結末の結末 【聖魔光闇様主催リレー小説 第三話】
この小説は、聖魔光闇先生のリレー小説第3弾となります。こちらのリレー小説の設定事項はこちらになります。
(※【第一話】よりコピー)
★全20話(一応(出来るだけこの間に完結したいと思っています))。
★一話1000文字以上。
★登場人物の制限なし。
★重複執筆可。
★ジャンル:ファンタジー。
★魔法等の概念の設定はお任せ。
★執筆予約制度再開(執筆著者様は、活動報告に掲示させていただきます)。
★執筆著者様は、執筆前にご連絡ください。
★執筆投稿後、必ず御一報ください。
★あらすじは、前話までの要約を明記。
★全ての物語を聖魔光闇がお気に入り登録します。
★後書きに、執筆著者様募集広告を添付。
【結末の結末 第一話】 http://ncode.syosetu.com/n1793br/
【結末の結末 第二話】 http://ncode.syosetu.com/n2503br/
【結末の結末 第四話】 http://ncode.syosetu.com/n9487br/
【結末の結末 第五話】 http://ncode.syosetu.com/n9514bt/
現在、第六話の執筆者様を募集中です。
―グググ……―
それは、深い深い闇の中。鬱蒼とした森の闇の中、そこにある洞窟の押しつぶすような闇の中。
―グ……オオオ……―
その洞窟の奥深くにある、魔方陣を刻まれた巨岩の奥深く。
―オ……オオオォオオォオ……!―
その闇よりも奥深い、“それ”は目覚めようとしていた。
ベルセルクの国境を越えた俺達は、隣国スアムリアの森に入っていた。森は進めば進むほど深くなっていき、深くなるに従って怪しげな気配も増していった。
古来より多くの偉大な魔法使いを輩出し続ける魔導軍国スアムリア。この国がそれほどまでに魔術を発展させてきた背景には、国土全体に満ちる濃厚な魔力があった。
その魔力ゆえかスアムリアには魔導の才を持つものが多く生まれ、さらに生まれたときから魔力に包まれて育つスアムリア人は、簡単な魔法なら息をするのと同じくらい簡単に使うことができる。まさにこの国は、なるべくして魔導軍国になったのである。
しかし魔法使いにとっては居心地のいいこの環境も、俺達のような剣士にとっては不安を駆り立てるものでしかなかった。
もちろん、仮にも魔王を倒した俺達だ。この世にあるものなら凡そどんなものに出会ったところで、不安を感じることなどほとんどない。
ただし、それは対象が“斬れるもの”という前提の上でだ。ところで残念ながら、“魔力”は斬ることができない。
「ったく、いつ来てもやな感じだな、ここは」
後ろを歩くエルドランがぼやくのが聞こえる。森が左右に迫っているため道幅が狭く、横に並んで歩くことはできないのだ。
「なんだ、相変わらず肝試しは苦手か?」
心の中ではエルドランに同意しつつ、強がりから俺は軽口で返す。手は無意識に剣の柄に触れている。
「お前他人の事言えんのかよ。それよりさ……」
とエルドランは話題を逸らす。
「前にここに来た時のこと、覚えてるか?」
「もちろんだ。ここからもう少し行ったところにあるソウリア村でネーネに出会って、それから魔獣グレイストを討伐しに行ったんだったよな」
俺はまるで昨日の事のようにそのころを思い出していた。あの頃は、俺もエルドランもネーネも、ただの向う見ずな新米勇者だった。「魔王を倒しに行く」という俺達の夢も、表では賞賛されても裏では冷笑されることが多かった。
数えきれない数の人間が同じ夢に散った後では、そう思われるのも仕方のない事だったのかもしれないが、やはり嬉しい反応とはいえない。
そこで俺達は、そんなニヒリストたちを見返してやろうと考えていた。折しもその頃、魔王軍の幹部“六魔将”が一、魔獣グレイストがスアムリアに侵攻していた。まさに渡りに船と、俺達は喜び勇んで出陣したのだった。
「魔獣グレイストか……あれは正直やばかったな」
苦笑するエルドランに、俺もうなずき返す。
「ああ、ネーネがいなかったら、俺達あそこで死んでただろうな」
今だから、笑って言える。
「ところで、そろそろソウリア村に着くころだよな」
エルドランがそう言った丁度その時、二人の視界が唐突に開けた。そこにあったのは、信じられない光景だった。
「なんだよ、こりゃあ……」
俺は絶句した。そこにあったのは、無残に荒れ果てたソウリア村だったのだ。
かつて軒を並べていた家々は真っ黒に焼け落ちていて、辺り一面焼け野原が見渡せた。そこに人影はなく、ただ茫漠とした村の死骸だけが横たわっていた。
「いったい、何があったんだ? モンスターに襲われたのか?」
エルドランは警戒のためにあたりを見渡しながら言った。
「いや、モンスターじゃない……見ろ」
そう言いながら俺は近くの地面を指さした。そこには半径三メートルほどの円があり、その内側には様々な幾何学模様や怪しげな魔法文字が刻まれている。それを見てハッとしたエルドランがもう一度あたりを見回すと、ちょうど同じようなものが一定の間隔を空けて刻まれていた。
「どういうことだ……? この村はスアムリアにつぶされたのか? でも、どうして……」
「……わざわざ説明する必要があるか?」
混乱した様子のエルドランに向かって、俺は刺すように冷徹な言葉を投げつけた。
「まさか……ネーネがいたからってことか? でも、それだけの理由で……」
「俺がいたムネハカという集落は、もうこの世には存在しない。俺がそこにいたという、ただそれだけの理由でな」
俺の言葉に、エルドランは言葉を失った。
「分かるか? 俺達が今まで守ってきたのは、そういう奴らだったってことだ」
エルドランが何も言えないのをいいことに、俺は独白を続ける。半分は、自分に言い聞かせるように。
「確かに、魔王は悪だった。魔王軍は人間の脅威で、俺達がそれを倒すのは正義だった。だが、その魔王が倒された今、世界の力のバランスは崩れ、今度は人間が人間の脅威になった。いったいこれは、どういうことなんだ?」
「それは…」
「俺、最近少し思うんだ。もしかしたら、魔王の存在には何か重要な意味があったんじゃないかって。この世界の均衡を保つための存在意義がさ。もしそうなら、俺達はそれを取り去ってしまった。そうなれば、俺達はすでに世界を混乱に陥れる、魔王みたいなものなんじゃないかってさ」
「しっかりしろ、ミューグレン!」
不意に、エルドランが毅然とした声をあげ、俺の肩をつかんだ。
「お前、一体どうしたんだよ! そんな考えに憑りつかれてたら、本当に魔王になっちまうぞ!」
「分かってる! それは分かってる……けど、時々分からなくなるんだ。俺達は結局、何のために魔王を倒したんだろうって……」
「……そんなの、分かり切ってるじゃない」
その時、背後から懐かしい声がした。エルドランの次に長い間共に旅してきた仲間の声、あの勝気な性格がにじみ出るような声。俺が振り返るとそ…
「よお、久しぶりだなネーネ!」
「っておいエルドラン! 俺の心の声にかぶせるな!」
「心の声なんか知るわけねーだろ!」
「まったく相変わらずね、あんたたちは」
謎の掛け合いをする俺達に、呆れたように言うネーネ。
「うるせえ! ……っていうかそれより、どうしてお前がこんなところにいるんだ?」
エルドランははっと我に返ったように聞く。
「それはこっちのセリフよ! なんであんたたちがこんなところにいるのよ?」
「あ、いや、俺は、ちょっと魔王城を別荘にし……」
「そんなことより、緊急事態なのよ!」
エルドランの話を聞く価値なしと判断したのか、聞いておきながらカットするネーネ。
「……どういうことだ、ネーネ?」
ノリはともかく、緊急事態であることは本当らしいということがネーネの口調から察せられたので、俺はエルドランにフォローを入れることもなく話を進める。
「それが、魔獣グレイストが復活して人々を襲ってるのよ!」
「え……マジで?」
再び言葉を失うエルドラン。
「だってあいつらは、俺達で倒したんじゃ……」
「封印しただけよ。その封印が、どういう訳か今になって解除されたらしいのよ」
ネーネが説明する。
「という訳で、もう一度グレイスト討伐に行くわよ」
「……ちょっと待てよ」
当たり前のように言うネーネに、俺は口を挟んだ。
「それは、スアムリア人を助けるってことか?」
「そうよ。当然でしょ?」
いまさら何を、という言い方のネーネに、俺はむっとして言い返す。
「でも、スアムリアはお前の故郷をこんなにしたんだぞ!? そんな奴らを護るのか? そんな奴らのために命を懸けるのか、お前は?」
「それは……たしかに、ここの事は残念よ。でも、それとこれとは別の問題でしょ?」
ネーネもむっとして返してきた。
「そうかもしれないけど……」
俺には分からなかった。なぜ、ネーネはこんなに簡単に割り切れるのだろうか? いや、むしろ俺が割り切れていないだけなのだろうか?
考えれば考えるほど、さらに訳が分からなくなってきた。
「分かったら二人とも、さっさと行くわよ!」
というネーネの鶴の一声で、俺達の当面の目標が決まった。
今分からないなら、先に進んでみるしかないんだ。俺は自分にそう言い聞かせた。
先に進めば、何かが見えてくるかもしれない。
立ち止まっていては、どっちにしろ何も見えないだろう。
大丈夫だ。何より俺には…
仲間がいるんだから。
結末の結末第三話を書かせていただいた稲本です。
第三話ということでそろそろ本題に入っていきたいと思い、なるべく自由度を残しつつ、方向性を定めていくことを意識しました。
発想を広げるための伏線をいくつか置いたので、いじりたくなった方はふるってご参加ください(現在第五話まで投稿されているので、次は第六話になります)。
書いていただけるという方は、聖魔光闇様までご一報ください。