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平凡な猫による異世界記録  作者: 弦祥 蓮
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3ページ目、人に会った日

 とりあえずで木から降り、上に登ったときに見えた町に向かうことにしました。


 この世界に生まれて初めて人に会えるかもしれないと思った私は、嬉しくて走ってそこに向かいました。

 その途中、ポフンとなにかにぶつかりました。見ると、スライムらしきものがいました。


 スライムは、透明でよう見ないとわかりにくいです。ぶつかったときは、ゼリーのようでひんやりしていました。


 私からぶつかりましたが、スライムは起こることもなくそのまま跳ねて行きました。スライムは、とても温厚な生き物なのかもしれないとその時は思いました。


 それからは少し気をつけながら走りました。正直、夜でなければ悪い部類に入る視界で、うじゃうじゃといるスライムを避けきるのはとても大変でした。というか何度かぶつかりました。避けきるのはむりでした。はい。


 その度(猫語で伝わらないが)謝罪の言葉を行って、そそくさとその場を去って町に向かっていった。


 50センチ程の高さの柵を軽々と超え、入った町は、そう田舎でも都会でもないところに住んでいた私から見ても、原始的と言えるものであった。

 竪穴式住居ほどではないが、木材がそのまま使われた、自然と共にあるような家が並んでいた。


 異世界の人の街は、凄く発展しているか原始的かの極端だと思いました。

 とりあえず私は町を散策することにしました。気分はゲームの中の勇者です。しかし、今の見た目は猫です。そしてこの世界では恐らく猫は一般的には知られておらず、人以外の生物といえば魔物と考えられているでしょう。そんな中、私の姿を見た人はどんな反応をするでしょう?


「ま、魔物が侵入して来ているぞ!」

 と、私を見た男性は叫びました。耳が壊れるかと思いました。猫は人の何倍も耳がいいのでその言葉を良く聞き取りました。

 男性は私が近づくと尻もちをついてしまいました。近づくと、心臓の音がバクバクと聞こえました。随分と怯えているようですので、ぺろっと舐めてしましたが悲鳴をあげられました。


 私はこの時あった人間が、この男性だったため魔物として見られる立場で人からどんな扱いをされるかイマイチわかっていませんでした。


 次に来た人は、長い棒を持っていました。多分木の薙刀だと思います。知り合いが持っていた薙刀を見せてもらったことがあるので、一応知ってます。


「見たことない魔物だ…。どんな能力を持っているか分からない」


 私を見て蒼白した顔でそう言いました。すみませんね、なんの能力も持ってませんよ。ええ、なーんも。


「俺が相手だ!誰か魔術師を呼べ!」


 薙刀をぶんぶんと振っていて、それを見ていたらどうにも捕まえたくなってしまって必死に追ってました。猫の本能ですね。木に爪を立てるのは正直楽しかったです。すみません。薙刀に傷付けました。


「魔術師です!魔物は何処ですか?」


 暫くそうして運動をしていたら、そんな声が聞こえました。そちらを見たら、典型的な魔法使いの格好していました。つばの長いとんがりボウシに地面に付きそうなローブ。あの格好って何か意味があるんでしょうか。未だにわからないです。


 魔術師は私を見て、驚いた顔をしていました。そしてすぐに私を持ち上げました。

 周りの人がどよめきました。私もびっくりです。でも人に持ち上げられるのはぬくもりがあって気持ちよかったです。


「これは、魔物とは違うように思います」

「それはどういう事ですか」

「これからは、魔力を感じません。魔物としての能力どころか、紡の魔法も使えないでしょう」

「そ、そんな!?紡の魔法も使えない?」


 私はこの会話で、この人たちも紡の魔法を使っていることを察しました。先程から口の動きと聞こえる言葉が違うのはそれででしたと。

 それと同時に、疑問が残りました。ここに来る前にあった魔物は“魔物なら”本能的に使える、と言ってました。しかし人は魔物ではありませんが見ている限りすべての人間が使っていましたから。


 これは後で聞いたのですが、昔の素晴らしい魔法使いが魔物が常時使う魔法に気付き、それを擬似的に使えるように研究したそうです。その研究を自身の弟子に繋ぎ、誰でも使えるように改良をしたそうです。ここでは単純な魔法であればある程度練習すれば誰でもできるようになるとの事。

 また、この世界では魔物が突然変異で現れ、そこから爆発的に増加し魔王が誕生しました。そして魔物を無くすべく紡の魔法を使い、世界中の人々が協力しあっているそうです。



「そんな生き物が…」

「おそらくは、争いの大代に広く人々に愛された猫という生き物だと思います。文献に載っている姿とも激似しています」

「あ、争いの大代の生き物なのか!?」


 争いの大代は、弥生から魔物が現れるまでの時代の総称らしい。


「信じられませんが、それ以外に考えられません。すみませんが、この猫を私が預かってもよろしいでしょうか」

「構わないよ。でも、危険があったら直ぐに殺してくれ」

「ええ。勿論無責任で引き取るつもりはありませんから…」


 私は魔術師に抱っこされたまま、魔術師の家に向かいました。ま、私は何もしていませんけど。


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