不老不死な私
新作作りました。決して前の作品に折れたのではありません。違いますよ。息抜きです。
突然ですがみなさん、なにか一つ、能力を得られるとしたら、なにがいいですか?
空を飛ぶ能力?
動物と話せる能力?
未来が見える能力?
どれも素敵です。
でも、「不老不死」だけはやめておきましょう。
あれは超能力なんかじゃありません。
恐ろしい「呪い」です―――――
赤、青、黄、緑、白、黒、金という色の名前がつけられている大陸。
そのなかの青の大陸にある王国、ラナータ王国。
その国にありながら、半独立地帯となっている、自由自治都市「レクルス」。
この町で私は、冒険者として暮らしています。
冒険者というのは、簡単に言えば「何でも屋」という職業です。
人や物の護衛から、物の採取などまで行います。
が、あらゆる税が免除されるうえ、トレジャーハンティングといった夢や希望を求めて、といった理由でこの職につく人も多いのです。
私がこの職に着いた理由は、「異世界に来たからにはやりたい」といった理由です。
そう、私はこの世界の生まれではありません。
私の生まれは、日本という国です。
日本という国がある世界から、こっちの世界にやって来ました。
そういえば、私の名前を名乗っていませんでした。
私の名前は、ヒトミ=イチジョウ。……いえ、私の世界では、一条瞳です。
「……ヒトミおはよう」
「あ、マスター、おはようございます」
マスターと私が呼んでいる彼は、レクルスのとある一角に飲食店を経営している方です。
とある事情で私は彼の家に居候しています。
飲食店は昼は普通に料理などを出しますが、夕方から酒を出し、いわゆる酒場になります。
だから、マスターです。
私だけでなく、ここに通いに来る人みゎながそう呼んでいます。
ちなみに私は冒険者ではあるのですが、お世話になっているということもあり、マスターの店をお手伝いしています。
マスターは私に対してもお給料を出してくれようとしてますが、私に今までしてもらったことに比べれば、これくらい何でもありません。
とにかく、彼には頭が上がらないということです。
一通り装備を身に付けると、冒険者ギルドへ向かいます。
自由市場を目指すレクルスにはほとんどギルドはないのですが、唯一の例外として、冒険者ギルドがあります。
冒険者は、武器の装備などを許されていて、なおかつ勝手な入国、出国が許されています。
そのため、多少縛るものが必要なのでしょう。
冒険者ギルドはそのためのものです。
ギルドにはたくさんの冒険者がクエストを受けにやってきます。
当然大勢の人間がいれば、そこに好きな人と嫌な人ができることがあります。
「……邪魔だ」
「あ、あぁ。ごめんなさい」
「女の癖に冒険者やってんじゃねーよ、雑魚のくせに」
そもそも男尊女卑であるこの世界の価値観に、私がいつも同じクエストしか受けていないとなれば、広がる噂は一つです。
「あいつは弱い」。
そんな噂は、ここのギルドに広まってしまっていました。
たぶん、ギルド最弱予想ランキングがあれば、私は堂々の一位でランクインできるでしょう。
実際の結果は、それの真逆なわけですが。
ちなみに、私がいつも、受けているクエストというのは、他には誰もやりたがらないような、すごく面倒で、そのうえ面白味などないものです。
しかし私は、このクエストを続けます。
理由は簡単、私の戦いを見せる必要がなくなるからです。
私の力は、隠しておいた方がどちらの身のためにもなります。
「…いらっしゃいませ。ヒトミさま。クエストはどうなさいますか?」
受付の人にクエストのリストを提示されるのですが、私の受けるクエストはすでに決めてあります。
「じゃ、街の清掃で」
「了解しました」
私には、とある残念な二つ名が広がっちゃってます。
「おい清掃員、ちゃんと町中きれいにしてこいよー!がははははっ!」
「俺昨日あの辺でゴミ捨ててきてやったから、お前の仕事のために!感謝しろよー!!」
私の二つ名は、「清掃員」です。
まぁ、気にしてなんていませんけどね。
気にしてなんか……。