生贄な魔女の召使い
魔女
それはこの村に伝わる何百年も前からの伝説だ。そんな古臭い伝説を信じる村に生まれてしまった僕はなんて不運。なんたって、十年に一度に魔女に子供の生贄を供物として捧げるというしきたりがあるんだ。それが今年で、そして今回の生贄が…僕だ。
僕は生まれた時から親や親戚、そして知らない人にまで良くして育ててもらった。だから人生はすごい楽しかった。なのに、なぜだ。
今日、僕は供物として捧げられる。ボロボロの布切れを着せられ、今まで居た家からは追い出され、深い森の中を裸足で歩き、天に裏切られたかのような1日を過ごし、僕は死にに行く。
村の人達は、行きたくないと泣き叫んだ僕を、叩いたり、殴ったり、とにかく生贄になる前に死にそうになった。
ここまで来るともうどうでもよくなってくる。「早く行っちまえ!」と言われた僕は一目散にそこから逃げるように魔女の元へと向かった。
「なんだい、生贄かい?あいつら、まだそんなこと信じてるんだね。」
魔女だ。僕が逃げた先の深い森の中で、僕は魔女に会った。本当にいたんだ。殺される。喰われる。
「酷い顔だね。村のヤツらに叩き出されたか。」
僕は殺されることしか考えていなくて、魔女が何を言っているのか全く聞いていなかった。
「とにかく、着いてきな。」
「…殺される殺される殺される」
魔女は1つ、大きなため息をつき叫んだ。
「あぁー!もう面倒臭い子だね!」
そう言って僕は首根っこを捕まれとうとう連れて行かれた。
少し経つと魔女の家らしき建物が見えてきた。ということは、ついに僕は死ぬのだな…
「さ、ここに座りな。」
魔女から発された言葉に僕はハッとした。
「僕を喰わないのか?」
「あんた、本気で喰われるとでも思ってたのかい?」
その言葉に僕はつい全身の力を緩めてしまう。
しかし、残る1つの可能性を疑った。
「まさか、騙してるのか?」
きっとそうだ、こんな悪そうな顔をしてる奴が…あれ?あまり意識して見ていなかったが、魔女って言うには似合わない、若い綺麗な顔なのに今気が付いた。
「子どもを騙して何になるってんだい?」
僕は魔女の顔に少々見蕩れていたが、我に返り一層疑いを深める。
「ホントかよ。」
「物分りの悪いガキだね。今までの生贄もそうしてきたんだ。今更どうかしようとか思えないよ。」
「え…」
十年前の生贄も、二十年前のも、みんな生かしてきたのか?伝説では、生贄を使って定期的に不老不死の儀式を行うとか聞いたけどな…
「じゃあなんでそんなに若いんだよ。」
「そりゃ最近生まれたからさ。」
「いつだよ。」
「ざっと、100年かな」
「どこがだ!」
どうやら、魔女というのは不老不死の儀式を行わずとも5~600年は生きられるらしい。そう考えると確かに若い…のか?
「とにかくお前……ん?傷だらけだが、よく見ると綺麗な顔してるじゃないか。きっと、綺麗な美青年になるぞ。気に入った。あたしの世話係になれ。」
「は!?誰がお前なんかの!」
「帰るところはあるのかい?」
そんなことを言われると、もう何も言えない。自分の生きる場所を探すのも大変そうだし、仕方ない。
「わかったよ。でも少しでも怪しい動きをしたら絶対殺してやるからな!」
「おうおう盛んなこった。その腐った根性叩き直して、立派なあたしのお付きにしてやろうじゃないの。」
こうして生贄になるはずだった僕は、魔女の召使いとして新しい人生を歩むことになった。
それからは大変だった。
身の回りの事は全て村の人達がやってくれていたから、何をすりゃいいのか全く分からないし、何かやれば失敗して魔女に怒られた。
ただ、何か上手くいくと魔女はしきりに褒めてくれた。今まで、褒められたことなんて無かったから、すごく嬉しくかった。
でもそれが魔女にバレるのは嫌だったので頑張って顔が緩むのを隠していた。
しかし、それに乗じて子供扱いするのだけはやめてほしいものだ。褒めてもらうたびに頭を撫でてくる。嬉しくなんてなかった。多分、絶対。
そして、大変なのはそれだけではなかった。
「忌まわしき魔女め!早くこの世からいなくなれ!」
「あらあら、久々に他の村の奴が来たね。」
魔女信仰なんてしてるのは多分僕の居た村だけだ。他の村にとっては魔女なんて忌まわしいだけの存在。
そりゃ消えてほしいだろうな。
「さあガキ、力の見せどころだよ。」
「えっ、僕がやるのかよ!」
「何のため今まで特訓してきたと思ってんだい。」
「くっそ!覚えてろ!」
こんな感じの事は年に5回はある。
最初は当然ボロボロにやられて、殺されかけたりした。その度に魔女に助けられて悔しかった。
でも、一年も経てば殺されかけることも無くなり、その二年後には完全に撃退できるようになった。
「どうだ!やっとあんたを守れるようになったぞ?」
「ほう?やるじゃない。でも、まだ強くなれるわね。」
「はぁ?まだあのクソみたいな特訓とかするのかよ!もういいだろ!」
「こりゃあまだ性格と言葉遣いに難ありだね。さあガキ、まだまだ先は長いよ。」
そうしてあっという間に時は過ぎて行き、僕が拾われてから10年が経った。性格と言葉遣いは完全に矯正され、すっかり魔女の召使いとしての役目を果たせるようになっていた。
「はぁ…全く、いったいどこで育て方を間違えたのか。」
「そういう事言わないでくださいよ。あなたに鍛えられた結果のこの体です。」
魔女は当初予想していた美青年とはかけ離れた、ゴリゴリの俺を見て不満を漏らす。
しかし、本当にこれは魔女自身のせいと言っても過言ではない。
「はぁ…まあ、身なりもしっかりしてるし、顔立ちも整ってはいる。仕方ないか…」
「全く、そんなこと言ってる暇があったら早く支度して下さい。久々の集会なんですから。」
「わかってるわよ!」
そう、今日は数年に1度の魔女集会だ。魔女同士集まって情報交換などをし合う場であり、強い使い魔や召使いなどを連れて自分の力を見せる場でもある。
「さあ、準備は出来ましたね?それでは行きますよ。私の愛しき魔女よ。」
それに応えるように魔女は微笑みながら言う。
「全く、どこで育て方を間違えたんだか…」
どうも刺猟です。お久しぶりです。
最近Twitterで流行りのタグ 魔女集会で会いましょう を元にした話を書いてみました。
自分は生憎絵が描けませんので書きました。
ホントに全く、どこで育て方を間違えたのか自分でも分かりません!




