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第四十一話

リリィがミリアから魔法を習い出して数日後、リリィを襲った者の調査から帰ってきたレオンとガルドがミリアとの魔法の訓練から帰ってきたリリィのもとへとやってきていた。

レオンが病室へ入ってくると、リリィがベッドの横に置いていた布に包まれた奇妙な物体に視線が向いた。

それは、魔王の両目を潰し、戦いを終わらせたあの武器だった。

「お前…その武器、どういうものなんだ?」

レオンの声は穏やかだが、好奇心と探求心が混じっていた。

彼は一介の騎士としての興味から、リリィが使った未知の道具の正体を知りたいと思っていた。

ガルドが「そうだぜ、リリィ!お前がそれで魔王をやったんだろ?」と笑い、ミリアも「リリィちゃん、すごかったけど…何だったの?」と優しく尋ねた。

リリィは一瞬沈黙し、布を解いて武器を手に持った。

紫の瞳が無感情にそれを捉え、彼女は淡々と話し始めた。


「これ…全体的に細長い形をしてる。硬そうな素材でできてて、色は主に砂みたいな色合い。荒野とか砂漠に溶け込みそうなくらい、地味で目立たない見た目」

リリィは武器を両手で掲げ、一行に見せた。砂漠の砂を思わせるくすんだ表面は、光沢がなく無機質で、彼女の小さな手に少し重そうだった。

長さはリリィの胸あたりまであり、ずっしりとした印象を与えた。

「先端には、金属製の筒が突き出てる。そこに何かが出入りする穴が開いてて、鋭い感じがする」


彼女が指差した先端の鋼製の筒は、冷たく光り、小さな円形の開口部が鋭さを放っていた。

まるで何かを貫くための設計のようだった。


「中央には、黒い突起とか小さな部品がたくさん付いてる。何かを操作するための仕組みみたい。そこから後ろに伸びる部分には、握りやすいように形作られた黒い柄がある」

リリィの手が中央部分を軽く撫でると、黒いレバーやボタンが微かに動いた。

柄は人間の手の形に合わせて滑らかに削られ、長時間持つことを想定した作りだった。

「それから…上の方には、奇妙な装置が付いてる。円筒形で、ガラスらしきものがはめ込まれてる部分があって、覗き込むためのものかもしれない。細かい刻みとか調整用のつまみもあるから、何かを精密に見るための道具なのかも」

彼女がその装置を指すと、ガラスが窓から差し込む朝陽を反射し、微かに輝いた。

小さなつまみが並び、精密な調整を可能にする設計が感じられた。

レオンは眉を寄せながら聞いていたが、疑問が解けない様子だった。

「それで、どうやって魔王の目を潰したんだ? 剣でも槍でもないし、魔法でもなさそうだ」

リリィは少し首を傾げ、考え込むように間を置いた。

「引き金を引いたら、爆発音がして、何かが飛び出した。それが魔王の目に当たった」

彼女の言葉は無感情で、ただ事実を述べるだけだった。

一行は驚きを隠せず、ミリアが「撃った?」と呟き、ガルドが「何だそりゃ?」と笑った。


「どこでそんなものを見つけたんだ?」

ガルドが興味津々に尋ねると、リリィは視線を床に落とし、記憶をたどった。

「魔王城の地下に落ちたとき、暗くて深い穴の底にあった。崩れた壁とか、古い箱がたくさんあって、その中からこれを見つけた。砂に埋もれてたけど、形が気になって拾った」

レオンが「他に何かあったのか?」と重ねて聞くと、リリィは目を細めた。

「箱の中には、細長い金属の棒がいっぱい入ってた。これと同じ色の、小さい弾みたいなもの。それと、紙が何枚かあったけど、読めなかった。字が崩れてて、古すぎたから」

ミリアが「弾って何?」と首を傾げると、リリィは武器の中央部分を指した。

「ここに嵌めるみたいになってる。弾を入れて、引き金を引くと、飛び出す」

レオンが「見せてくれ」と手を伸ばすと、リリィは無言で武器を渡した。

レオンはそれを手に持ち、慎重に観察した。

重く、ずっしりとした感触があり、砂色の表面には細かな傷が刻まれていた。先端の金属筒からは焦げ臭さが漂い、何かが発射された痕跡が残っていた。

「これ…帝国の武器じゃないな。見たこともない。どういう仕組みなんだ?」

レオンが呟くと、ガルドが「試してみりゃ分かるだろ!」と笑ったが、レオンは首を振った。


「危険だ。魔王の目を潰すほどの威力があるなら、下手に扱うわけにはいかない。お前が大怪我から復帰したばかりなんだぞ、リリィ」

ミリアが心配そうに口を開いた。

「でも、リリィちゃんがそれで私たちを救ってくれたんだよね。すごいよ…本当にありがとう」

彼女の言葉に、レオンは頷いたが、表情は硬かった。


「リリィ、もう一度やってみせてくれないか?」

レオンの提案に、ミリアが「危ないよ!リリィちゃん、まだ完治してないのに!」と慌てたが、リリィは無表情で頷いた。

「いいよ。弾はまだあるから」

一行は王宮の中庭へと移動した。朝の光に照らされた庭には、訓練用の石標的が置かれていた。リリィは武器を両手で構え、紫の瞳が標的を捉えた。胸の包帯がわずかに見えたが、彼女の動きに迷いはなかった。

「こうやって…引き金を引く」

バン!

乾いた爆発音が庭に響き、一行は耳を押さえた。

石標的に小さな穴が開き、石屑が飛び散った。

リリィは反動で少し後退したが、無表情のまま武器を下ろした。

「これで魔王の目も潰した」

彼女の声には何の感情もなかった。

レオンは標的に近づき、穴を指でなぞった。深さは指の第一関節ほどもあり、鋭い衝撃が石を貫いたことが分かった。

「すごい威力だ…こんな小さな弾でここまでできるのか」

ガルドが「魔王の鱗だって貫けるわけだぜ!」と笑い、ミリアは「リリィちゃん、すごいけど…無理しないでね」と呟いた。

リリィは武器を手に持ったまま、淡々と続けた。

「弾がなくなったら使えないと思う。でも、たくさんあったから、まだ撃てる」

レオンは武器を手に戻し、考え込んだ。

「これ…何なんだ? 誰が作ったんだろう。魔王城の地下にあったなんて、偶然じゃない気がする」


その日の午後、レオンは帝国の図書館に赴き、古老の司書に武器を見せた。司書は白髪を揺らし、目を細めて武器を眺めた。

「これは…古い記録に似たものがある。『火を吐く杖』と呼ばれたものだ」

レオンが「火を吐く杖?」と尋ねると、司書は頷き、古びた書物を手に取った。

「数百年前、この大陸に存在した別の帝国があった。彼らは魔法ではなく、鉄と火薬で作られた武器を使い、遠くの敵を一瞬で倒したと言われている。しかし、内乱で滅び、その技術は失われた。残ったものは地中に埋もれ、忘れられたんだ」

ミリアが「それがリリィちゃんの武器と関係あるの?」と聞くと、司書は首を振った。

「確かではない。ただ、見た目と力が似ているだけだ。しかし、魔王城の地下にあったなら、誰かが意図的に隠した可能性もある」

レオンは腕を組み、考え込んだ。

「別の帝国の遺物か…でも、魔王城に隠す理由が分からない。魔王が使わなかったのも不思議だ」

司書は目を閉じ、呟いた。

「魔王は魔法の化身だ。こんな機械的なものには興味がなかったのかもしれん。あるいは、知らなかっただけか…」

リリィは黙って話を聞き、武器を手に持つ自分の姿を見つめていた。

彼女にとって、それはただの道具だった。感情を込めず、ただ使い、魔王を倒した。それが全てだった。


その夜、一行は応接室で再び集まった。ミリアはリリィと並んで座り、彼女の手を握った。

「リリィちゃん、あの武器…怖いけど、リリィちゃんが使ってくれて助かったよ。大怪我から戻ってきてくれて、本当に嬉しい」

リリィはミリアを見上げ、微かに首を振った。

「ミリアが喜んでるなら、それでいい」

その言葉に感情はほとんどなかったが、ミリアにはリリィなりの優しさだと分かった。彼女はリリィを抱きしめ、笑顔を見せた。

レオンは部屋の隅で武器を眺め、ガルドに話しかけた。

「これ、どうするべきだと思う?」

ガルドは肩をすくめ、笑った。

「リリィが持ってるなら、それでいいだろ。あいつが使いこなせるなら、俺たちにとっても頼りになる。復帰したばっかだけど、強いぜ」

レオンは小さく頷き、目を細めた。

「そうだな。ただ…これが何なのか、もっと知りたい。暗殺者の背後が分からない今、この先に何が待ってるか分からないからな」

翌朝、一行は王宮を出て、新たな旅の準備を始めた。

リリィの手に握られた武器は、砂漠のような色合いで朝陽に照らされ、静かに存在を主張していた。胸の包帯がわずかに見えたが、彼女の無感情な瞳は前を見据え、仲間たちと共に歩みを進めた。


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