序章
ここでは読むの専門だったのですが、「書いてみようか?」で、載せてみました。楽しんでいただければ幸いです。
アリエンテス大陸。
別名を、永き夜の大陸と言う。
かつて世界は一度、滅びに瀕した。その折、それまで『人』と呼ばれていた存在は、幾つかに分かれた。すなわち、
人知を超える力である魔力を高め、それにより肉体をも変質させた〈魔族〉、
肉体はあくまで人の範疇にあるが、守護精霊の力を借り、『気』を練ることにより能力を発揮する〈武族〉、
魔獣や妖獣と融合することにより、驚異的な能力を持つようになった〈半獣族〉、
そしていずれの変化もおこさなかった者……〈人族〉である。
人を除くどの種族も、元が同じであるとは思えぬほどに変異した。
クレア=ヴィーダの海に浮かぶアリエンテス大陸は、魔の民により支配される世界である。
支配階級である彼らの頂点に立つのは、〈闇魔族〉、あるいは〈夜を歩む者〉と呼ばれる者たちだった。総じて長命で美しいが、陽光を嫌い、夜の闇の中で生きる者たちである。
彼らは大陸の各地を分割して領土とし、そこに住む者たちを支配した。その支配は時に気まぐれで、残酷だった。
武族は、この大陸に住む事を許されなかった。
彼らの寿命は人族並であったが、その能力は時として、魔族に匹敵した。己が優位を揺るがしかねないこの存在を、どの魔族も許しはしなかった。
彼らは追放され、あるいは狩られて殺されていった。そうして武族と呼ばれる存在はやがて、大陸の表舞台から姿を消した。
わずかに残った彼らの血を引く者もまた迫害され、各地に身をひそめ、あるいはさすらう道を選んだ。
こうして大陸には、明けぬ夜の時代が続く事となった。