第14話 ミステリー
真っ黒い煙を上げていく赤い炎が俺の前方に広がっている。
オークの弱点が火と氷であることは知っている。
この状態で、いくら『知性が低い馬鹿』と資料室にあったモンスター本にも書いてあったオークが、突進してくることはないと思う。
いや、思いたい。
油を撒いたからだろう。
ちろちろと燃える火ではなく、ちょろちょろ燃える火でもなく、音もパチパチといった快活な感じでなく、轟轟と音を立てて燃え盛る炎であった。
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逃げ出そうと、後ろを振り返ったが、そこには、勢いこそ弱いものの、何故か、同じ状況になっていた。
もしかすると、俺の囮が失敗することも想定して、ルラさんに火魔法を使わせたのではないだろうか?
タオルとミネラルウォーターを取り出し、タオルに水を含ませ口と鼻に当てる。
そして姿勢を低くして逃げる。
少しテンパっていたり視界が悪い状態で逃げたからだろう、人道にでるまでに時間がかかった。
この異世界では、RPGゲームのようにレベルという概念がないことは把握している。
筋力をあげたいなら筋トレをしないといけない。
モンスターを討伐したからと言って、経験値がもらえるわけではない。
そのため、ガソリンと火による攻撃でオークたちが亡くなったかどうかは定かではない。
確認に行く勇気もない。
そして、俺はヴィレワン村に戻って一泊してから、マウンテンバイクに乗ってシルフル村までマウンテンバイクで進み、シレナさんと合流して、荷馬車でファスの街に向かった。
ラクト達は、ヴィレワン村には寄っていなかった。
帰りのことをシレナさんは考えていなかったらしく喜ばれた。
シルフル村では、シレナさんの実家で、昼食をごちそうになりお礼に胡椒をプレゼントした。
調味料は高級品でとても喜ばれた。
シレナさんのお母さんは、肝っ玉母さんと言った感じで、『いつでも、来な』と出発する際にバシバシと背中を叩かれた。
表裏のなさそうな人だった。
荷馬車に乗ってからは、ラクト等と顔を合わせないようにする為、荷馬車内でほとんどを過ごした。
☆☆☆☆☆
「クエスト失敗を受領しました。それで、1人欠けているようですが、その方はどこにいるのですか?出かけているようでしたら、クエスト失敗に対する違約金をその方の分も肩代わりしていただかなければならないのですが??」
受付員の女性が説明する。
「はいっ。彼は、俺たちを守るために自ら囮になって……」
ラクトが、冒険者ギルドの受け付けの女性に告げる。
死んでいる者については違約金が免除される。
だから、そんなウソをつくのだろう。
「分かりました。それは、災難でしたね。では、3日後に、死亡届を受理させていただきます」
坦々と事務作業を行う受付の女性。
冒険者は、人にとっては命を簡単に落としてしまう職種と言える。
昨日まで話していた人が、今日にはクエスト先で亡くなっており会えなくなることは当たり前のことなのだろう。
「なんで、三日後なのよ?疑ってるの??」
本来、パーティメンバーがそう証言すればすぐに受理される。
「いえ、サクさまに予め言われておりましたので。俺の死亡届が出された場合3日待ってほしいと」
「どういうこと?」
ラクト等のパーティメンバーは皆?顔だ。
「それで、念のためにもう一度聞きますが、サク様は自ら囮になったんですね?」
「はい!」
レリィさんがそう答える。
他の者は、本当のことを言おうと思っているのか無言だ。
「他の皆さん、返事がありませんがどうなのですか?」
「あの人は自ら囮になりました」
「そうです」
「はい」
4人全員が俺が自ら囮になったと嘘をついた。
救いようのない者たちだ。
「なるほど。俺が、自ら囮になったんですね?」
この異世界の魔法使いが着るようなローブに深いフードを被って、事の成り行きを見ていた俺は、受付窓口に近づきながら、フードをとる。
「えっ?なんで?」
驚き顔のラクト
「なんで、あんたが生き残ってるのよ?ラクトが蹴飛ばして囮にしたはずじゃ」
しっかりと、嘘をついていたことを暴露してくれるレリィさん。
「良かったです。生きててくれて」
ソフィーさんは嬉しそうに言ってくれるが、その姿も演技に感じる。
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