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第十七話

勇者一行は、魔王を倒す旅を続けていた。

現在の目的地は、影の森の奥深くにあると言われる古の遺跡で、魔王の力を弱める鍵が隠されているとされていた。


影の森は、暗く、不気味な唸り声が響く場所だった。木々の間から漏れる光は少なく、足元には湿った土と落ち葉が広がっていた。レオンは先頭を歩きながら、周囲を警戒していた。

「皆、気を引き締めろ。影の森は危険な魔物が出没する場所だ」と彼は言った。


ガルドは大きな剣を手に、ニヤリと笑った。

「心配するな、レオン。俺がいる限り、魔物なんぞ一掃だ」

と豪語した。一方、ミリアは杖を握りしめ、リリィに声をかけた。

「リリィ、疲れてない?何かあったらすぐ言ってね」

リリィは小さく頷き、「うん、平気」と答えた。彼女の紫の瞳は、相変わらず何も感じさせない静けさを湛えていた。


突然、森の奥から鋭い叫び声が響き、ゴブリンの群れが飛び出してきた。数は十を超え、牙を剥きながらパーティに襲いかかった。

「来たか!」

レオンが叫び、剣を抜いた。ガルドも即座に反応し、ゴブリンたちを切り払った。ミリアは後方から魔法で支援し、リリィはナイフを手に、冷静に敵を仕掛けた。


戦闘は激しく、レオンはゴブリンのリーダーらしき大型の個体と対峙していた。その瞬間、リーダーが放った毒矢がレオンの肩に突き刺さった。

「ぐっ!」レオンは膝をつき、毒が体を侵す感覚に耐えた。


「レオン!」ミリアが駆け寄り、すぐに治癒魔法を唱えた。光の粒子がレオンの傷口に集まり、傷は閉じたが、毒の影響は消えなかった。

レオンの顔色は青ざめ、呼吸が荒くなった。

「この毒…私の魔法が効かない…」

ミリアは焦り、額に汗を浮かべた。


リリィは戦闘を終え、レオンの側に立った。彼女は傷口を覗き込み、緑がかった黒い毒の跡を確認した。

「これ…影ゴブリンの毒、魔法に抵抗する性質がある」

と彼女は静かに言った。


「どうすればいい?リリィ、知ってるの?」

ミリアがすがるように聞いた。


リリィは目を閉じ、しばらく考え込んだ。

「昔、おじいちゃんとおばあちゃんが教えてくれた。影ゴブリンの毒には、ムーンレイフというハーブが効く。影の森の奥に咲いているはず。」と彼女は言った。


「ムーンレイフ?そんなもの、今から見つけられるのか!?」ガルドが声を荒らげたが、リリィは動じなかった。

「見つける。レオンを助けるために」と彼女は決然と宣言し、森の奥へ走り出した。


リリィは森を駆け抜け、老夫婦の教えを思い出した。彼らは彼女に多くの薬草の知識を伝え、ムーンレイフは満月の下でしか咲かない稀なハーブだと教えた。彼女は目を凝らし、薄暗い森の中でその白い花を探した。やがて、岩の陰に小さな白い花を見つけた。

「これだ」と彼女は呟き、急いで摘んだ。


キャンプに戻ると、レオンは意識を失いかけていた。ミリアは必死に彼の手を握り、「リリィ、間に合った?」と叫んだ。リリィはムーンレイフをミリアに手渡し、「これを潰して、傷口に塗って」と指示した。


ミリアは素早くハーブを潰し、ポーチを作り、レオンの傷に塗った。しばらくすると、レオンの顔色が戻り、目を開けた。

「何…起こった?」彼は弱々しく言った。


「レオン、あなたは毒矢に当たったけど、リリィがムーンレイフで見事に解毒してくれたの!」ミリアは涙を浮かべて笑った。


レオンはリリィを見上げ、「ありがとう、リリィ。命を救われた」と感謝の言葉を述べた。リリィは小さく頷き、「平気ならいい」とだけ言った。彼女の声は相変わらず静かだったが、紫の瞳にはかすかな温かさが宿っていた。


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― 新着の感想 ―
小説家になろうで魔王を倒すという王道な冒険は珍しいですね。
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