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マスターと私

この町は、一番外側に、外部から遮断する塀が設けられています。


理由は端的に言えばこの町の自治のためです。


国からの半独立を保つために、自治をする区域を定めようと塀をもうけてあるそうです。


が、この町の規模はかなり大きいのです。


長さの表し方が、日本とは違うので比較がしにくいのですが、端から端まで歩くと、だいたい2時間はかかる距離といえばだいたいどれくらいの広さかは想像つくでしょう。


そこそこの規模を誇るこの町ですが、さらに通路を全て通って進むとなると、さらに時間がかかります。


清掃活動というのは、これを全て掃除して回るクエストなのです。


町を歩き回らないといけないうえに、同じくらい歩く遠征などのクエストに比べると少し報酬が少ないため、清掃活動は外れ仕事らしいです。


ですが、私にとってこの仕事は、楽以外のなにものでもありません。


歩いてゴミを広い集めるだけでお金がもらえるのですから。


日本と違って、電化製品などないこの時代、ごみと言われるものは、使いふるされた紙や布、廃材、使用不能の武器、生ゴミなどの基本燃やせばよいごみしかありません。


燃やすことが法に触れたり、条例に違反したりするわけではないため、私は集めたゴミをほぼその場で焼却しています。



「今日もごみあるな〜」



先程見つけた、魚の生ゴミを燃やしながら考えます。


我々の世界のような、大量生産、大量消費の世界ではないとはいえ、多くの人間が住む場所にはごみが耐えません。


だいたい、「地球に優しく〜」なんてエコ活動をしたこともない世界のため、使えなくなったものは当然のごとく燃やし尽くします。


それがこの世界における基本なのですが、それがまたゴミを増やす要因です。


そのため私がやっている「清掃活動」というのは、この世界になくてはならない仕事なのです―――――











町のよくゴミが捨てられている裏路地を掃除(焼却)し終え、もう仕事は終わりです。


これで1日分の食事は賄えるのだから、ずいぶんな職だと思うが、みんな面倒で非効率だと言ってやらないのです。


しかし、私が仕事を終えたのは、午後少し過ぎたくらいでした。


適当な場所で、自分で作った弁当を食べ、家に帰ります。


今度は別の仕事が待っているのです。



「いらっしゃ〜い」



「おぅ姉ちゃん。いつものやつ頼む」



「はい、ちょっとお待ちください」



ここからはなんと、マスターの店でウェイトレスてしてお手伝いをします。


マスターには日頃からお世話になりっぱなしなので、それのお礼が主な理由です。


そのため、給料の類いは一切もらっていません。


だってそれまでに私はどれだけ彼に救われたか…。


それに関しては、また今度話します。




実はマスターと私の関係は、もう何年も続いています。


そのためマスターは、私が「不老不死の呪い」にかけられていることも、「数百年前に魔王一族をほぼ壊滅させた勇者」であることも知っています。


そして、そのような身の上にあるにも関わらず、私を受け入れてくれたのです。


私は彼が、なんでもう数百年前に生まれてくれなかったのかと、理不尽に思ったことがあるくらいです。



「よぉ清掃員!バイトか?」



レクルスは大きいとはいえ、やはり集まってくるところにはそれぞれにたような面子が出揃います。



「清掃員なんかやってねぇで、一日中ここで働いてろよ」



「そうだったら毎日来てやるよ!はははっ!」



「ふふふ。冒険者ってなかなかロマン溢れて、私好きですよ?ああいう仕事」



「ロマン!?ごみ掃除のどこにロマンがあるんだよ!はははは!!」



私をバカにする談義が続きます。


この場において、彼らはお客さんである以上、何となく強く言える気がしませんでした。


本当だったら怒りたい気分ではありましたが、私は必死に我慢していました。



「ご、ご注文はお決まりで……?」

「うっせぇ!」



ザバッ!!



嫌なやつがやることは、私にとって、何一ついいことなどありません。


私の体には、男がコップからぶちまけた水がかけられました。


営業妨害のなにものでもありません。


私は殺気を抑えこむだけで精一杯でした。


しかし、明らかに殺気を抑えてない人物が一人……。



「お客さん」



必死に営業スマイルをなんとか保ち続けていたとき、私よりも前に、マスターが出てきました。



「悪いですけど、この子、うちの大切な従業員なんっすよぉ……!あまり迷惑な真似なさるようでしたら、蹴り飛ばしたうえで出禁にしますよぉ!?」



なんとマスターは、十数年前まで冒険者をしていた腕っぷしで、相当レベルも高い人物でした。


鍛え上げられた筋肉と、鋭い眼光。


明らかに、商売人の顔つきではありません。



「……っっ!!?は、はひぃ!」



これにはさすがの冒険者勢も焦ったのか、喉から悲鳴をあげるだけで精一杯なようすで、全身をがたがたと震わせていました。


さすがにこれでは、冒険者が気の毒でした。



「ま、マスター……お肉焦げちゃいますよ?」



大丈夫感をアピールし、今すべき仕事を促します。


ようやく我に帰ったのか、にっこりと笑い



「とにかく、そういうことなんで『気を付けて』くださいね?」



「…は、はぃ」





彼らの宴は、恐ろしいくらいに盛り上がりませんでした―――――


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