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ニートな俺の次の職業  作者: IKA
第一章 ニートの旅は前途多難
3/5

第二話 職業はハローワークで探そう

どうも、IKAです。


勢い任せで第二話まできました。


今回からやっと二人に職業が見つかります。


ニートの兄と学生の妹に似合う職業は一体!?

 始まりの村/ミズガルズは俺達ヒューマンの領地の一つで、ヒューマンが旅の最初に訪れる場所とされている。


 ここではRPGで言うところの『初期装備』が全職業分取り揃えられており、ヒューマンなら誰でも一度は訪れるそうだ。


 基本的に料金が格安と言うのもポイントで、宿の料金も対してかからないので多くの利用者がいる。


 ただ、このミズガルズにはヒューマン以外の種族も多く立ち入ることがある。


 もちろん悪魔族や龍族と言った戦闘を好むタイプの種族は入れないが、無駄な争いを好まない種族やヒューマンと交流の深い間柄の種族は多く訪れる。


 そんなこの村は、村と言うには人口も多く、店や家の数が多い。


 他種族が訪れることもあり、他種族が好む食材や道具が販売されている場所もあり、村と言うよりは一つの町と言える。


 そんなこの村/ミズガルズにたどり着いた俺は、近くの木陰に置かれたベンチに燐虎を座らせ、そこで待機させることにした。


 コイツは未だに泣いている。


 取り敢えずベンチで待機させ、俺は一旦この村の一回りして店の種類を確認する。


「お前はここで待ってろ。

 んじゃ行ってくる」


 正直、俺も休憩したくてしょうがない。


 ティアラの家で休んだとは言え、それは数時間前の話だ。


 今日一日でありえないほどの体力を使い、主に下半身が筋肉痛だ。


 だから村に到着したら俺がベンチでスヤァして、燐虎に調べさせる予定だった。


 とは言え、今の燐虎が調査なんてできるわけない。


 俺は自分の体にムチを打って歩き出す。


 ‥‥‥それにしても。


「やはり二次元の女はみんなレベル高ぇな‥‥‥」


 この世界に来て俺はようやくこの世界の人間‥‥‥ヒューマンに遭遇していた。


 どの女もスタイルがいいことに俺は驚きを隠せずにいた。


 服は露出が派手な人、少なめの人とバラバラ。


 髪や眼の色もバラバラだ。


 そして胸も‥‥‥そう、胸もたまらん。


 大きいも小さいもあるけど、スタイルに合っている分どれもこれも良い。


 やはりこの世界、――――――素晴らしい。


「さて、望遠鏡が売ってる店はどこかな‥‥‥」


 お金を入手する手段は職業をつければ見つかるだろう。


 取り敢えず売っている場所と種類を確認しておきたいな。


「――――――望遠鏡ならそこを曲がった角にありますよ」


「ありがとう」


「いえいえ、どういたしまして」


「いや、ほんとに助かったよ‥‥‥って、うおっ!?」


 返事をしてくれた本人の正体に気づいた俺は今更ながらに驚いて飛び上がった。


「お、驚かせてすみません」 

 

 そこにいたのは先ほど、俺達を助けてくれた上に異性である俺を自室に招き入れてくれた一人のエルフの娘/ティアラ・アルヴ・エルフ。


 ‥‥‥フルネーム言えたんだ俺。


「悪い、考え事をしてた」


「そうでしたか。

 でしたらタイミングを誤りましたね」


 ‥‥‥白々しい。


 それともわざとかな?


 だったら責めてみるか。


「タイミングも何も、さっきからずっと俺達を尾行してただろ?」


「えっ!?

 ‥‥‥んな、なんのことでしょうか?」


 ん~、なんて分かりやすい動揺。


 だがそこがいいと言うか、中々そそるな。


 ここはもっと責めてみるとするか。


「いくら俺と燐虎が警戒してたとはいえ、素人がどんなにコソコソしたってたかが知れてる。

 エルフの村を出てから山を降りるのに何時間もかかってるのに、俺達は一度もドラゴンに遭遇しないでここにこれた」


 ドラゴンの嗅覚を使えば、気配や匂いを消さないで移動していた俺と燐虎を見つけるのは難しくはないはずだ。


 別にドラゴンの生態についての知識なんて一つもないが、一度見たときにドラゴンの眼や鼻が想像以上に大きかったのを覚えている。


 大きさに見合う嗅覚は兼ね備えているはずだ。


 そのドラゴンが俺達を見つけなかった‥‥‥いや、見つけられなかった。


 それが出来たのは、ドラゴンが潜む山の森奥に住むエルフ族のみ。


 更に俺達を助けてくれたとすれば俺達の関係者だ。


 そんなのは一人だけだ。


「ティアラが影ながら俺達を守ってくれたんだろ?」


 俺の推理を聞いたティアラは驚きからか目を見開き、そして負けを認めたかのように軽く頭を下げた。


「驚きました。

 まさか、ここまで勘の鋭いヒューマンがいるだなんて‥‥‥」


「頭を上げてくれ。

 別に怒ってないし、むしろ感謝してる」


 そう、俺と燐虎がここまで来れたのは紛れもなくティアラのおかげだ。


 出会いからここまで、見ず知らずの俺達に優しくしてくれるなんて‥‥‥ほんとに天使みたいだな、攻略したいな。


 なんで俺達を助けてくれるのか‥‥‥なんて、聞く勇気はない。


 その理由がもし、ティアラの両親と関係していたらと思うと、到底聞けない。


 知ってしまったから、察してしまったから、だから言葉を選ばないといけない‥‥‥そう思ってしまう。


 ‥‥‥こういう時、燐虎みたいに馬鹿だったらなって心の底から思う。


 俺は理由を聞くことなくティアラに別の話題を持ち出す。


「望遠鏡のことはさておいて、自分に合う職業を見つけたいんだけど、どこに行けば分かるか教えてもらっていいか?」


「あ、はい。

 それじゃついてきてもらいま‥‥‥と、言いたいところなんですが。

 妹さんの方は置いといていいんですか?」


「ああ、大丈夫大丈夫」


 そう、俺は妹のことなんて一切心配していない。


 心配してるんだったらアイツと一緒にベンチに座って休んでいたはずだ。


 ‥‥‥ま、そんなことをする必要はない。


 全くと言っていいほどない。


「むしろ、アイツを襲った奴らの方が心配だ」


「え?」


 苦笑いしていると、近くから複数の男性の悲鳴が響いてきた。


 その方向はちょうど燐虎がいるはずの方向で、そこを向くと三人の男性が回転しながら宙を舞っていた。


「何があったんでしょうか!?」


「あーあ、ご愁傷様‥‥‥南無」


 驚きの、心配そうなティアラとは対象的に俺は両手を添えて黙祷した。


 漫画でよく見るようなぶっ飛ばされ方をした連中は、間違いなく俺の妹/燐虎を襲ったんだろう。


 いや、襲ったというかナンパしたのだろうか?


 原因はどうであれ、狙う相手が悪かったな。


「‥‥‥さて、あの気持ちいいぶっ飛ばしっぷりじゃ、立ち直ったようだな。

 ティアラ、一旦燐虎と合流するけど、一緒に来るか?」


 俺は念の為に確認を取ることにした。

 

 俺は聞かなかったが、燐虎は恐らくここに来た理由を聞くだろう。


 その時、両親の話題が僅かでも出てしまえば空気は再び悪くなり、また燐虎が泣いてしまう。


 だから念の為にティアラに確認をとった。


「はい、お供します」


「よし、行くか」


 俺とティアラは少し駆け足で燐虎のところに向かった。


 彼女は心なしか、小さく微笑んでいるように見えた気がした――――――。




*****




「あーあ」


「す、凄いですね」


 到着した俺はため息をつき、ティアラは驚いていた。


 先ほど漫画のように綺麗に宙を舞っていた男性三人組は積み重なって倒れていた。


 その隣で燐虎が柔軟体操をし、周囲の人々がざわつきながら彼女を見ていた。


 俺は燐虎のもとに寄ると燐虎は怯えた表情で俺を見つめる。


 恐らく勝手に人をボコボコにしたことを責められると思っているのだろう。


 ‥‥‥まぁ、それで怒りたい気持ちもなくはないが、今責めたらまた泣き出しそうだ。


 こんな人‥‥‥多種族が見ている状態で女に泣かれたらどんな目で見られることか。


 せっかく俺好みの女をたくさん見つけて脳内にリストアップしたというのに、ここで好感度が下がるようなことが起こるのは避けたい。


「取り敢えずお前が無事でよかった。

 それと、立ち直ったようで安心した」


「‥‥‥う、うん」


 燐虎は拍子抜けと言った表情で俺を見つめると、自然と頬が緩んでいく。


 どうやら安心したようだ。


 全く、世話のかかる妹だ。


 お前のせいでティアラとのデートが台無しじゃないか。


「あ、ティアラちゃん!?」


 今頃になってティアラの存在に気づいた燐虎は満開の笑をこぼしながらティアラに飛びついた。


 というか助走もなしに五メートル以上も離れたティアラに飛びつけるなんて、ほんとどんな身体能力をしてるんだコイツ‥‥‥。


 ほれ見ろ、ティアラが驚きの連続のせいで目がクルクルしてるぞ。


 燐虎、恐ろしい子。


「でもでも!

 なんでティアラちゃんがこんなところに!?」


「えっ‥‥‥」


「あー‥‥‥」


 予想通り、燐虎はティアラに事情を聞いた。


 別に不思議なことじゃないし、むしろ当然の質問だ。


 ただ事情を知った俺からすればちょっとヤバイ‥‥‥そう思ってしまった。


 ティアラもまた、俺の予想通り口を噤んでいた。


「燐虎、ティアラは俺達が装備なしで森をちゃんと抜けられたか心配で見に来てくれたんだとさ」


「そうなの!?」


「え‥‥‥あ、は、はい」


「うわー!!

 本っ当にありがとう!!」


「い、いえ‥‥‥それほど、でも‥‥‥」


「ふぅ‥‥‥」


 どうにか騙せたようだ。


 ティアラは動揺して言葉がしどろもどろだったが、なんとか俺に合わせてくれた。


 俺は安堵の息を漏らした後、二人を連れて職業を見つけるために職業検索屋/ハローワークに向かった。


 ‥‥‥ハローワークってお前、悪意を感じるぞ。





*****



 歩き出すこと数分、俺達はティアラについていってようやく職業検索屋に到着した。


「へぇ、ここが職業検索屋か」


「はい。

 ここではヒューマン個人に合う職業を無料で診断してくれる場所です。

 結果は複数出る場合もありますが、全ては確率で出てきますので複数出た場合でも一番合うものがどれかわかりますよ」


「ほほぅ‥‥‥」


 白いコンクリートで作られた二階建ての建物。


 ガラスで作られた自動ドアを潜り中に入ると、そこには老若男女問わない人間‥‥‥ヒューマンがいた。


 役所の受付のように、横一列になって一対一で話しをしている様子が見れる。


 ‥‥‥ほんと、俺達のいた世界のハローワークみたいだな。


「さて、俺達もいくか」


「うん!」


 ティアラを出入り口のそばに置かれたベンチに待機させ、俺達は診断を受けに行った。


 今日は人数が少なく、俺達は待つこともなく診断を始めることができた。


 俺の診断を担当してくれるのは黒縁眼鏡をかけ、髪をしっかりと結んだいわゆるインテリ系の女性。


 如何にも真面目って言う雰囲気を出す人はあまり好きじゃないのだが、二次元になると別だ。


 こう言う女性こそ、恥ずかしい表情になった時は可愛いもので、ちょっと辱めを合わせてやりたいと言う邪な心が出てくるのは至極当然のことである。


「診断を始めますが、よろしいですか?」


「はい、終わったらご一緒に食事でもどうですか――――――アガァッ!!?」


 左方向からこちらに向かって一直線に放たれた片靴が俺の顔面に直撃した。


 しかもありえない速度で放たれたのか、俺は直撃を受けて更に数メートルほど飛ばされた。


 こんなことをしてくるのは、どんな世界でもただ一人。


「お兄ちゃ~んごめ~ん!

 手が転んだ~!」


「滑ったの間違いだろ!?

 てかワザとやっただろ!!」


 全くコイツは‥‥‥!


 俺の診断をしてくれるお姉さんが苦笑いしてこっち見てるじゃないか!


 せっかく夜までご一緒しようと思っていたのにコイツめ‥‥‥。


「お兄ちゃ~ん!

 また手が転びそうなんだけど~!?」


「‥‥‥」


 くそぅ!





*****




 何だかんだありながらも俺の職業適正診断が始まった。


 左頭部が放たれた石によってコブができているが、今更気にしない。


 お姉さんは咳払いをし、診断を進める。


「そ、それでは適正診断を始めます。

 診断方法はこの特殊な素材で作られたプリントに書かれている質問に、このペンで回答していただくだけです」


「はぁ‥‥‥」


 特殊な素材と言っても、俺にはその特殊さを感じることはできない。


 材質が特別違う感じはないし、ペンもどこにでも売っているボールペンにしか見えない。


 俺は疑問を抱きながらも質問に対しての回答を埋めていく。


 質問内容は主にその人の性格を調べるようなものだった。


 シンプルなもので言えば、『ある状況下に置いてあなたは困っている人を助けるか助けないか』といった質問を丸バツ問題で出されている。


 その問題数は十個あり、俺が回答している間はお姉さんが無言で俺が回答しているプリントを見つめていた。

 

 回答を始めてから数十分、俺はなんとかして埋めることができた。


「これでいいですか?」


「ええ、診断はこれで終了です。

 少々お待ちください」


 そう言うと彼女はプリントを俺から受け取り、自分の方に向けて置くと、両手をプリントに添えて目を閉じた。


 するとプリントは小さく発光した。


 白く淡い光を出していると、プリントに書かれていた文字が中心に集まって黒い丸となる。


 その黒い丸は再びプリント全域に分散し、新たな文字を作り出した。


 文字が完成すると光が消え、再び俺の手元に置いた。


「ここに書かれていることが、あなた向きの職業だと結果が出ました」


「ありがとうございます」


 俺はプリントを受け取ると席を立ち、ベンチで待機しているティアラのもとに戻っていった。


 そこにはすでに診断を終えた燐虎がティアラと二人で仲良く会話をしていた。


 どうやら俺が回答している間、親交をより深めたのだろう。


「おかえりお兄ちゃん」


「診断、どうでしたか?」


「ああ‥‥‥ほぅ」


 俺は二人とともに結果を見る。


 そこに書かれていたのは一言。


魔法使いマジシャン


 どうやら魔法使いが俺向きの職業らしい。


 俺の結果にティアラは少し驚いた様子で口を開いた。


魔法使いマジシャンは結構レアな職業で、滅多に出ないんです。

 私も実際に見るのは初めてなので驚きました」


「へぇ~、それはスゴイな。

 燐虎は‥‥‥聞くまでもないか」


「なんでよ!?」


「どうせ格闘家(インファイター)とかそんなもんだろ~」


「うっ‥‥‥そ、その通りだけどぉ」


 ほんとコイツは期待を裏切らないな。


 そこが面白いというものだが、ここまで期待通りだと笑いしか出ないな。


「もぅ! 笑わないでよぉ!」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、頬を膨らませている姿は可愛い。


 ほんとに攻略したい。


 ‥‥‥実の妹でもこう思える自分がちょっと怖い。


「さて、お二人の職業が決まったところで装備を揃えに行きましょう」


「おう‥‥‥と、言いたいところだが、生憎俺達は金がびた一文ないからな。

 今から金稼ぎにいかないと」


 そう、俺達は金がない。


 この世界の通過は俺達の世界のものとは違う。


 まぁ流石に金を稼ぐ方法ならたくさんあるだろう。


 資金調達の手段、何があるかな‥‥‥。


「あぁ、それでしたら」


「え?」


 何かを思いついたようにティアラは微笑み、俺と燐虎を連れてハローワークを後にした。





*****




「お二人共、どうぞ」


「い、いやでも」


「悪いよ!」


 俺達三人が訪れたのは武器屋だ。


 何が何だかさっぱり分からない俺と燐虎を他所にティアラはレジにいた店員に注文をし、一本の杖と両手にはめるグローブを購入し、俺達に渡した。


 そう、ティアラは俺達に武器を奢ってくれたんだ。


 流石に罪悪感で今すぐにでも返品したくなる。


 それは燐虎も同じで必死に戻そうとするが、ティアラは笑みを崩さずに首を横に振る。


「これはお二人の旅の始まりを祝った私からのプレゼントです。

 それに値段もこの店では中くらいのものなんで、対して困らないですよ」


「いや、でもさ‥‥‥っ」


 俺はここで口を噤む。


 どうしてこんなことをしてくれるのか?


 そう聞いて、ティアラが両親のことを出したら空気が悪くなる‥‥‥そんな気がするんだ。


「‥‥‥ありがとう。

 このお礼は、ちゃんとするから」


「ええ、期待しておきます」


 俺は自分を強引に納得させ、ティアラに感謝をする。


 燐虎も俺に釣られて諦めてありがとうと言った‥‥‥まぁ、この借りは絶対に返すとしよう。


 そう誓って、俺はティアラからもらった杖を眺める。


 杖の大きさは俺の身長と同じくらいで杖の先には無色透明の宝玉がつけられていた。


 恐らくここから魔法が出るのだろう。


 重さはそれほどないけど、振り回すにはもう少し筋力をつけたほうがいいだろう。


 続いて燐虎のグローブを見ると、グローブはオレンジ色でボクサーグローブと同じ形をしていた。


 ほんとに似合うなコイツ。


「さて、武器が手に入ったことだし、金稼ぎに行きますか」


「うん!」


 燐虎が気合を込めて左腕を振り上げる。


 グローブつけた状態でそうするとなんかチャンピオンみたいだな。


「それではお二人とも、狩りに出かけますか?」


「狩りで金が稼げるのか?」


「はい。

 お二人自身の能力を見るためにも、一度実践を経験してみるのが良いかと思います。

 私も協力しますので、ご安心ください」


「ありがとうティアラちゃ~ん!!」


 もう何回、妹がティアラにダイブするのを見ただろうか?


 その度にティアラの胸が揺れるのは、流石の俺にも刺激が強すぎる。


 俺もあの山頂を目標に登山してみたいが‥‥‥っと、そんなことは後だ、いや、今だ、ワズ、ナウ、どっちだ俺?


「それでは行きましょう」


 ティアラの推薦に従い、俺達は村を出た――――――。





*****



 移動途中でティアラから聞いたのだが、この世界の生物には全て『価値』と言うステータスのようなものがある。


 その価値は『死』によって具現化され、金貨に変換される。


 つまりこの世界に置いての死で残るのは、その者に与えられた価値と同等の金貨だ。


 俺達のいた世界での表現で言えば、お金なんて持っているはずのない敵キャラを撃破した時にお金がドロップするのと同じことだ。


 ティアラが言うには、始まりの村を出てすぐ近くの草原では小獣族/ゴブリンや狼獣族/ヴァラヴォルフや鳥獣族/コカトリスが生息し、多くの種族を襲っている。


 それらを撃破すると金貨がドロップするのだという。


 冒険者はお金を集めるために狩りを行い、それを生活源に生きているそうだ。


 ちなみにゴブリン一体の撃破で銀貨二枚、ヴァラヴォルフは銀貨五枚、コカトリスは七枚の価値に相当するらしい。


 あ、通貨の説明を忘れていた。


 この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨の三種類で左から順番に価値が高いので金貨はもちろん高価だ。


 銅貨十枚で銀貨一枚分で、銀貨二十枚で金貨一枚に相当する。


 つまりゴブリン十体を同時に撃破することができれば金貨一枚がドロップする。


 ‥‥‥ただ、改めて考えると少し悩む。


 命=金と言うこの世界のあり方に、不信感のようなものを思えてならない。


 お金のために命を奪う、それは俺達ゲームプレイヤーがRPGに置いて敵を倒す理由となんら変わりない。


 俺や‥‥‥いや、俺のいた世界の多くの人がゲームでお金集めのためにモンスターを何百何千体と倒してきたはずだ。


 それが当然のはずなのに、やはり自分自身の手でそれを行おうとすると、僅かにも抵抗がある。


 だってこれじゃ、お金にされるためだけに生まれてきたようなものだと思わざるを得ないじゃないか。


 そのことをティアラに言った時、彼女は無表情でこう言った。


「確かに金にされるための命かもしれませんが、私達にはそんなことを気にしている余裕はありません。

 それともあなたは妹さんが殺されそうになった時、敵を殺すことを躊躇いますか?

 そういうことなんですよ。

 私達は『生きるため』に殺すことを躊躇ってはいけない」


 そう言われて、俺は何も言い返せなかった。


 ドラゴンに襲われた時に俺が金のことを知って、戦うことができたとして、果たして殺すことを躊躇ったか?


 答えは否だ。


 俺は躊躇わず、『生きるため』に殺しただろう。


 大義名分を振りかざしているのかもしれないし、殺すことを正当化しようとしているのかもしれない。


 それでもこの世界では、生きることが全てなんだ。


 争いが耐えないこの世界の全てだと、俺は改めて知らされた気がする。


 ‥‥‥もし元いた世界に戻った時、RPGをプレイすることができるかな俺?


 今まで買い溜めたRPGと言った冒険モノのゲームをネットオークションにだそうと心に誓った瞬間だった。


「ではお二人とも、狩りを始めますよ」


「おう!」


「うん!」


 何だかんだ考えていると、俺達は見晴らしの良い草原で足を止めた。


 空を見たことのない鳥が飛び回り、水辺ではこれまた見たことのない魚が飛び跳ねまくっている。


 地上はウサギが走り回っている。


 ‥‥‥ウサギはちゃんといるんだな。


「ここならゴブリンばかりが出現するので容易に倒せると思います。

 ヴァラヴォルフは俊敏ですし、コカトリスは飛行してるのでうまく攻撃できないと思うので、まずは手始めにゴブリンを狙いましょう」


「よし、んじゃ早速」


 ゲームのチュートリアルをしている気分の俺は人生初の魔法の使用に心弾ませながらゴブリンを探す。


 見晴らしがいいので探すのは難しくなく、俺達はすぐさまゴブリンの大群を発見した。


 大きさは俺の身体の半分程度と、ほんとに小さい。


 これで大人だというのだから驚きだ。


「それじゃお兄ちゃん、お先に!」


 そう言って飛び出したのは燐虎だった。


 常人離れした速度で駆け出していく姿は、アスリートというより猛獣の類だろう。


 足を伸ばすように駆け出す様はまさに虎だ。


 獲物に向かって真っ直ぐに走り、間合いに入ったところで力強く跳躍して殴りかかる。


「セイヤァッ!!」


 体重と落下の勢いを加えた右拳が放たれると、地上はまるで爆弾でも落ちたかのように爆発した。


 砂煙を巻き起こし、側にあった岩が見事に砕けてしまった。


「‥‥‥お前、ほんと怖ぇよ」


 もう燐虎は人間じゃない気がする。


 もちろん武器の性能がこうさせてくれているのだろうけど、それでも地面に大穴開けるほどの怪力とか化物かとツッコミたくなるのも自然なことだ。


 隣にいるティアラも流石に驚いたようで冷や汗をかいている。


「妹さんは優秀ですね」


「元々身体能力が高いからな。

 武器を持たせてしまえばアイツに接近戦で勝てる奴なんてほとんどいないだろうよ」


「嬉しそうですね」


「んなわけないだろ?

 あんな凶暴な妹の側に何年も一緒にいる俺の身にもなってみろ――――――グオッ!?」


 なんかデカイ岩が俺の顔面直撃したんだが?


 まぁ放った相手なんて燐虎以外いないけど。


「お兄ちゃん、今の私は手加減とかできないから口には気をつけてね?」


「うん、やる前に言ってくれ‥‥‥」


 お陰様で常人だったら全治二週間はかかるようなケガを顔面にした気がする。


 ほんと、こいつの被害に慣れていなかったら死んでたな。


 俺の身体も常人の身体ではない気がするな。


「さて、次は俺がやるかな。

 ティアラ、魔法ってどんな感じに出すんだ?」


「そうですね‥‥‥。

 ヒューマンは多種に渡る魔法を使うとされているので、出したいと思えばある程度の魔法は使えると思います。

 発動の方法はとにかくイメージすることです。

 魔法はイメージから始まりますので」


「イメージね‥‥‥よし」


 俺は取り敢えずティアラの指示のもと、魔法を発動させてみることにした。


 ティアラと二人分の距離をとり、杖を右手に持つ。


 目を閉じ、魔法をイメージする。


 魔法を使うゲームなんて数え切れないほどやってきたんだ。


 イメージするなんて造作もない。


 俺がイメージするのは、炎の球体。


 杖先から炎が現れ、放った炎は尾を引いて一直線に標的に直撃する。


「今だッ!!」


 二歩前に出て、右手に持った杖を鋭く振るう。


 すると杖の先に付けられた無色透明の宝玉が紅く光だし、光は瞬く間に炎になった。


 その瞬間、気合の入ったティアラのアドバイスが来る。


「そこから詠唱し、魔法名を発することで、魔法はこの世界に概念として存在します!」


 魔法‥‥‥ファンタジーの世界ではごく普通に存在するもの。


 しかし普通に存在するが、発動させるには普通‥‥‥常識は通用しない。


 なぜなら魔法は、何もないところから何かを生み出すからだ。


 それはこの世の法則や概念を否定することであり、否定から生まれるのが魔法となる。


 だからイメージから生み出すだけでは、魔法はこの世に存在を維持することができない。


 詠唱と魔法の名前を発するのはこの世に存在させること。


 わかりやすく言うなら、辞典に新たな単語を作るのと同じことだ。


 辞典に書かれていない単語は存在しない。


 しかし名称とその意味を記入すればそれは存在することになる。


 これが魔法を発動する原理。


 それを理解し、俺は詠唱と名称を唱える。


「――――――全てを焼き尽くせ、炎の弾丸ッ!

 ――――――<ファイアー・ストライク>ッ!!」


 炎の弾丸となったそれは、俺のイメージ通りに炎の尾を引きながらゴブリンの大群に向かって放たれる。


 着弾点は大群の中心をイメージしたが、それとは少しズレてしまった。


 爆発して半分を吹き飛ばすことができたが、残り半分を逃してしまった。


「まぁ最初はこんなもんかな」


 こうして俺と燐虎はティアラ指導員のもと、魔法と戦闘技術を磨く日々が始まった。


 ‥‥‥予想以上にハードになりそうだ、この旅。

てなわけで第二話でした。


今回は主人公である翔夜がティアラの事やモンスターの事で悩む描写がありましたね。


つい数日前、とあるユーザー様がゴブリン達のことについて考えていたのを思い出し、あの描写を入れました。


というか今回はあまり主人公が暴走しなかったのに驚きました(ぇ



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