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平凡な猫による異世界記録  作者: 弦祥 蓮
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6ページ目、ガラスを好きであったこと

 はじめの方で言ったが、私はガラス工芸家だった。まあ、量産型だったもので独立してやっている方のような独創性など大層なものは持ち合わせていなかった。しかしまあ、火の扱いとガラス物の基本的な作り方はよく知っていた。


 この世界は、魔物が侵食してから技術よりも魔物の息を止めれる魔法を重視した。


 魔法さえ使えれば、今までのものなど優に超える物を作り出せる。よってそれまでの物をガラクタといい、街の地下などに溜まっていた。


 私はその中からガラスをかき集め、魔導師に頼み込んで高温の火をつけて貰った。くるくると回して小さなガラス細工を作り上げた。


 本当は、小さい頃はガラス細工を見てそれを自分で作ってみたかったのだ。宝石のような、もろくて繊細で丁寧に扱うべきものと思わせる物を作りたかった。


 今、私には義務はない。だからガラスに触れる必要もないが、義務から離れた瞬間、子供の頃に夢見たガラスが恋しくなった。



 作ってみれば案外できるもので、私は初めての量産物ではない自分のガラス細工を猫の像にした。


 透明と黒色と青色を使った、ポイントカラーで蒼眼の猫。そう、これは私が何よりも好きで、今の私の親でもある、シャムだ。



 魔導師はその様子を隣で見ていて、「魔法もなしにこんな物が…」とか言っていたが、その時の私はガラスへの想いを思い出し、ただガラスに触れていたかった。



 そして暫くしてから夢中になって作ったガラス細工は7個。そのどれもがシャム猫であり、様々なポーズを取っている。



 作り終えたその一つを手に取り、そっとなでた。愛おしくて仕方がなかった。初めてガラスに触れ、初めて自分でガラスで作品を作った日の事を思い出した。不格好で、夢に見たガラス細工とは似ても似つかないが、私はこの年になっても持っていた。

無論、転生した際に全ては元の家に置いていってしまったのだが。


「この技術、遥か昔に居たガラス工芸家の物ですね?何故これを…。」


 少し考え込んだと思ったら、魔導師は私に詰め寄ってきた。


「貴方は、一体どれだけの歴史を目にしてきたのですか。」



 皆様はお分かりだろうが、私はそう長いこと生きてた訳では無い。私は過去にいたのだから。


「…さあ?あなたの知らない、はるか昔を少し…。それから今に至るまでの記憶はありません。」


「…!まさか、記憶をなくしているのか!」


「ぅえ?…あぁ、ソンナカンジカナー」


 即座に誤解されたことを悟るもその誤解に乗っかった。


 手の中にあるガラスよりも眩しい光を放つ魔導師に目を向けれず、冷や汗をかいた。嘘をつくというのは心の底が冷えるようだと思いました。

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