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平凡な猫による異世界記録  作者: 弦祥 蓮
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5ページ目、人としての生活

 なぜ皮肉なのか?まあ、後々話すから。


 人となった私に、魔導師は早速私に課題をかせた。紡ぎの魔法を使えるようになること、だ。ここで暮らしていくには必要最低限の魔法なんだとか。


 しかし、私は魔物が現れるより前の時から変わらずに密かに暮らし続けてきた猫の一匹である。魔法などわかるはずもなく、使えるはずもない。


 そこで魔導師は少し考え引き出しから何かを取り出し私に渡した。



 渡されたのは、小袋だった。

 この一連の行動に謎に思っていたら、魔導師から説明を受けた。



 曰く、この小袋は特定の魔法を所有者に掛け続けることができるという。簡単に言えば、この小袋を持っていれば、ずっと魔法にかかった状態なんだそう。ここの世ではカラーボールの代わりに体の自由を奪う魔法がかかった小袋を投げ、犯罪者を捕まえるという。


 私には、紡ぎの魔法の小袋を渡された。魔導師いわく、最近の人間であれば多い少ないあれど魔力を持っているから魔法が誰でも使えるが、私は一切魔力がないので魔法を扱える扱えない以前の問題なんだそう。

ちょっとだけ魔法が使えたらなと思った私は少しだけショックを受けた。


 異世界に来たものが、魔力が大量にあったり選ばれたものだったりするのは定石であったが、現実はそう優しくもないらしい。


 それから私は魔導師の弟子として振舞えと言われた。こちらは匿ってもらう身であるし、弟子としてあれこれ手伝い、恩を返そうと思った。



 しかし、出来た人間ではなかった私は、今世でもまた人に恩を返せるような人間ではなかった。



いや、なにかと直ぐに問題があったわけではありません。私も良い大人でしたから、一通りのことを覚えればそこそこに働いて見せた。


 魔導師には、猫とはこんなにも人に忠実なのかと好奇心の目を向けられた。猫の概念が歪むのは、猫好きの私には正直声を大にして訂正したかったが、恩人に迷惑をかけたくないという私にも朧気ながら残っていた良心が引き止めた。



 時折魔導師と一緒に町に買い物にでかけた。RPGのようでその道中も私はとても楽しく感じた。


 その様子を魔導師は訝しげに見ていました。魔物に襲われるかもしれないというのに、酷く脳天気だと思ったのでしょうか。


 いくつか必要なものを買っては小さな町に戻って魔法の研究をした。


 たまに、町で珍しい魔物の話があれば、魔導師は自ら魔物を捕まえに赴き、その仕組みを興味深く知ろうと奮起になった。



 私からすれば、その方が余程恐ろしい血相に思えたが、口に出すことはなかった。

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