第8話:赤母衣衆(続き) 第11章:美濃の残党
1556年、美濃への道
美濃の山道は、霧に覆われてる。
織田信長が尾張と美濃を固めた後、斎藤龍興の残党を掃討する戦が始まった。俺、前田利家は、赤母衣衆の頭として先鋒を任され、槍を手に持って馬に跨がってた。18か19歳の俺は、桶狭間、美濃、小豪族掃討で戦い抜き、「槍の又左衛門」の名が信長の軍で知れ渡った。背も高く、力もついて、まつとの結婚が俺を支えてる。
「利家! 準備できたか!」
声が飛んできた。信長だ。21か22歳のあいつは、馬上でニヤニヤしてる。背は低めだけど、目がギラギラしてて、俺の隣に並んだ。
「当たり前だ。槍があれば、俺はいつでも突っ込める。お前、斎藤の残党って何だ?」
俺がニヤッと笑うと、信長がニヤリと笑った。
「美濃の負け犬どもだ。斎藤龍興が逃げた後、散らばってうるせえ。お前、赤母衣衆でぶっ潰せ」
「面白えじゃん。槍で突っ込んでやるよ。どんな敵でも貫くぜ」
信長が目を輝かせて、俺の肩を叩いた。
「よし! お前、先鋒で残党の首を取れ。槍の又左衛門の名を美濃に刻め」
「当たり前だ。俺、信長の為に突くぜ」
俺が笑うと、信長が笑い転げた。小豪族掃討の勢いを、美濃残党掃討でも続けるつもりだ。
美濃の残党は、斎藤龍興の敗残兵だ。数は少ないが、山に潜んでゲリラ戦を仕掛けてくる。信長は尾張と美濃を完全に掌握する為に、俺に残党掃討を命じた。俺は赤母衣衆を率いて、信長の先鋒として突っ込む。母ちゃんとの「生きて帰る」約束と、まつの「私を置いて死なないで」が、俺の胸に響いてる。
まつの見送りと絆
その朝、俺はまつに見送られた。
城の門前で、まつが静かに立ってた。17か18歳のまつは、小柄だけど、目は澄んでて、俺を見つめてる。
「利家、気をつけてね」
まつが静かに言う。俺は馬から降りて、まつに近づいた。
「当たり前だ。俺、死なねえよ。お前が待ってるからな」
俺が笑うと、まつが小さく笑った。でも、目が少し潤んでる。
「美濃でも、小豪族でも、お前、いつも先陣だね。私、怖いよ」
まつが俺の手を取る。俺はまつの手を握り返して、ニヤッと笑った。
「怖くねえよ。槍があれば、俺は負けねえ。お前が傷薬くれたから、平気だ」
まつが涙をこらえて、小さな袋を差し出した。
「なら、これ持ってて。干し柿と傷薬だよ。お前、無茶するから」
俺は袋を受け取って、ニヤけた。
「またか。ありがとよ、まつ。お前、ほんと頼もしいな」
まつが笑って、俺の胸に顔を寄せた。
「生きて帰ってよ。それが約束だよ。私、お前が帰るの待ってるから」
「当たり前だ。俺、まつを守る為に戦うんだ」
俺はまつの頭を撫でて、馬に跨がった。まつが見送る中、俺は信長の軍と共に出発した。まつの刺繍した赤母衣の布を、俺は槍に結んで持ってた。
美濃残党掃討の開始
美濃の山中に着いたのは、数日後だ。
残党が潜む森に、信長は奇策で包囲を敷いた。俺は赤母衣衆を率いて、先陣を切った。
「利家! 突っ込め!」
信長が叫ぶ。俺は赤い母衣を背負い、槍を手に持って、馬を駆けた。
「うおおおお!」
森の奥に突っ込み、俺は槍を振った。残党の兵が木々の間から襲いかかってきた。俺は槍を突いて、ぶっ倒した。血が飛び散り、葉に混じる。山の狭い戦場に、俺の心臓がバクバクした。
「利家、左だ!」
藤兵衛が叫ぶ。俺は左に槍を振って、敵を突き刺した。赤母衣衆が俺に続いて突っ込み、残党が混乱し始めた。信長の奇襲が効いて、敵の隠れ家が崩れる。俺は槍を振るい続け、残党の頭を狙った。
戦いは短時間で終わった。残党の頭は俺の槍に貫かれ、信長が勝ちを収めた。俺は血と泥にまみれて、槍を握ってた。
影の新たな問い
その夜、野営地で寝た。
戦の疲れで、俺はすぐ眠りに落ちた。
でも、夢を見た。
暗い森だ。俺が槍を持って立ってる。目の前に、黒い影。兜をかぶった武将が、俺と同じ槍を持ってる。顔は見えねえ。兜の下は闇しかねえ。
「お前は誰だ?」
俺が聞くと、そいつが低い声で答えた。
「お前が貫いたものだ。お前が守るものだ。絆は試される。貫く先に何を見る?」
今回は、影の声に信長の響きが混じり、まつの目が浮かんだ。影が一瞬、まつの刺繍した赤母衣を手に持った気がした。
目が覚めた時、心臓がバクバクしてた。汗で全身が濡れてた。藤兵衛の寝息が、静寂の中で響いてた。
俺は拳を握った。あの影が何だか分からねえ。でも、美濃残党を貫き、まつを想って戦った俺は、試練が来ても負けねえ。槍とまつを手に持つ。それが俺の道だ。