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地獄11

 俺は、ミカの心配顔を申し訳なく思いながら帰り道を飛んだ。

 帰りの修羅道は、パパ達のおかげで数えきれる程度の亡者しか残っていなかった。

「亡者のみんな、集合〜」

 コソコソと様子をうかがう亡者達にミカが声をかけた。

 亡者達が恐る恐る集まってくる。

「あんたら何者だ? 大王よりやばそうなオーラを感じるぜ?」

「あたしはミカエル。こっちはルシファ兄様よ」

 亡者達から歓声が上がる。

「大王の気配が消えたようだが、死んだのか? だとしたら、あんたらが俺達に許しを与えてくれるんだろ? なあ、なんでもするよ。だから、頼むよ!」

「そのつもりで集まってもらったのよ。みんないっぱい反省した? もう誰も傷付けちゃだめよ?」

 亡者達は口々に反省した旨を叫んでいる。

 だが、その中で、生き残っていた軍人の亡者と骸骨の上官が何か言い合っていた。

「そこ! 仲良くするの? しないの? 居残りさせちゃうよ?」

 二人は言い合いをやめてミカに頭を下げる。

「閻魔さんのやりかたがわからないから一旦冥府に送るけど、怖がらないで。きっと楽しい世界にして、あなた達が戻ってくるのを待ってるから。今度はいい子になってね。みんな」

 亡者達はそれぞれの宗教の祈りのポーズで、ミカに感謝の意を表した。

「じゃあ、またね」

 ミカが得意の巨大光弾で、整列した亡者達を消し去った。

 みんな、ホッとしたような、いい顔をして旅立っていった。


 タナトスちゃんの屋敷に着いたが、留守のようだった。

 中に入ってみると、テーブルの上にメモが残されていた。


「パパと魔界の家にいる。いつでも電話して」


 ミカが受話器を置くと即座にタナトスちゃんが現れて、俺達を魔界の家へと連れ帰ってくれた。

「よく帰った! おまえ、見違えたな。そっちのちっこい嬢ちゃんもすげーオーラだが、なんだ、その底知れないオーラは。おっと、ところでよ、あのあと様子を見にいこうと思ったんだがな。タナトスちゃんがものすげえ勝利のキッスをしてくれたおかげで、引っ込みつかなくなっちまってよ。おまえと天使長さんがいれば大丈夫だろうと思って、さっさと帰ってきちまったぜ。どうせ俺達がいっても足手まといだったろうからな。勘弁しろよ」

「あなたがパパさんね? あたしはミカエル。みんなはミカちゃんって呼んでくれるの。光希君はね、ルシファ兄様だったのよ? パパさん」

「なんだと? 嬢ちゃんが天使長さんか? 光希がルシファ様だって? どおりで底知れねえわけだ。こりゃ、これからは光希様って呼ばなきゃならんな」

「やめてくださいよ、パパ。俺はそんなんじゃ……」

「そうか。まあ、そうだよな。俺様が育ててやったからおまえは強くなったんだ。これからはタナトスちゃんと一緒に楽な暮らしをさせてもらわなきゃならん。なんせ、俺様は魔王ルシファのお師匠様だからな。ところで、サッちゃんはどうした? 一緒じゃないのか?」

 俺はパパの前に土下座した。

「サッちゃんは……俺が……」

「急にどうした? 何かあったのか?」

「パパさん、怒らないでね。操られたサッちゃんを、光希君が死なせてしまったの。そのあと、操られた光希君は、サッちゃんを……食べちゃったんだって。でも、仕方なかったのよ。アーリマンっていう悪い奴が、あたし達みんなを操っていたんだから」

 パパがオーラ全開で俺に殴りかかってきた。

「やい、光希! てめえならサッちゃんを幸せにしてやれると思って見守ってやったのに! 食っただと? 死んで償え(つぐなえ)! 今すぐ追いかけてサッちゃんに謝れ! 俺と旦那の可愛いサッちゃんを返しやがれ、このくそガキ!」

 以前の俺ならとっくに死んでいたであろう殴打も、ミカとタナトスちゃんがどうにか止めてくれた。

「光希を責めないで。あなたもわかってるはず。サキュバスは何があったとしても光希を許す」

「そうよ、パパさん。サッちゃんのダーリンを殴ったら、サッちゃん悲しむよ」

「いいんだ、二人とも。パパ、俺を……殺してください。やっぱり俺は……死んで……サッちゃんに謝りに……いきたい……」

 再び土下座した俺の頭に、重いげんこつが一発落ちてきた。

「いつまで泣いてやがる! もう二度と操られないように、精神の鍛錬もみっちりさせてやるから覚悟しとけ。……殴ったりして悪かったな。とりあえず風呂でも入ってさっさと寝ろ」

 ミカとタナトスちゃんのオーラが当てられ、殴打の痛みが軽くなると、俺は風呂に入ってサッちゃんのベッドで眠った。約束のウェディングドレスを抱いて。

 久しぶりにサッちゃんの夢を見た。

 楽しい披露宴だった。

 みんなとても楽しそうに笑っていた。

 披露宴が終わって、もう一つの約束を果たしてくれた。

 トランクスに不祥事を起こしてしまった。

 サッちゃんが、胸の上に座っていたような気がした。

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