第6部-第92章 翌朝の知らせ
夜明けとともに雨は上がり、窓から射し込む光が部屋を淡く照らしていた。
浩一は目を覚ますと、体の奥にまだ昨日の疲れが残っているのを感じた。
コーヒーを淹れ、ニュースをぼんやり眺めながらも、頭の中では昨日の出来事が繰り返されていた。
そこへ、スマートフォンが震えた。
差出人は施設の山崎からだった。
「昨日助けたお客様、ご家族からお礼の連絡が入りました」
添付されていたメッセージには、感謝の言葉と共に、男性が無事に退院したとの報告が記されていた。
浩一は、じわりと胸が熱くなるのを感じた。
「……よかった」
その一言が、まるで長い間飲み込んでいた石を吐き出したかのように軽かった。
出勤すると、スタッフたちが口々に昨日の対応を称えてくれた。
「やっぱり浩一さんがいると安心します」
「指示が的確でした」
笑顔でそう言われるたび、浩一の中で「50歳ニート」という言葉が少しずつ遠ざかっていくような気がした。
それでも、心の奥では警戒していた。
――浮かれるな。まだ何も終わってはいない。
次に同じような場面が来たときも、迷わず動ける自分でいなければ。
晴れ渡った空の下、浩一はゆっくりと館内のドアを開けた。
今日もまた、新しい一日が始まる。




