第6部-第98章 若手との衝突
イベントの企画会議は、狭い会議室で行われた。
壁際には模造紙とマジックが並び、若手スタッフの西村が中心となってアイデアを出していた。
「子どもたちが楽しめる縁日風にしましょう! 射的とかヨーヨー釣りとか」
元気のある提案に、周囲は賛同の声を上げる。
浩一も頷きながら聞いていたが、ふと気になる点があった。
「でも……それだと準備や費用が大きすぎるんじゃないか?」
西村は少し眉をひそめ、笑顔を崩さずに答える。
「まあ、そうかもしれませんけど……夢があった方が楽しいじゃないですか」
会議が進むにつれ、浩一は居心地の悪さを覚え始めた。
若者たちの熱気の中で、自分の言葉は場を冷ますばかりに感じる。
しかし現実的な面を考えずに進めれば、失敗は目に見えていた。
「なあ、西村くん。現実を考えないと、当日バタバタして迷惑かけることになるぞ」
強めに口を出した瞬間、空気がぴんと張り詰めた。
西村の目がわずかに鋭くなる。
「……つまり、僕の案は現実的じゃないってことですか?」
「いや、そういうつもりじゃ……」
会議室に重苦しい沈黙が落ちた。
他のスタッフが気まずそうに視線を逸らす。
浩一は心の中で焦った。
――またやってしまった。空気を壊すのは、俺の悪い癖だ。
会議はそのままぎこちない雰囲気で終わった。
帰り際、西村は小さく吐き捨てるように言った。
「やっぱり五十まで引きこもってた人にはわかんないんですね」
その一言は鋭く、浩一の胸に突き刺さった。
背中に重い石を背負ったような感覚を抱えながら、会議室を後にするしかなかった。




