第7部-第113章 地域清掃の日
日曜日の朝八時。
まだ肌寒さの残る空気の中、町内の人々がぞろぞろと集まってきた。
今日は地域清掃の日。役員として参加する浩一は、軍手をはめながら少し緊張していた。
「浩一さん、おはようございます」
声をかけてきたのは、近所の主婦や子ども連れの父親たちだった。
かつては視線を避けるばかりだった人たちと、今は自然に挨拶を交わしている。
それだけで胸の奥が温かくなった。
清掃が始まると、浩一は率先して草刈りに取りかかった。
雑草に覆われた歩道を鎌で刈り、熊手でまとめていく。
汗が額を流れるが、不思議と苦にならない。
隣で一緒に作業していた中学生が「浩一さん、力持ちだね!」と笑った。
途中、ゴミ袋が足りなくなった場面では、浩一がすぐに倉庫へ走った。
「助かりました!」と感謝され、胸にじんと響くものがあった。
数時間後、町は見違えるほどきれいになった。
全員が集まって飲み物を受け取る。
西村が声を張り上げた。
「今日は浩一さんのおかげで作業がスムーズに進みました。ありがとうございました!」
拍手が起こる。
浩一は思わずうつむいたが、頬が熱くなるのを止められなかった。
――五十歳の俺が、こうして人前で称えられている。
帰り道、軍手を外しながら思った。
「母さんにも、この話をしてやろう」
心のどこかで、母に“少し誇れる自分”を見せたいと思ったのだ。




