降臨と霧の島々
息を吐くたび、空気が粉雪のように散った。季節は山の頂きを白く染め上げ、夜明け前の冷気を纏い始めた頃。
一人の少年が、音もなく空から舞い降りた。パールのような薄い光の羽根をゆったりと広げ、着地したその地は、太古の神が降り立ったという伝説が息づく場所。
「なるほど、ここは天孫降臨の地、高千穂の峰の麓か……」
少年は、人ならざる透き通った瞳で辺りを見渡した。山肌を縫うようにクネクネと続く坂道。そして、谷間や道の脇から絶えず立ち上る、硫黄の匂いを溶かし込んだ濃密な白煙。地獄の釜が息をしているかのような湯気は、この地に根付く人々の熱を象徴しているようだった。
偽りの色と音色の交差
朝の冷たい光の中、遠くからエンジンの音が響いてくる。
まもなく、年季の入った軽トラックが一台、湯気をかき分けるように坂を登ってきた。運転席には、分厚い作業着に身を包んだ職人らしき男。
少年は、車に近づき、彼らの心へと意識を滑り込ませた。
運転手は、硬く奥歯を噛み締め、ステアリングを握る指先が微かに震えている。彼の心には、家族への責任と、期日の遅れに対する焦りが濁った灰色を重ねていた。――「ビートを刻みイライラしている様子」。
助手席の青年は、窓の外の湯気を見つめ、無表情だ。しかし、彼の心には、昨日見た夢の景色がぼんやりと浮かび、故郷を離れた居心地の悪さを薄い水色でチャックしていた。
そして、そのすぐ後ろを走るセダン。ネクタイを締めた初老の男は、ふと、昨日交わした部下との軽口を思い出し、口元に薄紫色の不敵な笑みを浮かべた。過去の栄光を偽りなく信じている、自己称賛という名の金色の仮面。
個々に「偽りの色」は、赤、青、黄、灰色、金色と、ひどくバラバラで混沌としている。
だが、彼らが同じ時間に、同じ道を進み、今日という一日に向かって進む――このバラバラな歯車が噛み合う瞬間。
それは、まるで温泉の湧き出る音、エンジンの規則的な鼓動、そして風に揺れる湯気のざわめきが一つになり、清らかで力強い「音色」を奏でる。
少年は、その調和に、そっと手をかざした。
「ああ、この偽りなき調和。この先、この地で、どんな美しさを魅せてくれるのだろうか?」




