第4部-第47章 倉庫の面接
面接当日の午後、浩一は母から借りた小さな封筒をポケットに入れた。
中身は交通費と、ほんの少しの小遣い。
外に出るのは何週間ぶりだろうか。
駅までの道のりで吹く風さえ、肌に刺さるように感じた。
倉庫は駅からバスで二十分、工業団地の一角にあった。
灰色の外壁、広い搬入口、そして絶え間なく出入りするトラック。
その活気は、何年も家に閉じこもっていた自分には別世界だった。
受付で名前を告げると、若い事務員が面接室へ案内してくれた。
中には、作業着姿の中年男性が一人、机の向こうに座っていた。
「じゃあ、始めましょうか」
低く短い声に、浩一の喉がひりついた。
面接官は淡々と質問をした。
「勤務は週何日できる?」「夜勤は大丈夫か?」「重い荷物を運べる体力は?」
浩一は正直に答えたつもりだったが、体力や経験についての質問になると、言葉が詰まった。
最後に面接官はメモを見ながら言った。
「正直なところ、今は即戦力が欲しいんだ。体力に自信がないとなると……」
その言葉の続きを待つまでもなく、結果は見えていた。
「検討して、後日ご連絡します」
形だけの言葉を残し、面接は十分ほどで終わった。
帰り道、バス停のベンチに腰を下ろし、灰色の倉庫を振り返った。
そこは、働けば生活が変わるかもしれない場所であり、同時に今の自分には届かない場所でもあった。
ポケットの封筒は、来たときよりも軽く感じられた。




