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6.乱 5

  4



「わが名は蒼炎そうえん。先々代の月牙当主より『蒼』の一字を受け継ぎ、先代当主と並び、血統正しき者。膝を折るが良い、僭称者せんしょうしゃ



 蒼炎は甥を傲然と見据えて言った。



「そのほうがこの場にて戦うは、実に相応しい。騎士の戦いに介入し、その真似事をするが分に応じている。おとなしく恭順きょうじゅんの意を示し、当主の座を明け渡すが良い」


「叔父上には何か勘違いをされておられる」



 氷玉ひぎょくは進み出ると、答えて言った。



「わたしが来たのは兵士をねぎらう為。その折にそちらの騎士が不遜な言葉を吐いたゆえ、罰を与えた。それをこのように言われるとは。さもしい心根が見えると言うもの」



 蒼炎は眉を上げた。



「さもしいだと。名を一字も継がなんだ者が何を言うか。そのほうは『名無し』。父よりも母よりも名を得る事ができなんだ者。このわたしに何か言える立場ではないわ!」



 吐き捨てるような口調だった。その場にいる貴族たちも、冷たいまなざしを彼に注ぐ。その中で一人、ためらうような顔をした者がいた。グロフは彼に目を止めた。戦の口上を述べに来た貴族だ。確か、雪雅せつがとか言った。



「叔父上らの言う事は、いつも同じ。わたしの名について。ゆえにわたしが当主の座に相応しくないと……聞き飽きた」



 氷玉の気配が変わった事にグロフは気づき、はっとなった。貴族たちに緊張が走る。



「名を得られなかった者。淘汰とうたされるべき存在。生き延びるはずもなかった益体やくたいもない者よと、誰もがわたしを呼ぶ。そのわたしに倒された父、蒼牙そうがは何者か。きば子爵は。雪華せつが伯とさい子爵は何ゆえに倒れた。簡単な事だ。あれらはわたしより劣っていた」



 この言葉に彩子爵を父に持つ淡雪の姫、緋雨ひさめ男爵闌火(らんか)柳眉(りゅうび)を逆立てた。



「わが父に対する非礼、許しがたい。そのほうごときに遅れを取る父ではなかった。おのれはわが父をはかりごとにかけて倒したのであろう」


「わが同胞を討ったそのほうが『牙』や『蒼』の名を持ちさえすれば、心安らかでいられた。先代当主の認めた者であるならば」



 雪華伯爵を叔父に持つ紅真珠の君、華乱からん男爵雪綺(せつき)は淡々とした口調で言った。



「だがそのほうは『名無し』……名を持たぬ者。これではわれらの誇りに傷がつく」


「淡雪の。紅真珠も。わたしが名を得られなんだ事が、それほどまでに許せぬか」



 穏やかと言える口調で氷玉は言った。雪綺が視線を尖らせた。



「それだけであれば、わたしも歯向かいはしなかった。しかしそなたは雪華の伝統あるはく男爵の位を、闇魔族とも呼べぬやからにくれてやった。臣下に下った一族とは言え、この扱い……屈辱と言わずして、何と言おう」


「華乱子爵の名は残した。爵位は下げざるを得なかったが、名は残したのだ。であるのに白の名がそれほどに恋しいか、紅真珠の。服従した一族の爵位を抹消するは当主の権利。それを残した事でこうも責められるとは」


「あの半端者に爵位を与えた事自体が間違いなのだ。あれは闇魔族ですらない。これこそが、そのほうが当主の資格に欠ける証」



 蒼炎が言った。



「どの貴族も子を作る時には細心の注意を払う。より優秀な子孫を作る為に。そうして最も多く血と力を受け継いだ者に、己が名より一字を取って与えるのだ。『名無し』とは劣った者。淘汰されるべき者だ。氷玉。そのほうは兄上の子の内で最も卑しく、力なき者」


「わたしはそうは思わぬ、蒼炎」



 はっきりと叔父を名指しで呼び捨てると、氷玉は微笑んだ。



「父、蒼牙はわたしより劣っていた。ゆえにわたしに敗れたのだ」



 蒼炎の顔に怒気が登った。



「よくぞ言った。『名無し』の忌み子が!」




 その言葉と共に、戦いの火蓋ひぶたが切って落とされた。




*  *  *




「お逃げくだ、」



 ガイリスが言った。その体を貫く緑の触手は彼の血を吸い、見る間に成長する。



「こっちだ!」



 ガイリスの方へ駆け寄ろうとしたユーラを、誰かの手が捕らえた。半ば引きずられるようにして、その場から離される。



「放して、ガイリスが!」


「もう助からん、放っておけ!」



 怒鳴られてなおも引きずられる。ユーラはしかし、その手を振りほどこうとした。すると手で顔を殴られた。



「おとなしくしな。あんたには大金がかかってるんだ」



 言われた事にユーラは愕然とした。炎に照らされ、自分を捕らえる者の姿が赤く染まる。頭が痺れるような香りがした。村人にしては、くずれた雰囲気の男。武器を持つ者の気配がした。



「村の人じゃないわ。あなた……渡りの戦士か、傭兵?」


「良くわかったな」



 そう言うと男はユーラの腕をねじり上げ、悲鳴を上げようとした口を片手でふさいだ。



「半獣どもに助けを求めても無駄だぜ。ちょっとしたしかけがあって、おれの気配はわからねえ。一緒にいるあんたのもな」



 楽しげに男は言った。ユーラはもがいたが、男の腕を振りほどけない。イリリアたちもなぜか、こちらにまるで気づかなかった。



「豪勢な焚き火じゃねえか。いいはなむけになるぜ。依頼をくれたのは貴族さまさ。あんたが、どうしても欲しいんだとよ。良かったじゃねえか、出世だぜ。連れてかれた先で何をされるかは知らねえがよ」



 そう言うと男は、ユーラを引きずって村の入り口に向かった。





 村の入り口近くには、なぜか人の姿がなかった。膜を押すような妙な感覚の中を通り抜けると、そこに荷車があった。別の男が待機していて、ユーラを見ると縄を取り出した。さるぐつわをかまされ、手足をしばられる。荷車にはひつぎが積まれており、少女はその中に放り込まれた。蓋を釘で打ちつける音。がたごとと音を立てて荷車が動きだす。



(ガイリス……、イリリア、アルシナ)



 柩の中でユーラはうめいた。



(ガイリス……!)


「急げ。礼金が待ってるぜ」



 そんな声が聞こえた。



「にしても何なんだ、この娘。呪い師か?」


「知らねえし、知る必要もないさ。貴族さまが欲しいと言や、差し出すのが利口だ」


「ちがいねえ」



 低い笑い声。



「この匂い袋は大したもんだ。あいつら、全然気づかなかった」


「あの呪い師も役に立ってくれた。腹ん中のあれには驚いたけどな」


「手駒の一人だったんだろうに、惜しげもなく潰すよな。さすが貴族……」



 きしむ車輪の音と振動。揺れ動く柩。



(誰か……! ここから出して)



 縄をゆるめようと必死で身をよじりながら、ユーラは思った。



(誰か……!)





*  *  *





 グロフは眼前で行われている貴族の戦いを、声もなく見つめた。蒼炎そうえんは炎を操り、闌火らんかは氷を操った。雪綺せつきは重力を、そして雪雅せつがは風の刃を氷玉ひぎょくに向けた。四人はほぼ同時に氷玉に力を放ったが、月牙伯爵はそれを目線一つで封じた。



「相手をする気にもなれぬ」



 氷玉は物憂ものうげに言った。彼の眼前に四人の術が固まるようにして止まっていた。炎と、氷と、風の刃。床が一直線にえぐれているのは、雪綺の重力による攻撃がそこで止まった為だ。力はその場で消滅した。



「蒼炎、闌火、雪綺。わたしより己が優れていると証明したいのであれば、全力を尽くせ。雪雅。そのほうも遠慮はするでない」



 名を呼び捨てられた三人の貴族は怒気を露にしたが、雪雅だけは楽しげな顔をした。



「この程度では失礼でしたね。では」



 そう言うと、彼の周囲を風が取り巻いた。風は白刃となり、音を立てて渦巻き始める。白い剣を手にした彼は、渦巻くかまいたちをまといつつ、氷玉に向かって走った。


 激しい音と共に、爆風が生じた。氷玉を突き斬ろうとした雪雅だったが、逆に反撃されて床に転がった。重く硬い力の塊が、自分めがけて放たれたのだ。とっさに刃を盾に変えて防いだものの、衝撃は少なくなかった。氷玉は指一本動かしてはいない。全力で向かおうとした自分を、意思の力一つで退けたのだ。



「次はわたくしが」



 闌火が言うと、全身に凍気をまとった。瞬時に床が凍りつき、青白く輝く氷のつぶてと雪が周囲を舞う。華奢きゃしゃな少女の姿から『淡雪の』と呼ばれる彼女だが、氷雪を従えた今は、氷の姫と呼ぶに相応しく見えた。片手を上げた彼女は青白い刃を宙に生じさせると、それを氷玉に投げつけた。


 一瞬、氷玉の周辺が凍りついたように見えた。しかしそれは彼の寸前で凍気がさえぎられた為に、氷の壁が出来上がった事による錯覚だった。氷玉はふっと息を吐いた。氷の壁は砕け、数百、数千の炎の刃となって闌火に跳ね返った。予期していた闌火だったが、やはり彼女も防ぎ切れなかった。背後の壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。



「『名無し』の小童こわっぱが、このわたくしに膝をつかせるとは」



 もうもうと上がる水蒸気の中、闌火は微笑んだ。よけきれなかった炎の刃が、彼女の頬や手足を切り裂いていた。ひどく楽しげだ。


 雪綺と蒼炎が同時に仕かける。蒼炎の周囲に火柱が上がり、雪綺の周囲に黒い球体がいくつも浮いた。二人はそれらの力を氷玉に向かって放ち、彼に向かって駆け出した。火柱はり集まって竜となり、氷玉を襲った。


 黒い球体の触れた壁や床がべこりとへこむ。それらは月牙伯爵を押しつぶし、燃やし尽くそうとした。


 しかし力は彼に触れる事もできず、攻撃しようとした二人も同様だった。目に見えぬ壁に弾かれた火の竜が爆散し、襲いかかろうとした球体が火花を上げてはじけ飛ぶ。氷玉の首を狙った二人は、かまいたちと雷撃をまともに受けた。吹き飛ばされ、もんどりうって倒れる。



「まるで歯がたたぬ……」



 雪綺がつぶやいた。その顔は喜びに輝いていた。命をかけた戦いが楽しくてたまらないのだ。対して蒼炎の顔は怒りに歪んでいた。



「僭称者が……このわたしに対して!」



 氷玉は腕を動かしさえしていない。何かないのか、と蒼炎は思った。この腹立たしい甥の力を削ぐ、決定的な何か。


 闌火と雪綺が三たび仕かける。ぎらつく氷で全身をよろった闌火と、腕全体を重力の渦で籠手のように覆った雪綺は、体術でもって氷玉に迫ろうとした。肉薄する二人の前に、火柱が上がる。それは氷玉を守る壁となり、二人を阻んだ。闌火の腕が折れ、彼女は吹き飛ばされた。雪綺はしかし、炎の壁に逆らって拳を突き入れた。だがそこまでだった。彼もまた、床に叩きつけられる。


 炎が消えた。氷玉は端然たんぜんと立っていた。その頬に、わずかな赤みがある。雪綺の拳が打ち込まれた際、拳圧がかすったのだ。月牙伯爵の口許に笑みが浮かんだ。頬の傷は見る間に修復されてゆく。彼は手を上げると、傷をつけられた辺りに触れた。



「よくぞ傷をつけた。したがここまでであろう、雪綺。闌火も」



 倒れ伏す闌火の腕が塵と化す。雪綺の腕もまた。淡雪の姫は顔を上げ、微笑した。



「このように心はずむ戦ができるとは」


「まこと楽しい」



 雪綺も笑った。二人は立ち上がると、氷玉に向かって走り出した。それぞれの魔力を最大限に身にまとって。


 氷玉は目を細めると、片手を上げた。白熱する光が彼の手から生まれ、それはまっすぐ二人に向かった。二人は笑った。声を上げて笑いながらその光に突っ込み、体を塵に変えながらなおも突き進み、そして氷玉の手前まで来て消え去った。





 ぼろ布と化した衣服が床に落ちる。グロフは息を詰めてそれらを見ていた。貴族の戦は常軌を逸しているものだが、二人の行動は狂っているとしか思えなかった。明らかに実力が違うとわかる相手に、無防備に突っ込んでいった。後の者に攻撃を託すわけでもなく。あの行動には一体、何の意味があったのだ。


 気がつくと、伯爵がこちらを見ていた。自分でも気づかない内に、疑問を口にしていたらしい。彼は頬に笑みを浮かべた。酷薄こくはくなようにも、慈愛じあいの表情のようにも見えた。



「あれらは何百年もの間、己を滅ぼす者を求めていたのだ」


 氷玉は、視線を蒼炎に向けた。



「生まれ落ちたその時より、己が滅びを願う種族。それがわれらだ。このくらい熱情。われらをわれらたらしめるものは、この熱情のみ。これを歪みと言わずして何と言う」


「雪華一族と彩一族はこれで完全に滅びた」



 蒼炎は目をぎらつかせて言った。氷玉の言葉は聞いてもいないようだった。



「これほどの力を『名無し』が持つはずもない。どこで手に入れた」


「どこで、とは。おかしな事を言う。われらはどのようにして力を手に入れる。どのようにして力を自覚し、振るう事を覚える。われらは生まれ落ちたその時より闇魔族なのだ、蒼炎。その血の中に、全て記憶として刻まれている。全てな」


「だからこそ、古き一族の血は貴重なのだ。そのほうは今、その内の二つの歴史を終わらせたのだぞ。記憶は血によって継承されるが、その血が途絶えれば……、」


「途絶えた所で何だと言うのだ。われらの全ては一人の闇魔族より始まったのではないか。あまたあるどの闇魔族も、その一人の不出来な複製に過ぎぬ。われらは始祖の記憶を封印し、その上に築いたものを『己』と呼んでいるのだ。逆を言えば」



 氷玉は叔父を見据えた。



「己を失うほどに血の記憶をび起こせば、力は自ずから手に入る」



 蒼炎は目を見開いた。



「そなた……、まさか。それはわれらの禁忌きんきだぞ。始祖の力を手に入れるなど!」


「禁忌ではない」



 氷玉は口許を歪めた。



「記憶を掘り起こす勇気を持つ者がいなかっただけだ。知ってしまえば己が崩れる。その恐怖からこの記憶は封印された。ゆえに」



 氷玉は片手を上げた。その手のひらに力が集まる。雷撃と重力の塊が、縒り集められ、大きさを増してゆく。



「記憶を得たわたしの滅びへの渇望は、そのほうらの比ではない。そうしてそのほうが、わたしに勝てぬのもまた事実なのだ、蒼炎」



 蒼炎の顔に恐怖の表情が瞬時、よぎった。



「狂っている」


「狂気に侵されておらぬ闇魔族が、この世にいると思うのか」


「兄上が『名無し』に倒されたのは、そのせいか。禁忌のわざに手を出すとは、誇りを知らぬ忌み子が!」


「そのほうに当主の資格はないな」



 氷玉は淡々とした口調で言った。



「大陸で〈闇王〉と呼ばれる者が何者か。何ゆえ〈王〉の称号を得ているのか。記憶を持つ者であれば、誰であれ知っている。蒼牙は知っていた。ゆえに当主たりえた。そうしてわたしに討たれる事を選んだ」


「なに……」


「〈闇王〉とは、始祖の記憶を保つ者。己が崩れる危険を冒しても記憶を求め、力を得た者への尊称だ。己のそれよりわたしの記憶の方が鮮明であると知った時、あの男は自ら討たれる事を望んだのだ」



 蒼炎は愕然とした顔になった。



「兄上がそのような真似をするわけが……誰よりも強く、美しかった兄上が!」


「綺羅月の君、防御を!」



 雪雅が叫んだ。蒼炎ははっとなり、己の周囲に炎の壁を立てた。氷玉が力の塊を投げつけ、炎の壁が爆散する。蒼炎は吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。衣服がちぎれ、はじけ飛んだ装身具が床に散らばる。


 側に雪雅が倒れていた。蒼炎をかばったらしい。彼はひどいありさまだった。体の半分が焼けただれ、腕や足は炭化している。蒼炎はしかし、さしたる感慨も持たずに立ち上がった。己をかばった配下を無視し、氷玉の前に進み出る。



「そのほうの暴言、許しがたい」



 氷玉は無言で叔父を見ている。蒼炎は続けた。



「卑怯愚劣な手段で力を得たそのほうに、わが兄を倒す資格などない。あるわけがない!」


「己が手で倒したかったか、蒼炎?」



 月牙伯爵は言った。



「最愛の者に滅ぼされる。あるいはその手にかけて滅ぼす。それが闇魔族の宿命。そのほうにとっては兄が、その対象であったのか。あの男はそのほうの事など、歯牙しがにもかけていなかったと言うに」


「黙れ」


「蒼牙が生涯かけて執着したのは、己が父。あの男は蒼禍そうかに執着した。他の誰にも渡したくはないほどに。ゆえに滅ぼした。その後は、己を倒せる者を育てる事に執心した。あの男は笑っていたぞ、わたしに倒されると悟った時」


「黙れ」


「そのほうは蒼牙を倒したかったのか。それとも倒されたかったのか。どちらでも良いが。どちらでも同じ事ゆえ」


「黙れ、『名無し』が! そのほうの言葉など、聞くだけで耳のけがれ。悪辣あくらつな策略でわたしをほうむろうとは、誇りを知らぬ行い。これこそが、血筋の正しくない事の証」


「悪辣な策略、とな」



 苦笑めいたものを氷玉は頬に浮かべた。



「これを策略と呼ぶか。まこと愚かしい男よ、蒼炎」


「人族ごときに膝を折るうぬが何を言う!」



 吐き捨てるように言った蒼炎だったが、そこでふと、眉を上げた。輝く光が不意に現れたのだ。手のひらほどの大きさの光はくるくると回った後に、蒼炎の顔の側で止まった。



「おお、待ちかねたぞ。そのほうの策略もこれで終わりだ」



 勝ち誇った笑みを浮かべると蒼炎は光をつかみ、宙に放った。光は宙でくるくると回って鏡になり、ある光景を映し出した。人族の男たちが荷車を中心にして馬に乗り、走っている。荷車には、縄でくくりつけられた柩。



「見るが良い。これはそのほうも良く知る場所からの映像だ。レサンとかいう村のな」



 それまで泰然としていた氷玉の顔に、初めて焦りのようなものが浮かんだ。蒼炎はそれを見て小気味よさげに笑うと言った。



「そのほうの執心しておる小娘は、わが手に落ちた。この人族の者らは、同族を殺す事で生きる者たちだ。わたしが一言命じれば、この者たちは即座に娘の首を落とす。


 氷玉。月牙当主を僭称した者よ。娘の命が惜しくば、わが前にひざまずくが良い」



いまさらですが、読んで下さっている方々、ありがとうございます。今日読者数を確認した所、五百名の方が読んで下さっていました。

読んでくれてる人いたんだ…なんだか不思議な感じです。

ナゾなのは話によって、読者数に偏りが見られる事です。廃村の少女1、だけ、やたら読者数が突出しているのですが…なんで???





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