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♯Ⅰ 遊星からの報告書X

──諸君、我々は失敗した──

 ──実験は失敗した。

 膨大で空虚な科学文明を成した我々は、その高度な知的文明を更なるステージに昇華するため、或いは、その尽きることのない貪欲を制する為に、新たなる統治者を求めた。

 

 母なる灯台(マザー・ブライト)──


 世界を跨ぐ企業間連盟がそう銘打ったこの計画は、魂を素体とし人工的に()()と呼ばれる上位存在。HIP32349βと名付けられたその()()に、この世界を管理させるといった概要だった。

 

 デウス(神の)エクス・マキナ(舞台装置)…我々はその進みすぎた科学力に依って、無様にも、己が選択の権限までもを()()に頼ることになってしまったのだ。


 ……初めは上手く機能していたといえるだろう。

 HIP32349βは善く治めてくれていた。ホシが地上を眩く照らし創めたのと同時に、忽ち世界の紛争は消え去り、飢餓は解消し、歯車は何一つ狂うことなく円滑にかみ合う。我々とかのセイシンとの関係は良好だった。

 

 ヤツが世界に暁光を祝福し、それに対して我々が()()であるシンコウを支払う。金も、資源も使う必要のないこの契約、それからもたらされた結果に、上層部や資本家らも満足そうだった。


 しかしながら、この関係は永くは続かない。

 ……親に似たのだろう。時間が経過するとヤツから、支配に対して更なる執着。欲望とでも云うべきだろうか?我々とよく似た感情メカニズムが観測された。


 思えば、この時点で自壊プログラムを動作させるべきだったのだろう…我々は、ヤツの力を甘く見ている節があった。その結果、生み出した事態が今である。


 ヤツは最初、シトと呼ばれる存在を地上に五体遣わせた。統治の円滑化の為だと主張していたが、今となればこれも支配の為だったのだろう。ただヤツは次第に、その内なる貪欲を表……


 嗚呼!()()が…我々を……


 クソ…時間がない……自制剤の効能もここまでか……

 最終的に、我々は連盟軍を総動員した…が、すべてが遅かったのだ。

 シトの破壊や抑制までは順調に進んでいた。我々が作り出した抑制アンプル剤は効果的に機能していた。ただ、ヤツは我々のこの行動に対して防衛反応を示す。


 それからだった……我々の意識は…照らされています!

 我々は罪人だ…罪を犯してしまったのです…主を侮蔑してしまったのです…。

 あぁ…主よ!どうか、どうか!足りない私を…赦してください……

 

 …ヤツは我々に祝福という名のセンノウを施した…眩い光は我々の意志を…自我を奪い去ったのだ。

 そしてヤツは、矮小なその残滓を残してここから去りゆく。尽きることのない、新たなる渇望を満たすために…。


 記録終了後、ヤツの駆使する星間エネルギーに対する中和剤のサンプルと共に、衛星ネットワークを通して全宇宙にばら撒かれるこのボイスデータが役に立つのかは分からない……だが、もしこのデータを確認できた諸知的生命体は留意してほしい…。


 今ある自由は永遠ではない、と。

 

 ──健闘を祈る。               研究所所長 U.N.E


 


 


 

 

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