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ニートな俺の次の職業  作者: IKA
第一章 ニートの旅は前途多難
1/5

プロローグ 脱・ニートの旅が始まったり始まらなかったり

どうも、IKAです。


色々な作品を投稿している中、遂に問題作を作ってしまいました(^_^;)


勢いと妄想と欲望のみで書いているのでお気に召さないところが多々あると思います。


その時は見ないことをオススメします。



 俺の名前は春雅かすが 翔夜しょうや

 

 こういう事を自分で言うのはおかしいのだろうが、俺はニートだ。


 部屋は7畳でベッド、ソファー、最新型PCとそれを置く机。


 黒のリクライニングチェアは俺の全身が完璧に収まり、俺の理想の座り心地を持った完璧な椅子だ。


 そして忘れてはならないであろう、二段に作られている冷蔵庫とその中に入れられている大量の炭酸飲料・ドクペと栄養調整食品・キャロリーメイト。


 通常はキャロリーメイトは常温保存可能なのだが、俺はひんやりと冷えた方が好みだ。


「さて、始めますか!」


 俺は冷蔵庫からドクペとキャロリーメイトを一つずつ取り出して飲食しながらPCに目を移す。


「おうおう、かなり値段が上がってるぅぅぅ!」


 俺が見ているのは大手オークションサイトの、俺が出品したとある商品の値段だ。


 当初は五百円で始めたオークションだが、残り時間一分を前にいてその値は二百倍となってその値段は十万円になっていた。


 出品した商品は鑑定してもらったら本物のアンティーク品だったらしいお皿なのだが、俺からしたらただの皿な上にキャロリーメイトを前菜・メインディッシュ・デザートとしている俺には不要のものだったので価値なんてどうでもいい。


 そんな皿が十万になってこちらに来るのであればウハウハだ。


「‥‥‥ん?

 な、な、な‥‥‥なぬぅぅうぅぅううう!?」


 値段は残り三十秒にして更に上昇し始めた。


 値段が更に倍になっていく。


 流石に恐ろしい現象だ。


 だが俺からすれば好都合。


「さぁ、あと十秒!」


 このワクワクが止まらないぜ!


 そんな胸の高鳴りを抑えられず、机を人差し指で連打を繰り返す。


 ――――――そしてその時がきた。


「なん、だとぅ!?」


 喜び‥‥‥を通り越して唖然とした。


 値段が、まさかの五十万になっていたのだ。


 取り敢えず契約を済ませ、来週以内に俺の口座に入金されるだろう。

 

 これで金銭はしばらく困らないだろう。


「よし‥‥‥それじゃ!」


 俺は声を上げて画面を閉じ、とあるフォルダを開く。


 フォルダを開いた先にあるのは、いわゆるエロゲーの類のもの、つまりエロゲだー。


 詳しい内容は言えないが、恋愛シュミレーションゲームの一種でハーレムルートも平気で存在する俺の好みにどストライクの作品だ。


「さてさて、今日はどの子を攻略してやろうかねぇ~!」


 マウスを動かす速度が上がる。


 会話をゆっくりと読みつつも、突如現れる二択の質問には高速で答えて話しを早く進める。


「ふっふっふ、ざ~んねんだったな!

 俺はすでに全キャラの攻略ルートに進む選択肢を熟知しているのさドヤァ~!」


 PC画面の嫁に向かってのドヤ顔。


 恐らく周囲が見たら『うわぁ‥‥‥』と言われかねない気持ち悪さだろうが、俺に羞恥心はない。


 三次元の連中がどんな眼で俺を見ようとも、俺が見ているのは常に二次元!


 三次元で興味があるのは電子機器とエロゲ・ギャルゲ・アニメの声優だけだ!


 そんなことを心の中で宣言しつつ俺はいつものペースで攻略を進める。


「それにしても‥‥‥ほんと――――――」


 俺はいつも思っていることを口にする。


 この世界の真実と言えることで、俺の今までの人生で感じたこと。


「――――――クソゲー、なんでしょ?」


「へ?」


 あ、あれ?


 今のは俺のセリフではない。


 背後から聴こえた女の声。


 聞き覚えのある、少し幼めの高い声。


 そして背筋がゾクゾクするような殺気。


 うん、アイツだ。


「人の部屋に入る時はノックとエロゲ一つと『お兄ちゃん♥』のセリフで入るっていつも言ってるだろ?」


「ニート(笑い)のお兄ちゃん(笑い)に決闘を申し込みに来たのよ!!!」


 こいつは俺の実の妹/『かすが りんこ』だ。


 平仮名で書くとすぐに攻略したいキャラなのだが、漢字で書くと一変する。


 恐らく平仮名を見た数名が『春日 鈴子』辺りを想像するものだが、真実は『春雅かすが 燐虎りんこ』だ。


 名前の通り恐ろしいほど怖い。


 インドアでニートな俺と違い、こいつは超アウトドアで働くこと・動くことをこよなく愛しているような人間だ。


 一週間は高校の部活とアルバイトで終わるほど忙しく、家にいる時間は一日数時間と言ったところだろう。


 今日は確か‥‥‥月曜日。


 月曜日はこいつが部活動とアルバイトを休んで、学業が終わればすぐに家に戻ってきて自由に過ごす唯一の日。


 そして毎週この日、こいつは必ずと言っていいほど俺の部屋に不法侵入してくる。


 ‥‥‥それにしても、相変わらず人の話しは聞かないし唐突だし、ダメな妹に育ってしまった。


 やっぱり妹はI・LOVE・お兄ちゃんに限る。


 これだから三次元はダメなんだ。


「人の話しを聞いてるのお兄ちゃん?」


「お前に人の話を聞いてるのかを問われるのは不服だが‥‥‥」


 まぁそんなことで言い争っても埒が明かないので妹の話題に付き合ってやることにした。


「今日こそはお兄ちゃんに外の良さと言うものを教えてあげる!!」


「やれるものならやってみるがいい!!」


 ‥‥‥俺っていつから悪役になったんだろな?


 そんなことをさておいてこいつは俺にいつものように決闘の内容を言った。


「私と一緒に、ファンタジーの世界に行ってもらうよ!!」


「――――――は?」


 何を言ってるんだこの妹は?


「お、おいおい馬鹿妹‥‥‥じゃなくて、我が妹よ?

 働き過ぎで遂に頭がイっちゃったか?」


 妄想に花を咲かせるお年頃とは言え、行き過ぎた妄想は流石にないわぁ‥‥‥。


「大真面目だよ!

 今度の今度の今度こそ、お兄ちゃんを真の社会人――――――真・社会人に改心させてみせる!」


「中二病乙」


「だから大真面目だって!」


 今まで以上の中二病に俺は本気で引いていた。


 背後のPCでは攻略キャラが恥ずかしそうにモジモジしていると言うのに、こんな妹の相手をしなければいけないと思うとイライラしてしまう。


 俺の今の最優先事項は攻略キャラのイベントに進むことだ。


 それを邪魔されてるだ。


 ふざけた結末だったらただでは済まさん!


「百聞は一見に如かず。

 お兄ちゃん、行くよ!!」


「‥‥‥行くってどこに?」


「ファンタジーの世界に!」


「どうやって?」


「こうやって!」


「へ?」


「えいッ!」


「な――――――っ」


 突如、地面が抜けました。


 俺の部屋は二階建て一軒家の二階にあるのだが、落下したら一階に落ちるはずなのだが‥‥‥


「うっ――――――わぁあああああああああああああっ!!!!!!」


 俺は雲の上から真っ逆さまに落下していた。


 しかもちゃんと椅子まで存在している。

 

 椅子に座ったまま俺は高度約六千メートルから椅子に座ったまま落下中。


 ちなみに目の前にいる俺の妹は俺以上に困惑していた。


「あわわわわわわわ!!!!」


 と言うかなんだその悲鳴は?


 ‥‥‥ああ、そういえば燐虎は高所恐怖症だったな。


 顔は真っ青だし、目からは涙が上空に流れてる。


 コイツのことを考えてたら不思議と恐怖はなくなっていた。


 ‥‥‥というか――――――


「これ、いきなりバッドエンドじゃね?」


「ひょえええええええええ!!!!」


 燐虎の悲鳴が変わってることが気になっているが、すでに地上まで残りあと少しだ。


 このまま地面に着けば俺達は間違いなく命を落とす。


 それは‥‥‥やっぱ嫌だな。


「燐虎、手を伸ばせッ!」


「お兄ちゃん!」


 燐虎は全力で両手を伸ばしてきた。


 俺は愛用の椅子を踏み台に力強く踏み出し、妹のもとにジャンプする。


 落下中の強風と衝撃のせいでブレる両手を必死に伸ばし、妹の両手を掴む。


「くっ‥‥‥そぉおおおおお!!」 


 掴んだはいいが、それで出来たのは妹の涙を止めるだけだった。


 どんなに思考を巡らせても、俺達が助かる方法がない。


 走馬灯も邪魔して思考が安定しない。


 こんな状態で出てくる選択肢は二つだけ。


 1、妹を庇って俺は死ぬ。


 2、何もかも諦めて二人とも死ぬ。


「どっちもバッドエンドじゃねぇええかあああああ!!!!」


 ほんと三次元ってやつは最悪だ。


 いつもいつも、俺達に与える選択肢は不幸なものばっかりだ。


 どんなに努力を尽くした人でも、どんなに必死に生きた人でも、どんなに才能を持った人でも関係ない。


 与えるのは辛い選択肢ばかり。


 そのうえ俺たちは答えは選ばないといけない。


 例えその答えがバッドエンドの道であったとしても‥‥‥。


 俺は、そんなこの世界に嫌気がさしてニートの道に進んだ。


 傷つかないために、辛い思いをしないために、苦しまないために。


 金なんて簡単に集まるし、食物だって全く困らない。


 PC一つ、机と椅子が一つ、ベッドが一つ、食料があれば対して問題がないのが俺の知った世界だ。


 だからもう‥‥‥死んだって構わない。


「――――――お兄ちゃん」


 ‥‥‥くそったれ。


 俺は答えを決めた。


 二択の中で選ぶのは――――――。


「燐虎、お前は生きろ。

 そのために、俺が死んでやるからさ」


 俺は死ぬ、そして妹は生き残る。


 それでいい。


 俺は死んでも構わないが、だからって妹が死んでいいわけじゃない。


 むしろ妹は世間一般からすればよくできた人間だ。


 性格は荒いし、料理はクソ不味くて暴力的。


 短所だらけで俺かすれば大っっっっ嫌いな妹だが、コイツには多くの友達がいて、褒めてくれる大人がいて、期待してくれる人がいる。


 独りの俺なんかに比べてばコイツ‥‥‥いや、燐虎は俺なんかよりもずっと生きる価値のある、自慢の妹だ。


 その妹のためだったら、この命なんてどうでもいい。


「頑張れよ、燐虎」


 俺はそう呟くと、燐虎を力強く抱きしめた。


 そして最後の力を振り絞って身体を捻る。


 俺は下になり、背を地面に向ける。


 これで落下しても俺がクッションになって妹は助かるだろう。


 まぁ重傷は免れないとは思うが、誰かが助けてくれるだろう。


 結局それで妹は助かる。


 さて、地面まであと少しだ。


 やっと思考を停止させて走馬灯に集中できそうだ。


 今まで生きてきた時間を振り返って見る。


 物心ついた時から、ニートに至るまでの日々が映像のように流れ出る。


 ‥‥‥あ、あれ?


 やっべ、まともな記憶がないぞ?


 ‥‥‥まぁそれもそうか。


 三次元の記憶に期待するなんてバカな話だったか。


 ニートになってからの方が面白かった‥‥‥そんな気がする。


 ほんと、この世界はクソゲーだな――――――。





*****





「――――――さて、どういうことか説明してもらおうか?」


「はい、ほんとごめんなさい」


 どこか分からない森の山奥。


 仁王立ちする俺と土下座する妹がそこにはあった。


 ちなみに妹は俺の鉄拳によって頭に綺麗なたんコブが出来ていた。


 その代償として右手は真っ赤に晴れ上がってしまったが仕方ない。


 ――――――俺たちは結局助かった。


 不思議なことに地上と僅か一メートルと言う距離で俺たちの落下は停止し、そして勢いがなくなった状態で地上に着地できたのだ。


 その時、妹が『ほ、本当に大丈夫だった』とふざけた発言をしたので鉄拳制裁と土下座どぅげぇずぁをさせたわけだ。


「謝るのはもういいからとっとと説明しろ」


「はい」


 妹は命令に従う兵士のように素早い返答をしてゆっくりと話しだした。


「じ、実はですね、一時間くらい前‥‥‥下校途中のことなんだけど、いつも寄ってる神社でお参りをしてたんだけど」


「それで?」


「そ、それでですね、神様に『お兄ちゃんが脱・ニートできますように』ってお願いしたらいきなり強い光に包まれてですね‥‥‥」


「‥‥‥そ、それで?」


 なんか途中で話しが意味プーになって、数秒間だけポカーンとしてしまった。


 まだ話しの途中だし、続きで理解できる話しになるだろうと信じてこの場は進めることにした。


「光に包まれた時に、私の前に自称神様が現れて『君のお兄さんを脱・ニートさせる手助けをしてあげる』って言ってきたから、色々と相談しまして‥‥‥」


「お、おう」


 話の内容が急展開して俺の頭が混乱してきた。


 とは言えここはちゃんと聞かないと納得もなにもない。


 ここはふんばって妹の話に耳を傾けるとしよう。


「その方法がファンタジーの世界で、その世界に行けばお兄ちゃんの理想通りの人生が送れると思って」


「なんでファンタジーの世界は、いわば二次元だから――――――」


「っ――――――!?」


 その瞬間、俺の脳裏に鋭い雷が走ったような感覚がした。


 そう、それは閃きの瞬間。


 俺の思考回路が今この瞬間、今までにないほどの高加速で回転してある結論を作り出した。


 この世界がファンタジーの世界。


 ファンタジーと言えば精霊、獣っ娘、天使っ娘、悪魔っ娘、義理の妹、義理の姉、義理の母、僕っ娘、俺っ娘、etc,etc,etc‥‥‥。


 それら全てを攻略・俺の嫁・俺の家族に自由自在にできるという理想郷!


 ファンタジーならば一夫多妻もありか‥‥‥ふむふむ。


「妹よ」


「はい?」


 さっきから鉄拳を喰らったこともあってか怯え気味に敬語を使っている妹の両肩をガシッと掴んだ俺は、我が妹に感謝を述べる。


「お前はよくやった。

 お前は素晴らしい。

 お前は最高の妹だ。

 お前のような妹ができて俺は幸せだ」


「は、はあ‥‥‥?」


 呆気にとられている妹をガン無視して俺は背筋を真っ直ぐと伸ばして立ち上がり、天に向かって大きく叫んだ。


「いぃぃぃいいいいいやっっっふぅぅぉぉおおおおおおおおぃぃぃぃいいいいッ!!!」


 素晴らしい!


 なんと素晴らしい!

 

 何度でも言おう。


 素晴らしい!!


 俺は今、理想の世界にいる。


 理不尽な三次元を捨てて、二次元の世界にダイブした。


 これを喜ばずしてなんとする!


 これからは俺の人生ハーレム計画が進行するんだな!


「よし!

 今すぐ街にいくぞ、今すぐ、ナウ、GO!!」


「待って待ってお兄ちゃん!

 ストップストップ!」


「あぁん!?」


 俺の行く手を阻むかのように前の前に両手を広げて立ちふさがる我が妹。


 なるほど、RPGで言うところの最初の敵と言ったところか。


 ふむ‥‥‥最初から強敵だな。


《野生の燐虎が現れた、どうする!?》


1、攻撃


2、道具


3、魔法


4、逃げる


5、R18する


「よし、5番で――――――グハッ!!」


 突如俺の左頬を謎のハイキックが直撃した。


《俺に5000のダメージが与えられた。

 俺は戦いに敗れた》


「くっ‥‥‥!

 さ、流石は我が妹‥‥‥へへ、手も足もでねぇぜ‥‥‥ガクッ」


「ふざけてないで起きてよお兄ちゃん!」


 ハイキックをかましてきたのは我が妹だった。


 この子、恐ろしいことに柔道を黒帯でもっており、その類い稀なる身体能力は人間味を失っている。


 とある海外映画の影響もあって少林寺なども学んでおり、アマゾネスみたいな感じに仕上がりつつある。


 俺に直撃したハイキックもその努力の賜物であり、俺のHPを限界まで削るには申し分ない破壊力だった。


 とは言え俺も今まで何発も喰らい、コイツのサンドバックになってきた。


 たかが一度で倒れるほど貧弱ではな‥‥‥い‥‥‥。


「ぞ、ぞれにじでも、ごのぼれをだおじで何がじだい?」(訳:そ、それにしても、この俺を倒して何がしたい?)


「お兄ちゃんが私をいやらしい眼で見てきたから‥‥‥」


「そりゃ二次元に来たら実の妹にだって手を出したくなるさ」


「どういう理屈よ!?」


 くっ、二次元を知らない女はこれだから嫌なんだ。


 常識を話しても反抗してくる。


 ホントに三次元はめんどくさい。


 うん、めんどくさい。


 ‥‥‥だが、今の俺は心が広い。


 この世界が二次元の世界だと知った瞬間、俺の心は空より広く、海よりも深い。


 だから妹の暴力も反抗も許そう。


 うん、俺は良い奴だ。


「さて、それじゃ冒険するぞ」


「い、いやちょっと待って、ほんとに待ってお願い」


「もっと可愛く言え」


「♡おね♥がい♡」


「ズッッキューーーン!!」


 エクセレント!!


 まさに俺が追い求めていた理想の言葉ことぶぁ!!


 まずい、俺の妹が本気で可愛い!


 これは本気で手を出してしまいそうだ‥‥‥。


「よし、待とう! 

 ぜひ、待とう! 

 いや、待たせてもらいたいと言うべきだろうか!」


 こんな可愛い妹に可愛い声で頼まれてしまっては断るなんて論外。


 ここは素直に、いや、正座してでも聞いてやるべきだ!


「い、いや、本気で正座しなくていいんだけど‥‥‥」


「構わん。

 むしろこうさせてくれ」


「う、うん‥‥‥」


 ん?

 

 我が最愛の妹が苦笑いしているぞ?


 ‥‥‥まぁいい。


 それよりも燐虎の話を聞いてやるのが俺の最優先事項だ。


「え、えっとね?

 私達をこの世界に飛ばしてくれたのって、その神社で会った神様で、実はこの世界のことをちゃんと伝えて欲しいって頼まれてて」


「ふむ‥‥‥なるほど」


 確かに、俺としたことが不覚だった。


 この世界の情報を何一つ知らないのに適当に進もうとしていた。


 RPGで重要なのはマップとか世界観を知ること‥‥‥つまり情報だ。


 情報なくしては生き残れない世界で生きてきたにも関わらず、俺は欲望に脳内が染まってしまったがために忘れていた。


 ナイスだ妹よ。


「頭を撫でてやろう」


「うんイラナイ」


「だろうと思った」


 即答されてしまった。


「それでこの世界のことなんだけど」


 俺のことはガン無視して燐虎は神様とやらに説明されたことをそのまま話しだした。


「まず『この世界では魔法が存在する』ってこと」


「おお~ファンタジーっぽい」


「次に『色んな種族があるけど、種族同士で対立している場所があるから注意』」


「やはり種族があるのか‥‥‥」


「次に『魔法はあるけど蘇生の魔法はない』ってさ」


「あぶね‥‥‥それ知らないで魔法頼ってたら死んでた」


「それで‥‥‥」


 さっきから俺の発言を無視する妹。


 流石に心が折れそうだ。


 取り敢えずリアクションは心の中にしようと決めた俺は再び妹の言葉に耳を傾ける。


「『職業屋があるから、そこで自分に見合った職業を選んで進んでね』っていうのと追加で『装備とかは装備屋って店にいけばあるからそこで備えること、ただしお金は『モンスターを倒す・街や依頼をクリアして稼ぐ』の二つ』だって」


 やはりモンスターが出るらしい。


 ‥‥‥というか段々と俺達、ほんとに戦いながら進まないといけないって流れになってきたんだが。


 俺、運動がめっちゃ苦手なんだけどな‥‥‥。


「最後に『魔王は女で、倒すと嫁になってくれるよ。 すごく可愛い設定だから期待してて!』。 ――――――以上!」


「よし、今すぐ攻略だ!!!!!」


 魔王が女ですごく可愛いだとぅ!?


 これは攻略必須ではないか。


 運動が苦手だが、魔王が可愛ければ話しは別だ。


 策を巡らせて攻略すればどうにかなるだろう。


 幸い、俺の妹が格闘家ファイターみたいな感じだし、戦いはなんとかなるだろう。


「お、お兄ちゃん‥‥‥随分やる気だね」


「当たり前だ。

 こんなに気分が良いのはいつぶりかわからんからな」


「ふふっ。

 なんかそういうお兄ちゃんを見るの、久しぶりだなぁ~」


「‥‥‥まぁ、三次元に嫌気が差してたんだ。

 ここが楽しみで仕方ないのは当然だろ?」


 妹の優しい笑みに、俺は眼を逸らしながらそう言い返した。


 燐虎の顔を見なかったのは、コイツの笑顔が眩しすぎたからだ。


 そしてしっかりと生きている人間に対しての後ろめたさや、罪悪感だろう。


 ‥‥‥まぁ、そんな妹が用意してくれた場所なんだ。


 楽しまなきゃ損だろうな。

 

「そんじゃ燐虎。

 こっから俺達の新しい人生の始まりだ!」


「は~いはい!」


 軽い返事だが、その声はどこか嬉しそうに弾んでいた。


 俺と燐虎は期待を胸に歩き出した。


「ん?」


《レッド・ドラゴンが現れた!

 さぁ、どうする?》



「「そんなの逃げるに決まってるでしょーーーー!!!」」



 俺と燐虎の旅、前途多難‥‥‥。

はい、というわけで勢い任せなプロローグです。


次回からはファンタジー世界で二人の物語が始まります。


ニートな兄と努力家の妹が贈る暴走と妄想のファンタジー小説がこれからスタートしていきます。


‥‥‥ほんとに完結までいくのやら(^_^;)


それでは次回もよろしくお願いします!

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