天才たる所以
何の取り柄もない少年の正体は…?
前世で天才と呼ばれた少年は暗殺され、異世界で第二の人生を送ることになった。
腐敗し荒廃した異世界に失望した彼は、知識や能力を使って部下とともに異世界を支配しようと決意した。
「天才」
僕は物心ついた時から周りからそう呼ばれていた。
何の研究をしても周りが望む成果を出し続け、褒められ続けた。
それが嬉しくてさらに研究に埋没していた。
そうしてどんどん新しいことを発見することが楽しくて仕方がなかった。
ただ高校に入る頃には大人の裏の面も見えてきてしまった。
僕を利用して金儲けをしようとする企業、政治利用をしようとする政治家、犯罪利用を目的にする人間
いつのまにか友達はいなくなり、周りにはそんな輩ばかり集まるようになってしまったのだ。
そうして、「保護」の名目で国に管理されることとなった。
ある日政治家は言った。
「お前は利用されるだけの人間、それ以外に価値はない。ただ言われた通りに成果を出せばいい」
彼らにとって僕は道具に過ぎなかった。
これが本当に僕が行きたかった人生なんだろうか?
周りで楽しそうに生きていた同級生が恨めしかった。
なぜ、僕だけがこんな目にあわなくちゃいけなんだ。俺も普通の人生が送りたかった。友達と遊んで笑い合う、そんな生活が良かった。こんなことなら天才になんて生まれなければよかった。そんなことばかり考えるようになった。
そしてある日、政府から新兵器の開発命令が下された。開発されれば世界のパワーバランスが崩れかねない代物だ。
それでも、道具としてしか生かされていない僕は命令に従った。
そうして完成間近のとある日、僕は突然屈強な暗殺者に取り囲まれた。それはそうだ、そんな兵器の開発図を記憶している僕を放っておくはずがない。どんなに鈍感なやつでもわかる、用済みになればいづれ殺されるのだろうなと。
でも、それでいいような気がした。
こんな人生を送るくらいなら、死んだほうがましだ。生きていても何もいいことはない。いい機会じゃないか。
「死のう」
僕は抵抗を諦めた。
せめて、もし生まれ変わったら平凡な人生を遅らせてください。
そう神に祈って僕は殺された。