第0章 プロローグ
私の名前は杉原千佳。
今年二十歳を迎えた。
今は高校の同窓会から帰ってきたところ。
そして、その時にふと思い出した幼い頃のある夏の記憶。
あれがあったのは恐らく小学校低学年程の頃だろう。私は祖父母の家にお盆休みだということで父親の帰省についていく形で泊まりに行った。
祖父母の家はかなりの田舎にあり、バスも走っているか怪しい程だった。
勿論電車などなく、車で祖父母の家まで行った。
祖父母の家まで20キロ程手前にドラッグストアがあり、そこでお酒やお菓子などを買い、道中にそれを食べながら祖父母の家に向かった。
祖父母の家に着くと祖父母は嬉しそうに迎えてくれた。
祖父母の家が森の近くということもあり、耳元で泣いているほど五月蝿く鳴いていた蝉の声は今でも思い返せば鮮明に再生される。
あの日はいろんなことを祖母に教えてもらった。それらすべての話を頷きながら聞いていた。
思えば、昔の私は幼いながらに科学に興味があったらしく、それ故か、非科学的なことは信じなかったという。それなのに、あの時祖母のした仏様とか神様とかの話は納得して聞いていた。
神話などが現実かどうかなんて保証はないのになぜ納得したように聞いていたのだろう。
彼女の話にどこか現実味を帯びたところがあったのか。今では祖母の声は思い出すことはできないが、話の内容はほぼ口に出すことができる。
といっても、全部言えと言われれば数が多くてその前に私が疲れてしまうだろう。
そして、その中に『こういうお盆の日は、水辺に行ってはいけないよ』というのがあった。
しかし、子供の好奇心とは恐ろしいもので、それを検証すべく近くを流れる川へ向かった。
川についた時、何か冷たいものが私の首筋を撫でた。風かと思ったが髪はからはなんの感触も感じず、不思議に思い川に目を凝らして見た。すると、川には何やら渦のようなものがあり、それからは煌煌と光の筋がこちらを睨んでいた。