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リセマラ部  作者: ツチイ・シンシュン
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第4章-3 少数だからこその需要

 何故そうなっちまうんだ! 田舎なら他にも仕事はあるじゃないか! 酪農とか田んぼとか、工業だって一応あるしな!

「ちょっと待ってよ! 何で都会まで来て田舎臭いことしなくちゃいけないのよ⁉」

「天を味方にする者は影の敵。かの者に手を貸すことは許されん」

 その案に宇梶さんと山田さんが拒絶する。

「そもそも農業をするってことは東京を出なくちゃいけないんじゃないの? 都内に畑なんかある訳?」

 宇梶さんが問いかける。

 確かにここでまともな土を見るとしたら公園以上の広さは見込めない。となると他県に行くのか?

「実はそうでもないんですよ」

 真っ当な質問をした宇梶さんに答えたのは亀城さんだった。

「最先端の農業は今までとは別物何です。そして、その畑は――実は東京都内にあるんです」

「はぁっ⁉ どこにあるのよそんな土地⁉ そもそも畑何て見たことないわよ?」

「確かにそうだよな……。できても一般家庭の畑程度だ。それでも一畝程度が限界か?」

 まさかの都内で行える農業があることに、宇梶さんは驚き俺は疑問を抱く。

「いいえ、広い土地があります。そして宇梶さんが見たことも無いというのは当たり前なんです。その畑は、ジャンクションの上にあるんです」

「マジで⁉」

 宇梶さんが慄いた。

「ジャンクションって高速道路の交差する場所だっけ?」

「そうです。基本的には屋外に作られている物が多いのですが、畑があるのは屋内を通っているジャンクションが対象です。屋内型ジャンクションのデッドスペースである屋上部分を利用した畑です」

「これね……こんなの知る訳がないわよね……。ジャンクションの屋上なんてヘリでも乗らない限り見ないわよ」

 宇梶さんがスマホで何かを見て納得する。それを覗き見ると都内を上空から撮ったような写真が載っていた。周りのビルを見る限りかなり大きなものに見える。

「こんなとこにあるんだな」

「これ以外にも緑化公園にしたりなど、二酸化炭素の排出問題に取り組むなどしているようですね」

「車が多く通ってる上で二酸化炭素対策してるのか」

 ぶっちゃけこれだけの緑では焼け石に水な気もするけど。

「いいことしてるんだからやろうよ! 皆必要な衣食住の一つを私たちが担うんだよ! 必要な物は裏切らない。これが大切だと思うんだ!」

 うわー……目がガチだ。絶対今まで通りすぐ、いやそれ以上に早く飽きると思うのに!

 俺含め三人があまり乗り気でないのだから多数決によってこちらが既に勝利確定しているにも関わらず、何故かこちらが押されているような錯覚さえ覚える。

「ご迷惑だとは思いますが、皆さん玲音さんのお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

 そこへ今度は亀城さんが頼み込んできた。

 熱心な呼びかけに丁寧な呼びかけが加わったことによって俺たちの心は揺さぶられる。その理由は単に二人になったからだけではない。

 一ノ瀬さんが熱心になるのは分かるが、普段は宥めると思う亀城さんも真剣みのある表情で懇願してくるものだから、俺は折れた。

「……わかった。よくよく考えたら俺のやりたい事は一番初めにやってもらったから、お互い様だ」

 いい結果にはならなったけどね。それでも貴重な体験になったことは間違いない。俺はたぶん、コンビニでバイトはしないだろう。

「それ先に言われるとね……あたしの勘違いの為に色々迷惑かけちゃったし。あたしのは良くて玲音のは駄目って言うのは酷いわよね。わかったわ! 土まみれになってやろうじゃないの!」

 宇梶さんも無駄に男勝りな返事をする。

「我は影故に陽は好かぬ。――でも、ここで断ると嫌われそうだし……」

 山田さんも型は崩したくなかったんだろうが、それ以上にこの部から嫌われたくない気持ちが強かったのか、ごにょごにょと小言を漏らしていた。

「ありがとう! じゃあ綾野。農業やってる人にお願いして今から行こうよ!」

「やっぱ今日行くのか……」

「お決まりよねこれ。この部の部費ってどうなってんの?」

「矢代高校にも一ノ瀬グループの息がかかってるらしいぞ?」

「……一度調べたいわよね。どこまで幅を広げてるのか」

 俺と宇梶さんが溜息交じりに会話する。

「確か一葉さんが不動産ついでにやられていたはずでして――? 何か暗いですね?」

 亀城さんが疑問の声をあげる。

「闇が涙をもたらしたようだ」

 それに答えたのは山田さん。と言う名のタクスキア。

 窓ガラスに右手を添えて外を見る彼女の前にはいくつもの雫が垂れ落ちている。

「雨か。さっきまで晴れてたのにな」

「最近多いよねー。気候の変化って怖いね」

「ゲリラ豪雨ですか。最近多いですよね」

 嬉しがっている少女とは違い、憂鬱になる二人は外を見ながら溜息を吐く。

「ねえ、雨の中でも農業ってやるの?」

「台風前とか収穫前なら普通に雨の中でも作業をするけど」

「マジで⁉ この雨でやるの⁉」

「台風直撃前だともっとすごいぞ?」

 葉菜類みたいに地上に生える物は勿論、根菜類のような地面の中で育つものでも、水のやりすぎで腐ったりする可能性があるから雨は皆が想像している以上にシビアだ。宇梶さんが苦虫を嚙み潰したよう顔をしているが、こんな状況でも仕事はある。

「流石に体験入社するのにこんな雨ですと仕事をさせて下さる方たちにも申し訳ないので、晴れている時に行くことにしましょう。それでいいですね? 玲音さん」

「うーん……こんな雨の中でも亮一は頑張ってるんだよね?」

「ぶっちゃけ俺は引っ掻き回されてるんだけどな……」

 突然の雨に真夜中に叩き起こされた時は軽く喧嘩したからな。

「それでは話は私の方でつけておきますので、今日はここまでにしましょうか」

「はぁ~い」

「まさかあたしが農業か……」

「陽の元……暑いの嫌何だけど」

 それぞれ思うところ有りな返事をしながら、今日は解散することとなった。

 その後も雨は続き、晴れ間を拝むことが出来たのは、それから三日後の土曜日だった。

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