episode1 告白から1ヶ月
あの告白から1ヶ月…
「おっはよー!!」
私の悩みの種が登校してきた。
「おはよー」×たくさん
さすがC組、みんなが1人にちゃんと挨拶する。
「おはよ、梓」
そして、そいつは、私の席まで来て、私の頭に手を置きながらそう言った。
「…おはよ」
私は手を振り払いながら、ダルそうに言ってやった。
「朝から機嫌悪いねー? 相変わらず。何? 低血圧とか?」
広樹が私の顔を覗き込んでくる。
…紛れもなく、あんたのせいだけど!!
「…あのねぇ、挨拶するなら、普通にしてくれない? いちいち触る必要ないでしょ!?」
そう、あの告白の日から、広樹は完全に開き直っているみたいだった。
好きにさせてみせる、って言ったのは、本気らしく、なんだかんだで私にかまってくる。
「何? 照れてんの?」
広樹は、笑顔いっぱいでそう言う。
…なぜそうなるのか…私には理解できない!
「はあ? なぜ照れる必要があるの? ったく、毎朝毎朝!!」
私は広樹に掴みかかりそうになった。
でも…
「はいはい、落ち着いてねー?」
…杏花が間に入ってきた。
「本当に相変わらず仲が良いことで」
杏花はニヤニヤしている。絶対に面白がってるだろ!!
「いや、良くない!!」
私は間髪入れずにつっこんだ。
広樹は、バレー部に所属している。
まあ、それが、とても上手いらしく、先輩の人数が少ないこともあってか、広樹は1年生のうちから試合に出ている。要は、スポーツ万能。
その上、テストの順位ではいつも30位以内には入る頭の良さで、顔も…他の人が言うには、かっこいいらしい。私はそういうの疎くてわからないけど。
だから、広樹はモテる。私にだって、それくらいはわかる。
女子から呼び出されたりするのを見るのも、よくあることだ。
なのに! 何で私のことなんか好きになるのか!? わからないんだけど。
「あ、そうだ、梓。化学のプリントやってきた?」
…と、私の頭がぐるぐるしている時に、広樹が話しかけてきた。
「やってきたけど」
そりゃ、宿題なんだから、やってくるのは当たり前でしょ。
「ここわかった?」
広樹は、プリントを指差してそう言った。
…って言われても、見えないんだけど…
「どこ?」
私は仕方なく、身を乗り出した。
「あー、そこ? 一応できたけど」
「見せて」
はい、と、私はプリントを渡した。
なんだかな…こういう時は、今までと変わらないんだよね、広樹の態度。
だから、余計にわけわかんない…
「ったく、お前ら本当に仲良いな」
はあ? と思って振り返ると、いつのまにか、佑介が来ていた。
佑介は、野球部所属で、期待の新人ってところ。よって、広樹同様、スポーツ万能。
今日も朝練だったのか、制服が少し乱れている。
「だからー…」
私は文句を言おうと思って口を開いた。
「ねえ、見て。 これ、GETしたよ」
…が、佑介は完全スルーした。スルーは佑介の得意技だ。全く…
「また当てたの!? 佑介運良すぎでしょ…」
杏花が、半ば呆れたような、感心したような声を出す。
もう一つの佑介の得意技は、懸賞を当てまくること。強運の持ち主なのだ。
こっちの得意技は、すごく役に立っている。
今まで、そのおかげで私たちは、いろいろなところへ行ったり、いろいろなものをもらったりしてる。
今回も、何か当ててきたみたい。
「おお。今度は何? …ショッピングモール優待券?」
広樹が、佑介の持っているチケットを覗き込んでそう言う。
「えっ!? それってあの、駅前に新しくできたやつだよね? 確か、開店1日前に、抽選で選ばれた人を招待するって言ってたけど…それ!?」
杏花が目を輝かせる。それもそうだよね、杏花はあのショッピングモール超行きたがってたし。
「そう、それ。ちょうど4人までOKのやつだから、みんなで行こうよ」
やったー! と、杏花が横で大はしゃぎする。
私も、杏花ほどではないけど、結構うれしい。ショッピングするの、好きだから。
「俺も行くぜー。ちょうどその日部活休みだし!」
広樹も嬉しそうにそう言った。
そういえば…あの告白の後、みんなでどっか行くの初めてだったな。ってことは、1ヶ月どこにも行ってなかったんだ。
そりゃ、みんなのテンション上がるわけだ。
そんなこんなで、ショッピングモールに行くことが決定した。