邪神についての説明、あと邪神ができることと彼女の名前
「今だから聞くけどさ、結局邪神ってどういう存在なわけ?ちなみに俺は数百年に一度世界を滅ぼす厄災って教えられてたけど」
今俺と邪神は先ほど邪神が倒した黒い犬の残骸を回収していた。
回収と言ってもなんかあの犬、気がついたら骨だけしか残ってなくって肉も血も臓器も何もかも綺麗さっぱり消えて無くなっていた。
骨だけしか残らんとかそれこそ犬しか喜ばねーだろ!
倒したら得られるものが骨だけとか、この辺りで狩りをして暮らしている奴らからしたらたまったもんじゃないだろう。
食う部分が全く持ってないんだから。
こいつの肉、どんな味かちょっと楽しみだったのに。
案外骨の部分がうまいかと骨を噛み砕いて飲み込んでみたが無味無臭。
石とか石炭とかと似たような味がした。
味してんじゃんって?これを味というにはいささか無理がある。
ちなみに石や石炭は食べたことがあります。
かといってこのまま放置しとくのもなんかもったいないので俺は持てる分だけいまこうやって、ラプラスをうまく使い回収しているのである。
絨毯のように広げてその上に積み上げる。
ハーベストや天将くんがいればマジックボックスとかいう四●元ポケットで楽々運べるのになぁ。
そんな俺を見て邪神も骨拾いを今手伝ってくれているのである。
ちなみに今の邪神は全裸ではない。
彼女のその芸術品とも言えそうなその美しい体には、ゴツゴツとした黄金の鎧を見に纏っていた。
側から見れば美女と鎧という異例な組み合わせはベストマッチしているといえよう。
ちなみに鎧はラプラスを2つにわけた、半分を鎧に変形させた。
流石に美女をずっと全裸ってわけにもいかんだろ。
風邪ひかれても困るし。
邪神様に風邪をひく概念なんてないとは思うけど、人としてのモラル的に着心地は最悪だが圧倒的な防御力は、保証する。
「私がどういう存在か?そんなもの邪神以外になにかあるか?」
何を馬鹿なことを言っているといった顔で俺のほうを見る邪神。
いや、それはそうなんだけど。
「何を持って邪神と設定されるとか、あるじゃん色々。だいたい初めから邪神ってわけでもなかったんだろ?」
「そう言われてもねぇ。私がこう意識をというか自我を持ったのがついさっき、あのクソ聖剣ボケ野郎が私のこの顔にこの傷をつけた瞬間に私はこうおもったの、いってーって。その遺書返しとして自分が操れるエネルギーを暴走させて、同じ痛みを味あわせてやるっておもったの。そしたらあなたが私を抱きしめた瞬間にあなたの中の知識?みたいなものが入り込んできて気がついたらここにいたんだもの。だから別に邪神が何かって言われたら、あなたの知識をまとめて考えると世界をまとめさせるたびにでっちあげられたただの現象でしかないのよ」
邪神は自分の額に痛々しくついた傷を指差しながらそう答えた。
相当恨み持ってんなこれ、クソ聖剣ボケやろうって。
つまり、こいつ自身も自分がどういったものかははっきりとわかっていないらしい。
「天将くんの一撃で感情が覚醒して俺が触れたことで知識を得たってことか?じゃあ、今の邪神は俺のコピーみたいなもんなのか」
「それは違うみたいね。私には知識だけであなたの記憶は受け継がれてないもの。あなたが知っている物事に関してはわかるけどあなたがそれに対する感情や情熱に関しては全くわからないもの。料理や魔法でもその理論や使い方作り方は知ってるけど、実際にやってみると全くうまくいかないでしょ?それと同じよ」
「その例えあまりピントは来てないがわかった。全くわからないことについてわかった。これは大いなる前進だ!つまりこれ以上この口論に何か考えても時間の無駄!という結論が出たことはすばらしい!」
俺は持てる骨の山をラプラスと自分の両手でもち、邪神は何か黒い穴のようなものに犬の骨を放り込んでいた。
え?ちょったまってください邪神さん!それって、まさかのアイテムボックスですかい!
「ん?なによ。あなたも早く入れたらいいじゃない。こんなでかい骨手で運ぶなんて非効率よ。あっちにまだまだこのワンちゃんよりも大きい骨がゴロゴロ転がっているのだから」
そう言って俺の持っている骨をそのままアイテムボックスに放り込む邪神さん。
ラプラスもその黒い穴に持っていた骨全てを投げ入れて元の球体状に戻り、ふわふわ浮いたまま邪神の後につづく。
すげぇな、さすが邪神。向こうの世界でも全人類含め数人にしか扱えなかった夢のマジックボックスを最も簡単に再現するとは。
俺も知識ではこうやるんだなとは知っていたが俺には一切の魔法の才能がなかったので扱うことはできなかったが。
マジックボックスどころか、子供からでも使える初級魔法すら扱えやしなかったがな!泣
少し歩いたところにそのしかばねの山々はあった。
先ほどまでは一面の草原だったが、見渡す限りの骨骨骨。
軽く10頭ほどのあの黒い犬らしき骨の山々があった。
しかも先ほどの黒い犬の数倍はでかい頭蓋骨が数あるところを見るとどうやらあの黒い犬はこの群れの中でも子供だったよである。
こわ!
やっぱりこいつ邪神だわ。
ビーム打つし、人の知識勝手に奪うし、マジックボックス使えるし。
邪神は何事もなくその巨大な骨の山を突如発生させた巨大な黒い穴で飲み込んだ。
先ほどまでの骨は跡形もなく取り込まれ後には綺麗な草原が残った。
「後片付け完了!私を食べようとした報いよ、仕方ないわよね。この骨はどうするの?あなた先ほど食べてたけど、骨が好物だったりするの?変わっているわね」
「食うわけねーだろ!こんなおいしくないもん、何かしらの加工に使えないかって思っただけだ。はぁ、俺これからみんなにお前を紹介するの怖いんだけど、頼むから喧嘩しないでくれよ」
「私の顔に傷をつけたあのクソ野郎だけ殺していい?」
「だめに決まってんだろ!俺の大親友だぞ!可愛く首をかしげたってだめなもんはだめ。上目遣いもダメ!あと簡単に人を殺すとか言わない。人なんて殺したらEDになっちまうぞ、まったく」
一つため息をついて、俺は草原を歩き出す。
その隣を邪神が付いてくる。
「別に俺は被殺主義者でも、宗教に何かしら入っているわけでもないから動物を狩ることに何かしら疑問を持っているわけじゃねーけど。話し合いで済むなら、それが一番だしそれでだめだった時は殴り合えばいいとも思っている。けど、殺しあうのはだめだ。これはだれのためでもねぇ自分のために言ってんだ。オーケー?」
「わかった、半殺しで我慢するわ。それでも行き過ぎて殺してしまいそうになったらその時は止めてね」
邪神は全くもって納得のいっていない顔をしているが、一応口ではわかったと言ってくれた。
案外物分りがいいんだな、賢い子供みたいだな。
「命に代えても止めてやるよそん時は」
俺は邪神の頭を撫でる。
邪神は何も抵抗することなく少しくすぐったそうに目を閉じる。
なんか懐かしいな。
よく、俺も撫でてもらったけ?あの人に。
それを真似して、兄貴分や姉御ぶんたちの頭をよく撫で回してたんだよな。
あの人が死んでから一切やらなくなったけど、俺は少しはあれから成長できたかな?
もう二十歳になるけど、少しはあんたよりも立派な大人になれてるといいな。
邪神の頭を撫でながら少し思い出に浸っているとふと一つくだらないことを思い出す。
子供が生まれたら何て名前にするのか。
俺と天将君のおかげで知恵と意識を持って自我が芽生えたんだから俺のこと言っても過言はないだろう!
三つあるうちの一つはつかちゃったから女の子らしい子の名前を。
「邪神、っていうのもなんかしっくりこないし、俺から一つ贈り物やるよ」
「贈り物?」
「あぁ、名前。苗字は俺と同じ友城を名乗るとして名前の方はもう決めてある。夢幻。お前はこれからこの夢見たいな幻の世界を楽しんでいきてほしい。そういう願いを込めて夢幻、君にこの名前を送ろう」
邪神、いや夢幻は嬉しそうな恥ずかしそうな顔をして笑った。
その笑顔は邪神などではなく女神のように美しい微笑みであった。
そんなことをしゃべっているとだんだんと目でわかるほどの人工物が見えてきた。
ようやく街についたと一安心、とりあえずは冒険者ギルドにてこの黒い犬の骨を売って服を買おう。
そのあとは風呂に入ってさっぱりしたい。
邪神、いや夢幻のいる神殿までほぼ毎日タオルで体を拭く生活だったから、熱いお湯に浸かってさっぱりしたい。
日本人にはお風呂は欠かせないものなのである。
ハーベストのやつもケチだよな、お湯くらい魔法でだしてくれてもいいものの。
減るもんどころか増えるもんだしよぉ。
あーだんだんはっきり見えてきた。
巨大なビルに、所々に放置された自動車、日本語で書かれた看板の数々。
今はなつかしき、我が故郷の光景。
・・・・はぁ!
いやちょっと待って、まじで?えっ!なんで?
俺は今目の前の景色に冷静になりきれなかった。
目をゴシゴシと擦る、何度も何度も擦る
だってそうだろ?おれ、帰ってきたの?ここに?この国に?
というか、ここ俺の地元!
五年ぶりでなんだかぼんやりしてたけど、見知った看板が見知った場所にある!
俺は逸る気持ちを抑えながらそれに向かって大声で叫んだ。
「ただいまーーーー!地球!ただいまーーーー!日本!!俺は帰ってきたんダーーーー!」
飛び跳ねながら、俺は街へと駆け出していった。
早朝ランニングしているおっさん。
「え、やばくねあの男の子の格好あんなボロボロの服着て、通報したほうがいいのかな?でもタトゥー入れてるみたいだし、そういうファッション?」
早朝に犬の散歩をしている老夫婦
「あんなに体に刺青を入れてボロボロの服を着るなんて全く最近の若いもんは!」
「喧嘩か何かしらおじいさん、ですが隣の女の子はとても綺麗な格好だし何か訳ありなのかしら?」
「ワン!」
朝帰りのサラリーマン
「あの、半裸の少年すごい高いテンションでスキップしてたな。いいねぇあんなかわいい彼女と朝まで楽しく、に比べて俺は会社で朝までお仕事、ふぁねむ」
早朝の街中。
すれ違う人々に何やら奇異な目で見られていると感じる優斗であったが、夢幻の美しさゆえにみんな見惚れているんだと勝手に解釈をした。
その視線のほとんどが自分に向けられているなんて思いもせずに。
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