表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大学受験に失敗して就職もせず、気づけば五十歳ニートになっていた  作者: マルコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/145

第4部-第43章 母の怒り

翌朝、台所から硬い物音が響いた。

 包丁がまな板を叩く音が、やけに乱暴に聞こえる。

 浩一が居間に入ると、母は無言で味噌汁を鍋に移していた。

 その背中は緊張で固まり、いつものゆったりとした動きがなかった。


 「……昨日の催告書のことだけど」

 浩一が切り出すと、母は振り返り、まっすぐ睨みつけてきた。


 「何年も、何をやってきたの?」

 その声には、もう抑えきれない怒りが混じっていた。


 「……仕事もなくて、でも生活は続くし……」

 言い訳の途中で、母が大きな音を立てて鍋を置いた。

 「生活は続く? じゃあ、私が何年も年金とわずかな貯金でやりくりしてきたのは何?

  あんたはただ部屋で時間を潰して、そのくせ借金して……!」


 浩一は言葉を失った。

 母の顔は赤くなり、目尻は涙で光っていた。


 「もう限界よ。私だって年を取ってる。これ以上、あなたの尻拭いなんてできない」

 その一言が、胸に鋭く突き刺さる。

 今まで母が黙って耐えてくれていた時間が、一瞬で崩れ去った気がした。


 食卓に味噌汁が置かれたが、二人とも箸を伸ばさなかった。

 そのまま母は席を立ち、背中を向けた。

 小さな足音が廊下に消え、家の中は再び静寂に包まれた。


 残された味噌汁からは、もう湯気が立っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ