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第五六話

森の砦で戦術家クロノスを倒した勇者一行――レオン、ガルド、ミリア、そしてリリィ――は、帝都アルテミスへと戻ってきた。クロノスの最後の言葉「お前はこちら側の存在だ、人とは相容れない存在だ」が一行の心に重く響き、特にリリィの正体に関する疑問が深まっていた。

帝都に到着した一行は、王都であてがわれた宿屋に戻り、休息を取ることにした。

しかし、クロノスの言葉の真意を探るため、レオンとミリアは行動を起こすことを決めた。

宿屋の部屋で、リリィがベッドに座り、無表情のまま狩猟刀を手に持っていた。彼女の紫の瞳には、微かな戸惑いが浮かんでいた。ミリアが

「リリィちゃん、今日はゆっくり休んでね。私とレオンで、クロノスの言葉について調べてくるから」と優しく笑うと、リリィが「…ミリア、ありがとう」と呟き、無表情のまま頷いた。

ガルドが「リリィ、俺がここにいるから安心しろ。なんかあったら、すぐにぶっ倒してやるぜ!」と笑うと、リリィが「…ガルド、嬉しい」と呟き、小さな笑みを浮かべた。


レオンが「ミリア、帝都の魔法研究施設に行くぞ。クロノスの言葉…リリィがホムンクルスか、そのハーフかもしれないという俺たちの推測を確かめる必要がある」と呟き、剣を手に持った。

ミリアが「うん、リリィちゃんの過去を探るためにも、しっかり調べてこよう」と呟き、杖を手に持った。

二人は宿屋を出て、帝都の魔法研究施設へと向かった。


帝都アルテミスの魔法研究施設は、帝都の中心部から少し離れた場所に位置していた。

石造りの建物は古びており、苔が壁を這う不気味な外観だったが、内部は若い魔法使いたちがひっきりなしに出入りし、活気に満ちていた。

施設の中には、魔術書や実験器具が並び、魔力の気配が濃密に漂っていた。

レオンとミリアが施設に入ると、若い魔法使いの一人が

「勇者様! クロノスを倒したと聞きました! すごいですね!」と声を掛けてきた。

レオンが「ありがとう。だが、調べたいことがある。施設のリーダーに会わせてくれ」と冷静に答えた。

若い魔法使いが二人を案内し、施設の奥にある部屋へと連れて行った。

そこには、初老の魔法使いが立っていた。

白髪交じりの髪と長いローブをまとった男で、鋭い目つきが印象的だった。


レオンが「あなたがこの施設のリーダーか? 俺たちはクロノスを倒した勇者一行だ。ホムンクルスの研究について聞きたい」と切り出すと、初老の魔法使いの顔に一瞬、動揺の色が浮かんだ。しかし、すぐに元の無表情に戻り、「…ホムンクルス? そんな研究は知らないな」と呟いた。


レオンとミリアはその一瞬の表情の変化を見逃さなかった。

レオンが「隠しても無駄だ。クロノスが死に際に、リリィに妙なことを言った。ホムンクルスの研究について知っていることを話せ」と呟き、魔法使いの肩に手を回した。

やや脅すような口調で、レオンが

「俺たちは仲間を守るためなら、何でもする。隠し事をしているなら、後悔するぞ」と続ける。

魔法使いの顔が青ざめ、「…分かった、分かったよ! 落ち着いてくれ!」と慌てて答えた。


魔法使いが

「ホムンクルスの研究は…随分昔に取りやめになったんだ。帝国が関与していたが、失敗ばかりでね…。私自身は本当に知らないんだよ」と呟き、近くにいた若い魔法使いに声を掛けた。


「おい、倉庫から古い資料を持ってきてくれ。ホムンクルスの研究に関するものだ」と指示すると、若い魔法使いが慌てて部屋を出て行った。

レオンが「隠し事はないな?」と鋭い目で魔法使いを睨むと、魔法使いが「本当だ! 私はただの管理者だ。過去の研究には関わっていない」

と答えた。

しばらくして、若い魔法使いが数十枚の紙を持って戻ってきた。

埃っぽい紙の束を、レオンの目の前の机に置くと、初老の魔法使いが


「これがホムンクルスの研究資料だ。あとは君たちでなんとかしてくれ」と呟き、逃げるように部屋を出て行った。ミリアが

「…何か隠してる気がするけど…この資料から何か分かるかもしれないね」と呟き、紙の束を手に取った。

レオンが「図書館に行って、じっくり読もう。リリィの正体に関わるかもしれない」と呟き、二人は施設を後にした。


帝都アルテミスの図書館は、静寂に包まれた空間だった。

高い天井には古いシャンデリアが吊るされ、窓から差し込む薄暗い光が本棚を照らしていた。

レオンとミリアは図書館の奥のテーブルに座り、魔法研究施設から持ち帰った資料を広げた。

紙の束には、古い字で書かれた実験記録やレポートが含まれていた。

ミリアが「…ホムンクルスの製造方法…失敗例…寿命の問題…」


と呟きながら、紙を一枚一枚めくっていった。

レオンが「何かリリィに関係する記述はないか? クロノスの言葉が気になる」と呟き、紙を手に持った。

ミリアが一枚の紙を手に取り、

「…レオン、これ見て」と呟いた。そこには、魔法使いのレポートのようなメモが書かれていた。

字は乱雑で、まるで急いで書かれたかのようだった。

ミリアが声を潜めて読み上げた。

「まだ完成には至っていないが、理論上は、ホムンクルスと人間の遺伝子培養時に、ある物質を投与することで、更に強力な兵器を大量に生産することが可能である。しかし問題は…」

と書かれていたところで、文章が途切れていた。


レオンとミリアは息を呑んだ。

「…兵器を大量生産…?」とレオンが呟き、剣を握る手が震えた。ミリアが「リリィちゃん…こんな実験の産物だなんて…」と呟き、緑の瞳に恐怖の色が浮かんだ。ホラーテイストを帯びた不気味な空気が、図書館の静寂の中で二人を包み込んだ。

窓の外から吹き込む冷たい風が、紙を微かに揺らし、まるで何かが囁くような音が聞こえた気がした。


レオンが「…ある物質って何だ? 問題とは何だ?」と呟き、紙を見つめた。ミリアが「このレポート…続きがない。問題が何か、書かれていないよ…」と呟き、紙の裏を確認したが、何も書かれていなかった。


レオンが「リリィが…兵器として作られた可能性がある。クロノスの言葉…『こちら側の存在』って、そういう意味だったのか?」と呟き、顔をしかめた。

ミリアが

「リリィちゃんは…ただの少女じゃないかもしれない。ホムンクルスと人間のハーフ…それ以上の何か…」

と呟き、震える手で紙を握り潰した。


図書館の薄暗い光の中で、二人の心に不吉な予感が広がった。

リリィの白い肌、白銀の髪、紫の瞳――その愛らしい姿が、突然、冷たく不気味なものに感じられた。

彼女が兵器として作られた存在ならば、彼女の体には何が隠されているのか? 彼女の寿命は? そして、彼女を生み出した者は誰なのか? 疑問が次々と湧き、二人の心を締め付けた。

ミリアが「リリィちゃん…私、絶対に守るよ。こんな過去があっても、あなたは私たちの仲間だ」

と呟き、涙をこらえた。


レオンとミリアは資料を手に、宿屋へと戻った。帝都の夜は冷たく、街灯の光が石畳を薄く照らしていた。

ミリアが

「レオン…リリィちゃんには、このことはまだ言わないでおこう。もっと調べてから…」

と呟くと、レオンが

「そうだな。だが、俺たちはリリィを守る。それが仲間としての務めだ」

と呟き、剣を握る手に力を込めた。

宿屋に戻ると、リリィがベッドの上でガルドと話をしていた。


ガルドが「リリィ、俺が明日、でっかい肉を食わせてやるからな!」と笑うと、リリィが

「…ガルド、ありがとう」


と呟き、無表情のまま小さな笑みを浮かべた。


ミリアが「リリィちゃん、ただいま。私たち、ちょっと疲れたから、今日はもう休むね」


と笑うと、リリィが「…ミリア、おかえり」

と呟き、紫の瞳をミリアに向けた。


その無垢な瞳を見た瞬間、ミリアの心に再び不気味な予感がよぎった。


リリィの笑顔は純粋で愛らしいものだったが、その背後に隠された真実が、まるで闇のように二人を飲み込もうとしているかのようだった。


レオンとミリアは、リリィの正体を探る旅がまだ終わっていないことを感じながら、眠りについた。


リリィの過去には、さらなる闇が潜んでいるかもしれない――その予感は、二人の心に重くのしかかっていた。

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