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第6部-第74章 思わぬ支え
その日は朝から体調が重かった。
喉が少し痛み、巡回中も足がだるい。
だが、勤務を休むほどではないと自分に言い聞かせ、いつものように制服に袖を通した。
昼過ぎ、エントランスで立哨していると視界がわずかに霞んだ。
ふと気を抜けば、そのまま意識が遠のきそうな感覚に襲われる。
その様子に気づいた山崎が、すぐに近づいてきた。
「浩一さん、顔色やばいですよ。ちょっと休憩しましょう」
遠慮しようとしたが、山崎は腕を軽く引き、事務所まで付き添ってくれた。
事務所に入ると、同僚たちも心配そうに声をかける。
田村が冷たいペットボトルを渡し、「無理して倒れたら意味ないから」と笑った。
その言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。
休憩室で水を飲みながら、浩一はふと思った。
――以前の俺なら、こんなふうに誰かが気づいてくれることもなかった。
自分が人との距離を変えたことで、周りもまた変わっていた。
その日の勤務は早退となったが、不思議と後悔はなかった。
むしろ、自分は一人じゃないという感覚が、心の奥に静かに根を下ろしていた。




