それじゃあ死のうか
掲載日:2019/12/16
君の始めた奇妙なゲームの、ルールは至ってシンプルなものだった。
嘘の得意な君が、即席の不幸話を語り出す。
僕はそんな君に向けて、「それじゃあ死のうか」とため息混じりに返す。
校舎から駅までの、5分足らずの道すがら繰り広げられる、君と僕だけの、くだらない言葉遊び。
「昨日恋人が死んだの」
「それじゃあ死のうか」
「親の借金のかたに風呂に沈められることになった」
「それじゃあ死のうか」
「宇宙人が攻めて来て、人間を十分の一に削減するんだって」
「それじゃあ死のうか」
「歳を取るなんて嫌!私は美しいまま散りたい」
「それじゃあ死のうか」
「このちっぽけな世界が嫌い。でも、この中でしか生きられない」
「それじゃあ死のうか」
「ゾンビに噛まれた。君が食べたくて仕方ない」
「それじゃあ死のうか」
「君がいるうちに死んでしまいたい。私の死に価値があるうちに」
「それじゃあ一緒に死のうか」
君の負けだよと、君は笑顔を零して、今日の別れを告げる。
硝子細工のような君の心は、僕にはよくわからない。
それでもなんとなく気がついているんだ。君が必要としているのは、君を分かってあげられる僕じゃなく、分かってあげようとする僕なんだと。
いつか君を理解した時が、きっと僕らの本当の別れになるのだろう。




