第8話：赤母衣衆（続き） 第10章：新たな風
1556年、那古野城
尾張の那古野城は、静かな活気に満ちてる。
小豪族掃討戦が終わり、織田信長の支配が尾張に根付いた。俺、前田利家は、城の裏庭で槍を手に持ってた。18か19歳の俺は、赤母衣衆の頭として桶狭間、美濃、小豪族掃討で戦い抜き、「槍の又左衛門」の名が信長の軍で知れ渡った。背も高く、力もついて、まつとの結婚が俺を支えてる。
「利家！ また槍か！」
声が飛んできた。佐々木藤兵衛だ。30歳くらいのゴツい男で、小豪族掃討でも一緒に戦った足軽頭。俺は槍を地面に突き刺して、ニヤッと笑った。
「当たり前だ。槍がなけりゃ、俺じゃねえよ。お前、何だ？」
藤兵衛が笑って、近づいてきた。
「信長様が呼んでる。尾張を固めた後の話だ。お前、赤母衣衆の頭なんだから、さっさと行け」
「尾張を固めた後か。面白えじゃん。すぐ行くよ」
俺が槍を肩に担ぐと、藤兵衛がニヤけた。
「まつに怒られるぞ。毎日槍ばっかりで」
「まつは分かってるよ。槍が俺の命だ」
俺が笑うと、藤兵衛が肩をすくめて去った。
小豪族掃討で、信長は尾張を完全に掌握した。美濃の足がかりもある今、信長は次の戦を見据えてる。俺は赤母衣衆の頭として、信長の先鋒を任されてる。戦場で槍を振るのが俺の生き方だけど、まつとの新婚生活も大事だ。母ちゃんとの「生きて帰る」約束と、まつの「私を置いて死なないで」が、俺の胸に響いてる。
まつの日常と成長
その日の昼過ぎ、俺は部屋に戻った。
まつが小さな卓で飯を用意してた。17か18歳のまつは、静かな強さがあって、俺の帰りをいつも笑顔で迎える。今日は小さな包みを手に持って、ニコニコしてる。
「利家、おかえり。小豪族掃討、お疲れ様」
まつが笑う。俺は槍を壁に立てかけて、座った。
「当たり前だ。俺、槍で突きまくったぜ。お前、その包み何だ？」
まつが目を細めて、包みを俺に差し出した。
「開けてみて。お前が戦ってる間に、私、頑張ったの」
俺は包みを開けると、中に小さな布が入ってた。赤い母衣の模様が刺繍されてる。俺はニヤッと笑った。
「まつ、お前、これ作ったのか？ 赤母衣衆の印じゃねえか」
まつがクスクス笑って、頷いた。
「夫婦だもの。お前が赤母衣衆の頭なら、私も何かしたくて。戦場で使ってよ」
俺は布を手に持って、まつの頭を撫でた。
「お前、ほんと頼もしいな。戦場でこれ見たら、元気出るよ」
まつが笑って、俺の隣に座った。
「お前が戦うなら、私が支える。傷はどう？」
俺は腕を見せた。小豪族掃討でかすった傷が、まだ赤い。まつが傷薬を取り出して、丁寧に塗ってくれた。
「痛くねえよ。でも、まつがこうやってくれると、癒えるな」
「当たり前よ。お前、無茶するんだから、私がちゃんとしないと」
まつの手が温かくて、俺は目を閉じた。まつの成長が、俺の心を落ち着かせる。
信長の新たな企み
その夕方、信長の座敷に呼ばれた。
信長はニヤニヤしながら、俺を見てた。平手政秀と藤兵衛もいて、信長の話を聞いてる。
「利家、小豪族掃討、見事だったぜ。赤母衣衆の頭として、俺の期待以上だ」
信長が笑う。俺はニヤッと笑って、答えた。
「お前の奇策がなけりゃ、俺の槍も活きねえよ。尾張固めて、次は何だ？」
信長が目を輝かせて、言った。
「美濃を完全に取る。斎藤の残党がまだうるせえ。お前、赤母衣衆で片付けろ」
「面白えじゃん。槍で突っ込んでやるよ」
俺が胸を張ると、平手が渋い顔で口を開いた。
「信長様、美濃の残党は散らばってます。慎重に――」
「うるせえよ、ジジイ！ 俺のやり方で勝つ！ 利家、どうだ？」
信長が俺を見る。俺はニヤけた。
「当たり前だ。お前と一緒なら、どんな敵でもぶっ倒す」
信長が笑い転げて、俺の肩を叩いた。
「よし！ お前、まつと夫婦になって落ち着いたかと思ったが、やっぱりやんちゃだな」
「落ち着くかよ。槍持ってる方が俺らしいだろ」
俺と信長は笑い合った。美濃の残党掃討が、俺の次の試練だ。
影の進展
その夜、部屋に戻って寝た。
まつが隣で寝息を立ててる。俺は小豪族掃討の疲れと新たな命で、眠りに落ちた。
でも、夢を見た。
暗い森だ。俺が槍を持って立ってる。目の前に、黒い影。兜をかぶった武将が、俺と同じ槍を持ってる。顔は見えねえ。兜の下は闇しかねえ。
「お前は誰だ？」
俺が聞くと、そいつが低い声で答えた。
「お前が貫いたものだ。お前が守るものだ。絆は試される。貫く先に何を見る？」
今回は、影の姿が少しはっきりした。兜の下に、まつの目が浮かび、信長の笑い声が響いた気がした。
目が覚めた時、心臓がバクバクしてた。汗で全身が濡れてた。まつの寝息が、静寂の中で響いてた。
俺は拳を握った。あの影が何だか分からねえ。でも、小豪族を貫き、まつと絆を深めた俺は、次の戦でも負けねえ。槍とまつを手に持つ。それが俺の道だ。
