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第4部-第42章 最初の催告書
昼過ぎ、インターホンが鳴った。
母が出ると、郵便局員が書留の封筒を差し出していた。
受け取った母は、その場で差出人の名前を確認し、眉をひそめる。
――カード会社の名前だった。
浩一はその瞬間、血の気が引いた。
母は何も言わず、封筒を持って居間のテーブルに置いた。
その動きはゆっくりで、しかし迷いはなかった。
カッターで封を切る音が、やけに長く響く。
中から出てきたのは、赤い文字で「催告書」と印刷された一枚の紙。
支払い期限と金額、延滞日数がはっきりと記されている。
母は黙ったまま、それを浩一の前に差し出した。
「これ、どういうこと?」
低く抑えた声に、感情が押し殺されているのが分かった。
「……返すつもりだった。でも、間に合わなくて」
自分でも空々しいと言えるほどの言い訳だった。
母は深く息を吐き、紙をテーブルに叩きつけた。
「返すつもり? 何でこんなになるまで放っておいたの?」
浩一は答えられなかった。
催告書の赤い文字が視界に焼き付いたまま、頭が真っ白になった。
その日、夕食はなかった。
母は自室にこもり、ドアは固く閉ざされたままだった。
居間のテーブルの上には、催告書だけが取り残されていた。




