俺からシャワーヘッドを奪い取ると今度は俺の脳天からお湯をかける。

もちろん正面向かいあってなので先ほどの光景がまた眼前に広がる。


目にお湯シャンプーが入ろうがお湯が入ろうが瞬き一つ俺はしなかった。


お互いに髪を洗い終わるとそのまま湯船へと体を入れる。

1番ぶろは残念ながらラプラスに取られてしまっていた。

ぷかぷかと湯船に浮かぶ金の玉、ではなく金のアヒルの形をしてラプラスは湯船に浮かんでいた。

風情というものがわかっている俺の相棒なのである。


我が家の浴槽は成長途中の若者二人一緒に入るには少し狭く、互いに横並びに入るも肩とかたが密着してしまう。

お湯の適度に保たれた温度も人肌感じるその無曇りも心地よく、ゆっくりと肩までお湯に浸かる。


久しぶりに入る風呂は体よりも精神に蓄積した疲労をお湯に流れ出させてくれる。


夢幻もはじめて入るお風呂の心地ちよさに言葉を失っているようで目を瞑ってうっとりとしている。


「どっちみち、これからどうするかぁ?なんかしたいことでもある?夢幻さん」


天井を見ながらのんびりした口調で俺は聞く。

夢幻は少しの沈黙の後、両手をだしてゆっくりと指をおって何かを数えてからそっと湯船に手を戻した。


「したいことは山ほどあるけど、まずはあなたのしなきゃいけないことから片付けるべきでしょう?」


「俺のしなきゃいけないこと?」


とりあえずなんだろうな、帰ってきたという挨拶回りからかなやっぱり。

バイト先、ここが一年後の世界だっていうんなら無断欠勤一年もしちゃてるから顔出しづらいなぁ。

友達もそんな多い方じゃなかったし、異世界行く直前で疎遠になったやつ結構いるしなぁ。

まぁ、可愛い甥っ子の成長は見に行かにゃいかんからこれは絶対。


後はそうだなぁ、携帯も異世界に置いてきちゃったからまた新しいの買わないと。

連絡が取れないって時点でえげつないぐらい不便だし、今の時代携帯電話を携帯してねぇ奴なんていねぇだろ。


後は夢幻ように服とか買ったり、となると銀行でお金下ろさないとだな。

やば、財布ハーベストのやつに預けたままじゃん。まじかぁ銀行のカード再発行してもらわなきゃじゃん!


「めんどくせぇー、なんでこんなやらなきゃいけないことあんの!せっかく異世界から帰ってきたばっかりでもっとのんびりしてぇよ、異世界帰りって基本その後はスローライフが待ってるもんだろ!うぎゃぁぁ!」


「むしろ異世界帰りって異能力バトルに巻き込まれがちな気がするけど?さっきのワンちゃんみたいなおっきな犬みたいなのがいるぐらいだし、これからはそういう展開になるかもしれないわね」


どういう展開だよ、と思いながら隣で指をくるくる回す夢幻を見る。

すると霧散していた湯船の煙が一箇所に集まり先ほどの黒いワンちゃんの形を催す。

色は煙だから白いんだけど。


まぁ天正くんがいうにはこの世界にもそういった化け物は多々存在するらしい。

人知を超えた進化を遂げた異世界の生物が迷い込んできたり。

異能力に目覚めた人類。

ライトノベル的な設定の世界観がこの世界には現実にあるらしい。

らしいっていうのは俺は天正くんに聞いただけで実際に遭遇したのがさっきの黒いワンチャンたちが初の邂逅である。


結構半信半疑だはあったが異世界に行っている時点でこの世界にもそういったことはあるんだぁぐらいに思ってたし、自分には縁のないものだとも思ってたし。


ちなみに幽霊や怨霊、宇宙人などはいないらしい。

魔法使いは少なからずいるそうなのだが魔法文化は異世界の方が圧倒的に進んでいるとのこと。

異世界魔法は進んでいるのだ。


「異能バトルに巻き込まれるなんてのはキャンセル。絶対やだね。そんなものに巻き込まれるのは主人公だけで十分。端役は大人しく美少女と湯船にでも浸かってるよ」


「フリにしか聞こえないんだけど。間違いなく巻き込まれるパターンでしょう?それ」


「聞こえなーい、そんなのは認めなーい」


俺は立ち上がって湯船から出る。


もうこれ以上は巻き込まないでほしい。

ただでさせ、これからのどうするのか考えるので忙しいのに異能バトルなんて絶対にキャンセルなのである。


今後か、あれ?ちょっと待って。

今って俺が異世界に飛ばされた年の一年後ってことだよな。


さっき感じた目をそらしたものにふと焦点があった気分になる。


つまり俺は今この世界では16歳つまり高校生になるはずだった。

が、もちろん入試なんて受けてない。

え?なにこれ頭がこんがらがりすぎてやばい。


ひとまずここに何者でもない男と何者でもない邪神がいるという事実に俺は直視してしまった。




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