episode4 ちっちゃい子
手から伝わってくる広樹の体温。
なんだかよくわからないけど、こっちが緊張してしまう。
人と手を繋ぐなんて、何年ぶりだろう…
保育園の時以来かな?
その時は、こんなに緊張してたのかな…?
「梓! 次どこ行く?」
「えっ!? あ、あぁ…」
なんか私…今、変なこと考えてたよね!? あー、何してんの自分!!
「梓? 大丈夫?」
広樹が少し心配そうに私を見てくる。
…大丈夫なのか、わかんないけど…
「うん。大丈夫…。どこでもいいよ」
とりあえずそう答えておいた。
「じゃあ、あっち行ってみる?」
そう言って広樹が指差したのは、なんだか女の子! って感じのお店だった。中には、小学生から高校生くらいまでの、オシャレな女の子たちがいる。
…っていっても、今日は人数が決まっているから、そんなに多くはいないんだけど。
「うん、いいよ」
別に私は興味無かったけど、行ってみることにした。
とりあえず、この、広樹と手を繋いで通路の真ん中を歩いているっていう状況をなんとかしたい…
中に入って、いろいろな物を見て回るけど、さっきみたいに、気に入る物は無かった。
「ねえねえ!」
「?」
すると、なんか下の方から声をかけられた。
「どうしたの?」
広樹がしゃがんでそう言った。
目の前には、小学生低学年くらいの女の子がいる。
「おにーちゃんたち、付き合ってるの? カップルなの?」
!!?
…ちっちゃい子っていうのは、やっぱり素直なんだな。こんなに直球でくるのか…
「まだカップルじゃないよ。でも、お兄ちゃんは、このお姉ちゃんのこと大好きだよ」
!!!?
訂正。ちっちゃくなくても、直球なやつがここにいる。
ってか、広樹!? なんでこんなところでそんなこと言うの?
案の定、周りにいた女の子たちは、全員こっちを見ている。
「すごいねー」
「ねー」
あちこちから、そんな声が聞こえてくる。
…最悪だ。
「そうなんだー! じゃあ、おにーちゃん、頑張ってね!」
さっきの女の子は、そう言うと、手を振ってお母さんのところへ走って行った。
…頑張って、って…
「あんなちっちゃい子に応援されちゃったよ、俺」
広樹がそう言って笑っている。
てか、私の立場どうなってるんだ?
広樹がいくら頑張っても、私が広樹を好きにならないと、何にもならないじゃん。
……なんか、私、悪いことしている気分。
でも、私悪くないし!! 何にもしてないし!広樹は…まだ私のこと、好きって思ってるんだよ、ね?
なら、こうして友達としているって、なんかおかしいような…?
「梓! 次はあっち行こう」
そんなことを考えていたら、広樹に手を引っ張られた。
それでコケそうになって、広樹に大丈夫? と心配されながら、私たちはお昼までいろいろなお店を回っていた。