第4部-第31章 支払いと取り立て
母の入院が決まり、一週間分の入院費を前払いで求められた。
通帳の残高では足りず、浩一は迷わずカードのキャッシング枠を使った。
金額は数万円。それでも、支払いが済んだときには妙な安堵感があった。
だが、それは始まりに過ぎなかった。
入院中の食費や薬代、さらに家の光熱費は容赦なく積み上がっていく。
返済日が来ても払えず、カード会社からの督促状が郵便受けに届くようになった。
封筒には赤い文字で「重要」「至急」と書かれている。
最初は無視していたが、次第に内容は厳しくなっていった。
「このままでは法的措置に移行します」という文面を読んだとき、手が震えた。
電話もかかってくるようになり、最初は無言で切っていたが、ある日ついに出てしまった。
低い声の男が名乗り、淡々と金額と期日を告げた。
「〇日までにお支払いが確認できない場合、延滞情報が登録されます」
その意味を深く理解していなくても、良くないことだという直感だけはあった。
浩一は「……わかりました」と答えるしかなかった。
電話を切ったあと、胸の奥に重い鉛が沈んだような感覚が残った。
その日から、ポストを開けるのが怖くなった。
ガスや水道の検針票すら、請求書に見えて心臓が跳ねる。
病院からは、さらに入院が長引くとの連絡があった。
母の病室に行き、「なんとかなる」と笑ってみせたが、手の中の封筒の重みが嘘を暴いていた。
夜、こたつで一人、明細書を広げる。
数字の羅列は、もはや自分の力では消せないほど膨らんでいた。
その数字の奥に、暗い未来がぼんやりと浮かび上がっていた。




