表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍の又左衛門 前田利家が貫いた乱世の幻影と能登の未来  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/89

第8話:赤母衣衆(続き) 第7章:試練の槍

1556年、那古野城

尾張の那古野城は、勝利の余韻が冷めやらねえ。

美濃の斎藤龍興を討つ戦が終わり、織田信長の名が尾張と美濃に響き渡ってる。俺、前田利家は、城の裏庭で槍を手に持ってた。18か19歳の俺は、赤母衣衆の頭として桶狭間と美濃で戦い抜き、「槍の又左衛門」の名が信長の軍で知れ渡った。背も高く、力もついて、まつとの結婚が俺を支えてる。

「利家! また槍か!」

声が飛んできた。佐々木藤兵衛だ。30歳くらいのゴツい男で、美濃でも一緒に戦った足軽頭。俺は槍を地面に突き刺して、ニヤッと笑った。

「当たり前だ。槍がなけりゃ、俺じゃねえよ。お前、何だ?」

藤兵衛が笑って、近づいてきた。

「信長様が呼んでる。美濃を固める話だ。お前、赤母衣衆の頭なんだから、さっさと行け」

「美濃を固めるか。面白えじゃん。すぐ行くよ」

俺が槍を肩に担ぐと、藤兵衛がニヤけた。

「まつに怒られるぞ。毎日槍ばっかりで」

「まつは分かってるよ。槍が俺の命だ」

俺が笑うと、藤兵衛が肩をすくめて去った。

美濃戦の勝ちで、信長は尾張と美濃の足がかりを作った。斎藤龍興は逃げたけど、信長は次の戦を見据えてる。俺は赤母衣衆の頭として、信長の先鋒を任されてる。戦場で槍を振るのが俺の生き方だけど、まつとの新婚生活も大事だ。母ちゃんとの「生きて帰る」約束と、まつの「私を置いて死なないで」が、俺の胸に響いてる。

まつの日常と不安

その日の昼過ぎ、俺は部屋に戻った。

まつが小さな卓で飯を用意してた。17か18歳のまつは、静かな強さがあって、俺の帰りをいつも笑顔で迎える。今日は干し柿を手に持って、ニコニコしてる。

「利家、おかえり。美濃から帰ってきて、また槍?」

まつが笑う。俺は槍を壁に立てかけて、座った。

「当たり前だ。信長が美濃を固めるって。俺、赤母衣衆の頭だからな」

まつが目を細めて、干し柿を俺に差し出した。

「そうね。お前、槍の又左衛門だもの。でも、ちょっと休んでよ。これ食べて」

俺は干し柿を受け取って、ニヤッと笑った。

「まつ、お前、ほんと気遣い上手だな。戦場でも助かったよ」

まつがクスクス笑って、俺の隣に座った。

「夫婦だもの。お前が戦うなら、私が支える。でも、利家、また戦に行くの?」

俺は一瞬目を伏せて、答えた。

「分からねえよ。信長が次を企んでる。俺、槍で突っ込むだけだ」

まつが小さくため息をついて、俺の手を取った。

「美濃でも危なかったでしょ? お前、毎回先陣で、私、怖いよ」

まつの声が震える。俺はまつの手を握り返して、ニヤッと笑った。

「怖くねえよ。槍があれば、俺は負けねえ。お前が待ってるから、死なねえよ」

まつが笑って、頷いた。

「なら、約束守ってよ。お前が戦うのはいいけど、私を置いて死なないで」

「当たり前だ。俺、まつを守る為に強くなるんだ」

まつの言葉に、俺の胸が熱くなった。夫婦ってのは、こうやって支え合うもんなんだな。

信長の新たな試練

その夕方、信長の座敷に呼ばれた。

信長はニヤニヤしながら、俺を見てた。平手政秀と藤兵衛もいて、信長の話を聞いてる。

「利家、美濃での槍、見事だったぜ。赤母衣衆の頭として、俺の期待以上だ」

信長が笑う。俺はニヤッと笑って、答えた。

「お前の奇策がなけりゃ、俺の槍も活きねえよ。美濃固めて、次は何だ?」

信長が目を輝かせて、言った。

「尾張と美濃を固めたら、次は近隣の小豪族だ。反抗的な奴らを片付ける。お前、赤母衣衆で掃討しろ」

「面白えじゃん。槍で突っ込んでやるよ」

俺が胸を張ると、平手が渋い顔で口を開いた。

「信長様、小豪族は数が多いです。慎重に――」

「うるせえよ、ジジイ! 俺のやり方で勝つ! 利家、どうだ?」

信長が俺を見る。俺はニヤけた。

「当たり前だ。お前と一緒なら、どんな敵でもぶっ倒す」

信長が笑い転げて、俺の肩を叩いた。

「よし! お前、まつと夫婦になって落ち着いたかと思ったが、やっぱりやんちゃだな」

「落ち着くかよ。槍持ってる方が俺らしいだろ」

俺と信長は笑い合った。小豪族掃討が、俺の次の試練だ。

影の進展

その夜、部屋に戻って寝た。

まつが隣で寝息を立ててる。俺は美濃の疲れと新たな命で、眠りに落ちた。

でも、夢を見た。

暗い森だ。俺が槍を持って立ってる。目の前に、黒い影。兜をかぶった武将が、俺と同じ槍を持ってる。顔は見えねえ。兜の下は闇しかねえ。

「お前は誰だ?」

俺が聞くと、そいつが低い声で答えた。

「お前が貫いたものだ。お前が守るものだ。絆は試される。次は何を貫く?」

今回は、影の声が少し違った。まつの声が混じってる気がした。

目が覚めた時、心臓がバクバクしてた。汗で全身が濡れてた。まつの寝息が、静寂の中で響いてた。

俺は拳を握った。あの影が何だか分からねえ。でも、美濃で信長と勝ち、まつと絆を深めた俺は、次の試練でも負けねえ。槍とまつを手に持つ。それが俺の道だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ