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槍の又左衛門 前田利家が貫いた乱世の幻影と能登の未来  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
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第8話:赤母衣衆(続き) 第14章:三河の風

1556年、三河への道

三河の道は、風が冷たい。

織田信長が美濃を固めた後、三河の松平元康(後の徳川家康)の動向を探る任務が始まった。俺、前田利家は、赤母衣衆の頭として先鋒を任され、槍を手に持って馬に跨がってた。18か19歳の俺は、桶狭間、美濃、小豪族掃討、美濃残党掃討で戦い抜き、「槍の又左衛門」の名が信長の軍で知れ渡った。背も高く、力もついて、まつとの結婚が俺を支えてる。

「利家! 準備できたか!」

声が飛んできた。信長だ。21か22歳のあいつは、馬上でニヤニヤしてる。背は低めだけど、目がギラギラしてて、俺の隣に並んだ。

「当たり前だ。槍があれば、俺はいつでも突っ込める。お前、松平元康って何だ?」

俺がニヤッと笑うと、信長がニヤリと笑った。

「今川の傘下の若造だ。三河でうるせえ動きをしてる。お前、赤母衣衆で様子見てこい」

「面白えじゃん。槍で突っ込んでやるよ。どんな敵でも貫くぜ」

信長が目を輝かせて、俺の肩を叩いた。

「よし! お前、先鋒で松平の動きを探れ。槍の又左衛門の名を三河にも響かせろ」

「当たり前だ。俺、信長の為に突くぜ」

俺が笑うと、信長が笑い転げた。美濃残党掃討の勢いを、三河任務でも続けるつもりだ。

三河の松平元康は、今川義元の影響下にある若き領主だ。信長は尾張と美濃を固めた後、三河の動向を気にし始め、俺に偵察を命じた。俺は赤母衣衆を率いて、信長の先鋒として突っ込む。母ちゃんとの「生きて帰る」約束と、まつの「私を置いて死なないで」が、俺の胸に響いてる。

まつの見送りと支え

その朝、俺はまつに見送られた。

城の門前で、まつが静かに立ってた。17か18歳のまつは、小柄だけど、目は澄んでて、俺を見つめてる。

「利家、気をつけてね」

まつが静かに言う。俺は馬から降りて、まつに近づいた。

「当たり前だ。俺、死なねえよ。お前が待ってるからな」

俺が笑うと、まつが小さく笑った。でも、目が少し潤んでる。

「美濃でも、小豪族でも、いつも先陣だね。今度は三河か。私、怖いよ」

まつが俺の手を取る。俺はまつの手を握り返して、ニヤッと笑った。

「怖くねえよ。槍があれば、俺は負けねえ。お前が傷薬くれたから、平気だ」

まつが涙をこらえて、小さな袋を差し出した。

「なら、これ持ってて。干し柿と傷薬だよ。お前、無茶するから」

俺は袋を受け取って、ニヤけた。

「またか。ありがとよ、まつ。お前、ほんと頼もしいな」

まつが笑って、俺の胸に顔を寄せた。

「生きて帰ってよ。それが約束だよ。私、お前が帰るの待ってるから」

「当たり前だ。俺、まつを守る為に戦うんだ」

俺はまつの頭を撫でて、馬に跨がった。まつの刺繍した赤母衣の布を、俺は槍に結んで持ってた。まつが見送る中、俺は信長の軍と共に出発した。

三河任務の開始

三河の国境に着いたのは、数日後だ。

松平元康の領地に近づき、信長は俺に偵察を命じた。俺は赤母衣衆を率いて、三河の様子を探りに出た。

「利家! 突っ込め!」

信長が叫ぶ。俺は赤い母衣を背負い、槍を手に持って、馬を駆けた。

「うおおおお!」

三河の森に突っ込み、俺は槍を構えた。松平の斥候が俺に気づいて襲いかかってきた。俺は槍を振って、突いて、ぶっ倒した。血が飛び散り、草に混じる。森の狭い道で、俺の心臓がバクバクした。

「利家、右だ!」

藤兵衛が叫ぶ。俺は右に槍を振って、敵を突き刺した。赤母衣衆が俺に続いて突っ込み、斥候を蹴散らした。俺は松平の動きを探りつつ、信長に報告する為の情報を集めた。

任務は短時間で終わった。松平の兵は俺たちを見て逃げ、俺は信長に報告する手がかりを得た。俺は血と泥にまみれて、槍を握ってた。

影の新たな示唆

その夜、野営地で寝た。

任務の疲れで、俺はすぐ眠りに落ちた。

でも、夢を見た。

暗い森だ。俺が槍を持って立ってる。目の前に、黒い影。兜をかぶった武将が、俺と同じ槍を持ってる。顔は見えねえ。兜の下は闇しかねえ。

「お前は誰だ?」

俺が聞くと、そいつが低い声で答えた。

「お前が貫いたものだ。お前が守るものだ。絆は試される。貫く先に何を見る?」

今回は、影の声に信長の響きが強く、まつの目が鮮明に浮かんだ。影が俺の槍を指し、まつの刺繍した赤母衣を手に持つ姿がはっきりした。影が一瞬、信長の笑顔に変わった気がした。

目が覚めた時、心臓がバクバクしてた。汗で全身が濡れてた。藤兵衛の寝息が、静寂の中で響いてた。

俺は拳を握った。あの影が何だか分からねえ。でも、三河で松平を探り、まつを想って戦った俺は、試練が来ても負けねえ。槍とまつを手に持つ。それが俺の道だ。



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