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ただいまとお帰りなさい

今俺は目の前にある懐かしの我が家を前に号泣している。


思い入れがありすぎる我が家。

この街の中心街から少し離れた場所に佇む三階建ての一軒家。

見た目はこれと言って平凡でどこにでもあるデザイン。


五年前までは毎日毎日、俺はこの家に住んでいた。

当たり前すぎて気が付かなかったが自分の帰れる場所が今もなおきちんとその場所にあることの喜び。

異世界ではほとんど旅ばっかなっ生活で一度通った土地に戻るなんてことは余程のことがない限りなかった。こうしてこの言葉を言うのも随分と久々になる。

さっき大声で叫んでいたわそういえば。


俺はドアノブに手をかけてそっと息を正す。

そして持っている力の限りを使って思いっきりその手で引っ張ると同時に大声で叫んだ。


「だだいま!マイスイートホーム‼︎」


ガチャリと何か引っかかった音と共に俺の家への侵入は防がれたのであった。

あれれ?おっかしぃなぁ?


何度引っ張っても押しても横に引いてもてもドアは開かなかった。


な、ばかな!

鍵がかかっているだと、我が家に!一体誰がそんなことを。


ぶっちゃけていうならうちの両親は離婚している。

離婚の理由はお父さんの不倫なんだが、その辺の説明はまたおいおい。

俺は三人兄弟の真ん中で兄と弟はお父さんが俺はお母さんに親権が渡された。


これは別に裁判で争ったとかではなく、各々が考えてどちらについて行きたいかを選ばせてもらった。

お母さんは仕事人間なのであまりこの家には返ってこない。

よってこの三階建ての我が家は俺が個人で好きな様に使ってもいいということとなっていた。


特に撮られても困るものもない。

むしろこの自慢の我が家を世界中に配信したいくらいだ!

嘘です、漢字間違えました。

盗られて困るものもないです。


よく遊びにくる人たちにいちいち合鍵を渡すのも面倒だったのでこの家は年がら年中どの扉も鍵がかかっておらずどこからでも侵入することは容易い。


さて困ったさすがにこの五年も留守にしていたから母がこの家の鍵を閉めたのだろうか?


別に植木鉢の下とかマットの下とかわたあめみたいな犬の体に鍵を隠しているわけでもないしこのまま窓ガラスを割って侵入しようか。


「何を急に泣き出したり、ぶつぶつ言ったり、ドアの前でガチャガチャやっているの?気持ち悪い」


俺がもうこの手段しかないと思い窓ガラスを割ることを決意した瞬間横から夢幻が可愛そうなものを見るめでこちらによってくる。


あの夢幻さん、気持ち悪いってそんなストレートに言わないでください。

優人の心はガラスのように繊細なのよ!


俺が何かしら訴える目を夢幻に向かって見せても彼女の表情は変わりもせずそのまま両手を鍵穴に向かってそっとおく。


「施錠解除、ガチャガチャ」


夢幻がそういうとドアの鍵が開く音がした。

そのまま俺を押し退けてドアのとってを引っ張って中に入る。


それに続いてラプラスも家の中に入っていった。


ちょっと待って!

普通こういうのって家主である俺から入るものなんじゃないのか!


三番目!

邪神よりも相棒よりも後に入るのか!


あぁ俺の先程の感動の涙はすっかり引いてしまいそっとドアの取っ手に手をかけて引っ張る。


「ただいま」


「お帰りなさい」


俺がそういうと夢幻とラプラスが玄関の前で待っていてくれた。

その言葉にまた涙が込み上げてきた。


懐かしくて、久しぶりで、昔のことなんだけど。

え?全部一緒だって?

いいじゃないか、帰ってきたんだ。


意味もわからず異世界に飛ばされて意味もわからず旅をして、意味がわかって俺は友人を助けて役目を全うしてきちんと帰ってこれたんだ。


案外、夢幻はこの家に誰もいないであろうことを知っていてわざと先に入ったのかもしれない。


こっそりと家の鍵をかけて、俺より先に自分が入れる様に仕組んだのかもしれない。


俺がこの世界に帰ってきたことを出迎えてくれるために。


さすがに深読みしすぎかな?

でも俺は先ほどよりもようやくこの世界に帰ってきたんだという実感で胸がいっぱいになった。


「ありがとう、夢幻、ラプラス」


俺が素直に感謝の気持ちを述べると夢幻は少しそっぽ向いてほんのりと顔を赤くとそのまま家の中へと入っていく。


ラプラスもその場でふよふよと浮きながら肯定してくれているようだ。


目に浮かべて涙を脱って久々の我が家に入ろうと思った矢先ふと玄関についている、姿鏡が目に入る。


そこには未だ成長途中の幼さが少し残った少年がいた。


クリントした目にボサボサの黒髪。

顔の造形は悪くはないが絶世のイケメンというわけではないく、かと言ってありきたりな顔でもない。


顔よりも特徴的なのはその体に彫られているであろう禍々しい色をした刺青である。

何を模した刺青なのかはわからないが厨二心くすぐるデザインでボロボロの服の破れた箇所から所々見えている。


身長は170センチ前後で夢幻と同じくらいの高さである。


俺が右手を上げると鏡の中の少年も右手を上げる。

左手を上げると左手を上げ、ダンスを踊ると全く同じダンスを踊ってくる。


鏡なのだから当然ではあるが俺と全く同じことをする少年はどう見ても20歳ではなく、15や16歳ほどの男の子である。


何故だ?俺は確かに異世界で五年過ごしその分の精神はともかく肉体は成長していたはずである。


向こうの世界にも鏡があったから自分の顔を見ることだって普通にできたし、だんだん少年から青年になっていく自分の顔つきや身長だって180センチ以上はあった。


俺若返ってない?

こんなあどけない少年に戻るなんて世界中のショタずきのオネェさんたちは俺のこと逃すはずがない!


だって合法なんだもん。

見た目は少年、中身は青年なのだから。

なんだその世界線?天国か!


うん?なんで俺の年齢巻き戻ってんだ?


これも異世界転移した何かが関係してんのか?

あっちの世界に行く前の年齢に戻るとか、いやだとしたら体のこの呪いの刺青だって消えててもいいはずだし。


まぁ、別にいっか!考えても結論が出ないことは考えない主義の男なのです、優人くんは。


俺はもはや靴として機能していないボロボロの靴を脱いで家の中に入った。


五年前となんら変わっていないことはなくある程度のレイアウトは変わっていた。

ところどころに置いてあった思い出の小物や家族写真は全て片付けられたか捨てられたかわからないが無くなっており、五年前よりも寂しいかんじになっていた。


できれば捨てられてないとありがたいが、あれらは俺の人生の思い出が詰まった品々なのだ。


リビングに入る前に俺は先に風呂を沸かすことにした。

脱衣所には一応数枚だが昔使っていたハンドタオルやバスタオルがおいてはあったが匂いを嗅ぐとあまりフローラルな香りはせずずいぶん前に洗濯したものをずっと引き出しに入れっぱなしだったようだ。 


お母さんはたまに帰ってきてはいるみたいだが、昔みたいに職場の近くに借りているらしいアパートの方で生活しているみたいだ。

なんの仕事をしているかは知らないがずいぶんと多忙な仕事なのだろう。

昔からこっちに帰ってくることなんてほとんどなかったし、お父さんと離婚してからはより一層帰ってこなくなった。


風呂場の方昔のまんま変わっておらず、さまざまな種類のシャンプーやトリートメントボディーソープなんかが置かれていた。


この家に、昔タムロしていた女性陣は各々こだわりのある人たちで美容品は各々これだと決めたもの以外は使わない人たちだったから、買い物するのも一苦労だったな。


1番年下で弟分という身分だったから俺はよくパシリにされてたなぁ。

しみじみと思いながらも数年も前のこういうシャンプーとかって使えるのかね?

姉御たちがうちに寄り付かなくなってから勿体無いからって理由であまりは俺がコツコツ使ってたけど一人で消費してるから全然減らないし。


まぁ、大丈夫でしょう。

これからは二人暮らしだから今までの二倍のスピードで減っていくわけだし何か違和感感じたら別の使用方法考えよ。


我が家の一般家庭よりは大きく造られた浴槽にボタンひとつ押してお湯を溜める。

ボタンを押すとお風呂を沸かしますという音声とともに浴槽にちょうどいい温度のお湯が溜まっていく。

現代化学さいっこう!


異世界じゃあいちいち湧水を汲んででっかい風呂釜用意してそこに水を溜めて熱して入ってたもんなぁ。

別に水を貯めるのはラプラス使えばすぐできたけど、いかんせん水温まるまでの時間が長いこと長いこと。


人一人分の風呂釜はハーベストのマジックボックスに入れていたからなんとかなったけど水がお湯になるまでが本当に時間かかった。


魔法で熱すればいいじゃんとか思うけどハーベストは魔法のコントロールが苦手というか制御する気が全くなく昔お願いしたら水は蒸発するどころか風呂釜も跡形もなく消え去った。


そんな苦労して熱したお湯に水を少しづつ足しながら絶妙な温度にする。

ラプラスと契約前はマジで地獄だった。


ただでさえ慣れていない旅に食べ慣れていない食事そこにさらに水汲みをしてお湯を沸かすなんて行為、過労死まっしぐらなブラック労働である。


苦労して沸かした風呂も基本女勇者たちに先に入られて、俺が入る頃にはまた湯加減を調整せねばならない。

昔からの習慣というのは異世界に行っても全く変わらず、俺は女性に逆らうことができない。


俺を奴隷の様に扱う姉御たちがこの体に刷り込んだ悲しき習慣なのである。


その腹いせに女勇者たちが湯浴みしているところを除いたりある時は、意を決して一緒に入ろう!とすっぽんぽんで女湯者たちの前に姿を晒した時はマジで殺されると思った。


特に癒しの勇者のはずのキュアーに調子乗ってんじゃないわよ!と初期魔法である魔法弾を股間にクリティカルヒットさせられた時は色んな意味で終わったと思った。


あの痛みは女には理解できまい。

俺は男の子から女の子に変わるんじゃないかと思った。

魔弾がクリティカルヒットした股間は癒してもらえなかったから自然治癒で元に戻した。


それでも懲りずに何度か女勇者たちの風呂を除いたり、混浴をねだったがその願いはついに叶うことはなかった。


そこからずいぶん先の話になるがソードとレーシッキとはよく裸をしていた。

一人で入っても寂しいからな。

レーシッキのクソガキは風呂嫌いだったから苦労したよ。

まあ、暴れる暴れる。

まだ、野生の猫の方がおとなしく風呂に入るぞ。


しみじみと異世界の楽しかった?思い出を思い出しながら俺は風呂場を後にした。


リビングの方に行くと一人で使うにはあまりにも大きすぎる三人がけのソファーに夢幻がのんびりと寝そべってくつろいでいた。


深窓の令嬢の雰囲気を醸し出す女性があんな日曜日のお父さんのような格好で寝転んでいるのを見るのはなんかこうグッとくるものがあるな。


リビングを見渡してもこちらも5年前とほとんど変わらずテーブルもいすもそのままにされていた。

少し埃のかぶっているところが目に入るがお母さんが掃除をしているところなど想像できずたまに家事代行サービスでも雇って掃除してもらっていたのであろう。


出なければ5年も掃除しないでこれだけの汚れなんてことはありえないからな。

ソファーで寝そべっている夢幻の近くに椅子を置いて風呂が沸き上がるまでの間の暇つぶしとしてテレビをつけた。


5年前となんら変わらないニュース番組が放送されている。

時刻は朝の7時らしくテレビの左上に表示されていた。


ちょうどはじまったらしい全国放送のニュース。

キャスターも司会者も5年前と見た目もほとんど変わっていなかったがそのせいかあまりの懐かしさに俺は帰ってきたんだなぁと改めて再確認する。


ふと、夢幻を見てみると興味津々でテレビに釘つけになっていた。

全てを見通すかの様なその瞳でじっと寝転びながらみている。


ニュースキャスターのお姉さんが今日の日付を読み上げる。

今日は5月1日らしく世間一般ではゴールデンウィークということになるのか。

このゴールデンウィークに行きたいところの特集や最近起こったらしい政治家問題に自然災害が今日のラインナップとして紹介される。


俺もその項目に釘つけになる。

いや正確にはその上に書かれている小さな文字。

今日の日付、の方ではなく西暦の方の数字。


俺は確かに5年間異世界にいた。

だから勝手にこっちの世界でも5年の月日が流れているものだと勘違いしていた。


だが、そこに書かれていた年数は俺がこの世界から異世界に渡る一年後の年数だったのだ。




読んでくれてありがとうございます!

もしよければ評価とブックマークの方を是非是非お願いします!


執筆の励みになりますしモチベーションの向上にテンションもアップしますので


え?同じことだって?

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