第5部-第56章 勤務を重ねる日々
初現場から一か月、浩一は週四日のシフトに慣れ始めていた。
朝の通勤電車の混雑も、最初は息苦しかったが、今では流れに身を任せられるようになった。
勤務先の商業施設では、常連の店員が笑顔で挨拶してくれるようになり、「おはようございます」と返す自分の声にも少し張りが出てきた。
仕事の流れも分かり、巡回中に見るべきポイントや、無線の使い方も自然に身に付いた。
小さなトラブルに対応できるようになり、先輩からも「落ち着いてるな」と言われることが増えた。
しかし、順調に見える日々の中で、体は少しずつ悲鳴を上げ始めていた。
長時間の立ちっぱなしで、膝や腰に鈍い痛みが走る。
夜勤が続いた翌朝は、布団から起き上がるのに何分もかかることもあった。
休憩室で若い同僚が雑談しているとき、自分だけが座ったまま動けない瞬間がある。
彼らは昼休みも元気に笑い合っているが、浩一は食事を終えるとすぐに目を閉じてしまう。
「大丈夫ですか?」と聞かれるたびに、「歳ですから」と笑ってごまかした。
夜、帰宅すると母が用意した夕食が待っている。
以前は重苦しい沈黙だった食卓も、今では「今日はどうだった?」と短い会話が生まれるようになった。
それでも、体の奥に溜まる疲れは、日ごとに確実に積み重なっていった。




