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槍の又左衛門 前田利家が貫いた乱世の幻影と能登の未来  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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第8話:赤母衣衆(続き) 第13章:試練の風

1556年、那古野城

尾張の那古野城は、静かな緊張感に包まれてる。

美濃の斎藤龍興の残党を掃討し、織田信長の支配が尾張と美濃に広がった。俺、前田利家は、城の裏庭で槍を手に持ってた。18か19歳の俺は、赤母衣衆の頭として桶狭間、美濃、小豪族掃討、美濃残党掃討で戦い抜き、「槍の又左衛門」の名が信長の軍で知れ渡った。背も高く、力もついて、まつとの結婚が俺を支えてる。

「利家! また槍か!」

声が飛んできた。佐々木藤兵衛だ。30歳くらいのゴツい男で、美濃残党掃討でも一緒に戦った足軽頭。俺は槍を地面に突き刺して、ニヤッと笑った。

「当たり前だ。槍がなけりゃ、俺じゃねえよ。お前、何だ?」

藤兵衛が笑って、近づいてきた。

「信長様が呼んでる。美濃を固めた後の話だ。お前、赤母衣衆の頭なんだから、さっさと行け」

「美濃を固めた後か。面白えじゃん。すぐ行くよ」

俺が槍を肩に担ぐと、藤兵衛がニヤけた。

「まつに怒られるぞ。毎日槍ばっかりで」

「まつは分かってるよ。槍が俺の命だ」

俺が笑うと、藤兵衛が肩をすくめて去った。

美濃残党掃討で、信長は尾張と美濃の支配を強めた。斎藤龍興は逃げたままだけど、信長は次の戦を見据えてる。俺は赤母衣衆の頭として、信長の先鋒を任されてる。戦場で槍を振るのが俺の生き方だけど、まつとの新婚生活も大事だ。母ちゃんとの「生きて帰る」約束と、まつの「私を置いて死なないで」が、俺の胸に響いてる。

まつの日常と新たな絆

その日の昼過ぎ、俺は部屋に戻った。

まつが小さな卓で飯を用意してた。17か18歳のまつは、静かな強さがあって、俺の帰りをいつも笑顔で迎える。今日は小さな布を手に持って、ニコニコしてる。

「利家、おかえり。美濃残党掃討、お疲れ様」

まつが笑う。俺は槍を壁に立てかけて、座った。

「当たり前だ。俺、槍で突きまくったぜ。お前、その布何だ?」

まつが目を細めて、布を俺に差し出した。

「見てみて。お前が戦ってる間に、私、また作ったの」

俺は布を見ると、まつの刺繍した赤母衣の模様がさらに細かく仕上がってた。俺はニヤッと笑った。

「まつ、お前、腕上げたな。赤母衣衆の印がこんなに立派かよ」

まつがクスクス笑って、頷いた。

「夫婦だもの。お前が赤母衣衆の頭なら、私も頑張る。お前が戦場で使うなら、私、もっと作るよ」

俺は布を手に持って、まつの頭を撫でた。

「お前、ほんと頼もしいな。戦場でこれ見たら、元気出るよ」

まつが笑って、俺の隣に座った。

「お前が戦うなら、私が支える。傷はどう?」

俺は腕を見せた。美濃残党掃討でかすった傷が、まだ赤い。まつが傷薬を取り出して、丁寧に塗ってくれた。

「痛くねえよ。でも、まつがこうやってくれると、癒えるな」

「当たり前よ。お前、無茶するんだから、私がちゃんとしないと」

まつの手が温かくて、俺は目を閉じた。まつの新たな絆が、俺の心を落ち着かせる。

信長の新たな試練

その夕方、信長の座敷に呼ばれた。

信長はニヤニヤしながら、俺を見てた。平手政秀と藤兵衛もいて、信長の話を聞いてる。

「利家、美濃残党掃討、見事だったぜ。赤母衣衆の頭として、俺の期待以上だ」

信長が笑う。俺はニヤッと笑って、答えた。

「お前の奇策がなけりゃ、俺の槍も活きねえよ。美濃固めて、次は何だ?」

信長が目を輝かせて、言った。

「三河だ。松平元康がうるせえ。お前、赤母衣衆で様子見てこい」

「三河か。面白えじゃん。槍で突っ込んでやるよ」

俺が胸を張ると、平手が渋い顔で口を開いた。

「信長様、松平元康は今川の傘下です。慎重に――」

「うるせえよ、ジジイ! 俺のやり方で勝つ! 利家、どうだ?」

信長が俺を見る。俺はニヤけた。

「当たり前だ。お前と一緒なら、どんな敵でもぶっ倒す」

信長が笑い転げて、俺の肩を叩いた。

「よし! お前、まつと夫婦になって落ち着いたかと思ったが、やっぱりやんちゃだな」

「落ち着くかよ。槍持ってる方が俺らしいだろ」

俺と信長は笑い合った。三河への任務が、俺の次の試練だ。

影の新たな問い

その夜、部屋に戻って寝た。

まつが隣で寝息を立ててる。俺は美濃残党掃討の疲れと新たな命で、眠りに落ちた。

でも、夢を見た。

暗い森だ。俺が槍を持って立ってる。目の前に、黒い影。兜をかぶった武将が、俺と同じ槍を持ってる。顔は見えねえ。兜の下は闇しかねえ。

「お前は誰だ?」

俺が聞くと、そいつが低い声で答えた。

「お前が貫いたものだ。お前が守るものだ。絆は試される。貫く先に何を見る?」

今回は、影の声に信長の響きが強く、まつの目が鮮明に浮かんだ。影が俺の槍を指し、まつの刺繍した赤母衣を手に持つ姿がはっきりした。

目が覚めた時、心臓がバクバクしてた。汗で全身が濡れてた。まつの寝息が、静寂の中で響いてた。

俺は拳を握った。あの影が何だか分からねえ。でも、美濃残党を貫き、まつと絆を深めた俺は、三河でも負けねえ。槍とまつを手に持つ。それが俺の道だ。



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