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最強の馬鹿のプロローグ

俺――赤坂康太(あかさかこうた)がここ、文園学園(ふみぞのがくえん)に入学してから、二回目の春が来た。


通学路の遊歩道に咲き誇る、満開の桜はなかなかに綺麗で、一瞬目を奪われたが、俺の頭はもっと別のことでいっぱいだった。


そう、これから一年間過ごす仲間達――クラス分けに俺の、頭はいっぱいだった。



      ■      



「いやぁ、良い朝だ。こんなに太陽が輝いているってことは、俺に良いことがあるのかな」


俺は太陽を仰ぎ、独り言をつぶやく。これは良いことあるね。


「お、そこにいるのは、赤坂じゃないか」


片手を目の上にかざしながら歩いてると、校門前で低い男の声に話しかけられた。この声は、大佐かな。


俺は、声がした方に目を向ける。そこには、どこぞの傭兵だって然をした、ごつい男が立っていた。


「やっぱりたい……大塚先生。おはようございます」


「ん?今?なんか変なこと言わなかったか?」


「いえ、気のせいですよ」


危ない。危うく大佐と言ってしまうところだった。


ちなみに大佐というのは、目の前の大塚先生に付けられたあだ名で、大塚先生の外見100%でつけられたあだ名である。MIBとかそういう名前の組織にいそうなほど、ごつい体つきの彼は実際ただの国語教師である。


「そ、そうか。しかし、赤坂、今日は特段に機嫌が良いじゃないか。何かあったのか?」


「いや、特に何も。ただ何組になるのかなって」


「あぁ……。そうか。クラス分けか」


大佐はそう言って遠い目になる。何だろう。なにか思い出でもあるのだろうか。大佐の思い出とか怖くて聞けない。


とりあえず、ここにいても何だし、大佐を置いて先に行こう。クラス分けも気になるし。


「じゃあ、先生。俺はここで」


一応挨拶だけしといて、俺は歩き出そうとし、


「あぁ、まて。赤坂」


大佐に呼び止められた。


「なんです?大塚先生。……あ、あぁ。今日も歯が白いですね。うらやましいです」


「なにを言ってるんだ、お前は。そうじゃない」


「え?じゃあ何ですか?俺、割と遅めにきちゃったから、急がないといけないんすけど」


「まぁ、慌てるな。お前にとって大事な話なんだ」


大佐は真剣な表情だ。何だろう。俺、なんかしたかな。


遅刻も欠席も大してしてないし、少し勉強しなかったけど、それでも超絶馬鹿って程じゃないし。なんにも問題ないと思うんだけど。


「俺にとって大事な話ですか?何でしょう。俺クラス見ないといけないんすけど」


俺は急かすように言う。初っ端から遅刻とか、これから始まる楽しい青春ライフに支障を来しかねないからだ。


――だが、大佐の答えは、


「そのお前のクラスについてだ」


「え?貼り出しじゃないんですか?」


文園学園はちょっと変わった制度を取り入れてるけど、普通にクラスとかは掲示板に貼り出す形で、こうやって、先生が生徒のところに来ることなんて無かったはずだ。


俺は頭の上にはてなを浮かべつつ、大佐に話の続きを促す。


「いや、普通は貼り出しなんだがな。毎年特例がいるんだ」


「へーそうなんですか。どんなです?」


「生徒番付――は当然知ってるよな」


「勿論ですよ。三月の学年末テストでの得点順に生徒に順位付けをする、あれですよね」


この生徒番付という制度が、ここ、文園学園の変った制度である。


生徒を順位付けし、それによって学園からの待遇が違うという、超縦社会型の制度で、クラス分けもこの順位によって行われる。だから、俺はクラス分けの結果を気にしているのだ。


最低クラスE組なんてクラスになってしまっては、これからの青春。第一印象が超絶馬鹿となってしまう。狙い目は真ん中あたりのC組だ。


「生徒番付で、クラス分けをするのも勿論知ってるな?」


「当たり前じゃないですか。それを知らずに入学する人間なんていませんよ」


そのくらい、文園学園のこの制度は有名だった。生徒差別のグレーゾーンの、この学校は何かと有名なのだ。


って、そんなことはどうでも良い。大事なのは、俺のクラスだ。


「すいません先生。あんまりもったいぶらないで言ってくれませんか」


「……分かった。これに書いてある」


大佐は言いながら、着ているジャケットの内ポケットから、一つの茶封筒を取り出す。あれの中の紙に、俺のクラスが書かれてるのか。そう考えると緊張してきた。


俺は大佐からその茶封筒を受け取り、ふさぎ口を開けにかかる。


「――俺は毎年、最下位(ワースト)を見てきたんだがな」


「先生、結構長いですもんね。ここに来て」


あー。こういう茶封筒って結構開けにくいなぁ。上からばっさり行くか。


「毎年見てるからな。ワーストになりやすい奴の目星は大体付くんだ」


「へー。そうなんですか。え?まさか俺だって言うつもりですか?だとしたら先生はまだまだですね」


失礼な教師もいたものだ。俺が学年最下位だって?ははっ。そんなことは無い。


たしかに、生徒番付をする学年末テストは全然勉強しなかったけど、それでも半分以上は回答した。そんな俺が馬鹿なら、この世の何人が馬鹿になるだろうか。


「あぁ、俺はまだまだだった」


「ですよね。俺は全然馬鹿な部類じゃないですよ」


ビリッ。


お、やっと封筒を開けられた。中には一枚の紙が入っている。


「こんな事になるなら、最初からやらせておけばよかった」


「なにいってるんですか、大佐」


封筒の中に入っている紙を取り出し、開く。さーて、何組かな。特例ってのは、何だろう。実は成績優秀者だったとか?


――だが、そこには、


『赤坂康太。貴方は3月に行われた学年末テストで、最低の成績を修めた最下位(ワースト)として、ここに表ずる。よって貴方をE組に割り振り、皆の反面教師の役を任命する。というか勉強しろ、クソ馬鹿』


「赤坂、お前は馬鹿だ」


こうして俺の――学年最下位の高2が始まった。

さくしゃのあとがき

これからどんどん馬鹿を増やしていくので、よろしければ見てやってください

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