表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大学受験に失敗して就職もせず、気づけば五十歳ニートになっていた  作者: マルコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/145

第3部-第18章 就職を諦めた日

三十歳になる数か月前、母が町の求人情報誌を手渡してきた。

「この工場、経験不問って書いてあるよ。正社員だって」

 半ば押し出されるように、浩一は履歴書を書いた。

 ペンを持つ手は重く、志望動機の欄は空白のまま何度も止まった。

 結局、「社会人として成長したい」というありきたりな言葉で埋めた。


 面接会場は、小さな部品工場だった。

 作業服姿の面接官は履歴書に目を通すと、眉をひそめた。

「……二十九歳、職歴なし、ですか」

「はい……」

「うーん……うちは体力仕事だし、若い子が多いんですよ」

 その口調は柔らかかったが、すでに答えは決まっているのがわかった。

 形ばかりの質問が二つ三つ続き、面接は十分足らずで終わった。


 帰り道、春先の風がやけに冷たく感じられた。

 家に着くと、母が「どうだった?」と聞いた。

「……無理だと思う」

 そう答えると、母は少しだけ唇を噛み、それ以上何も言わなかった。


 数日後、届いた封筒には「今回はご希望に沿えません」という定型文。

 その紙を机の引き出しに突っ込み、浩一は深く息を吐いた。

 ――もういい。どうせまた同じだ。

 その瞬間、心のどこかで何かが音を立てて折れた。


 翌日から、求人情報誌を開くことはなくなった。

 朝は昼にずれ込み、昼は夜に、夜は明け方に。

 部屋の中の時計の針だけが淡々と動き、外の世界の時間は完全に切り離された。


 パソコンの画面に映るオンラインゲームのキャラクターは、今日も元気に動き回っている。

 その中でだけは、自分はまだ何者かでいられる。

 現実での役割を失った浩一にとって、それが唯一の「生きている証」になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ